第46回「アラブでは朝食に何を食べるのですか? 定番などあれば教えて下さい。」

日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦(ドバイ)・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。

  質問  
「アラブでは朝食に何を食べるのですか? 定番などあれば教えて下さい。」

   回答   

前回の記事から時間が空いてしまいました。その間、アラビア諸国を訪問したり、帰りの飛行機で同乗者にコロナ陽性者が出て強制自主隔離されたりと、バタバタと過ごしていました。今回はアラブの朝食についての問い。私の体験をベースに回答してみます。

サウジアラビアを例に取ると、米とパンどちらも主食ですが、私の経験から朝はパンを食べる人が多いなと感じます。パンと言っても、日本のような食パンではなく、クロワッサンや写真のようなパンを食べることが多いです。


(↑ホブズ・アラビー(アラビアパン、ピタパン)。円形の薄いパンで、破ると中が空洞になっている)

このパンはポケット状になっているので、そこに具材を入れたり、広げてシート状に伸ばして具材をつまんだりできます。
家庭で食べる朝食でも具材は多彩です。友人宅で頂いたある日の朝食メニューは次の通り:

  • クロワッサン2種
  • アラビアパン
  • オムレツ
  • チーズ2種
  • 野菜とチーズの和え物2種(レバノン風)
  • オリーブと野菜のミックス(パレスチナ風)
  • フルーツ

(↑家庭での朝食の一例。写ってはいないが、チーズ、フルーツ、アラビアパンもある)

他には、フムス(ひよこ豆のペースト)、チキンソーセージなども定番です。
パンの他に平均で5~7品程度出てきます。日本だと白米と味噌汁をメインに多くてもプラス2、3品くらいですから、品数は日本よりも多いと言えるでしょう。飲み物は水、紅茶、コーヒー、ミルク、フレッシュジュース等を合わせるのが定番です。

家だけでなく外で食べることも少なくありません。街のカフェでモーニングプレートを食べることもありますし、朝食がとても有名なレストランもあります。

(↑朝食が有名なAbbas Restaurant。イエメン料理とサウジアラビア料理のミックスで、超高火力で作る豆のシチューが絶品)

レバノン風の朝食を食べることができるカフェにも行きました。レバノン風オムレツやトマト煮込みが非常に美味でした。

(↑レバノン発のフードチェーン、Zaatar W Zeitのインスタグラムより。サウジで食べた朝食イメージはこんな感じでした)

写真を見て「美味しそうだけど朝食には重そう」と思う人がいるかも知れません。ただ、アラブでは食事の時間が日本よりも2~3時間ほど遅いです。朝食ならだいたい10時か11時頃に始まるので、ちょうどブランチのような感じ。あまり重さは感じません。

お店に食べに行くだけでなく、デリバリーも普及しています。
私はサウジやドバイの下町で仕事をすることもありますが、そこでは個人商店の店主がレストランに電話をかけると、わずか10分後にはサンドイッチと熱々の紅茶が届くのです。そして、お店のカウンターに腰掛けて朝食を食べる。このようなシーンにはコロナ以前からよく遭遇していたので、気軽にデリバリーを頼むスタイルは随分前から浸透しているのだと思います。

このように、その時の気分によって思い思いのスタイルで朝ごはんを食べるので、アラブの朝食は結構バラエティ豊かです。
書いていて思い出しましたが、日本のコンビニで買えるタマゴサンドは海外ですこぶる評判が良いです。カタール人のレストランオーナーが、日本で食べたセブン‐イレブンのタマゴサンドの味に感銘を受け研究、ついには自分のレストランでオマージュ品を出すに至ったという例もあります。現地で実物をいただきましたが、味と食感の再現度が高く美味しかったです。余談ですが、タマゴサンドは国際線のCAたちに人気があるという話も聞いたことがあります。サンドイッチ自体は現地でもありふれた商品ですが、彼らの目には全く別物として写っているのではないでしょうか。

以前の記事で、食分野へ参入するならティータイム関連からアプローチしてみては? と書きましたが、サンドイッチの例を見るとそれ以外にもチャンスはありそうです。
アラブはなぜか日本の参入者が異常に少ない地域ですから、食の分野に関する情報もそれほど出回っていません。思わぬ参入余地が見つかる可能性は大きいので、海外展開の候補地としてアラブを入れてみるのは面白いと思います。

 

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 この記事を書いた人  

大西 啓介(おおにし けいすけ) 

大阪外国語大学(現・大阪大学)卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。

海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。

写真はサウジアラビアのカフェにて。

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