日本人は中東を「イスラム教の国々」と一括りにしてしまいがち。でも中国・北朝鮮・日本がまったく違う価値観で成り立っているように、中東の国だって様々です。このコンテンツではアラブ首長国連邦（ドバイ）・サウジアラビア・パキスタンという、似て非なる中東の3国でビジネスを行ってきた大西啓介が、ここにしかない「小さなブルーオーシャン」を紹介します。
質問
「日本ではよく健康ブームが起きますが、アラブでも健康ブームは起こるのですか？」
回答
はい、今まさにブームが来ていると言っていいと思います。今回のサウジアラビア出張時に感じたのは、サウジ社会が大きく変貌しつつあるということです。
現在サウジアラビアは国策である『ビジョン2030』にしたがって様々な分野で変革を起こしており、質問にあるようなヘルスケア分野にも変化が見られました。
今回も現地で見聞きしたことをもとにお話します。
まず、タバコや甘いものの価格が大幅に上がっています。例を挙げましょう。
（↑糖分多めのドリンクは以前に比べて2倍以上、タバコに至っては4倍以上の価格となっている。）
この値上がり部分は大半が税金です。
喫煙者の友人曰く「タバコは質も低下している」とのこと。
愛好家から大きな不満の声が出ていそうですが、国からすれば国民への健康配慮とともに、税収を増やせる一石二鳥のシステムと言えます。
（↑サウジアラビアで売られている水タバコのパッケージ。健康被害への注意喚起とともに「タバコを辞めたい人は937番へ電話を」という文言）
嗜好品への課税に加えて、サウジ政府はスポーツを奨励しています。
前回出張した2年前には見なかった新しいスポーツ施設、フィットネスジムがたくさん出来ていて、ジムに通い始める人が増えていました。街中をジョギングしたりサイクリングする人も見かけます。以前はほとんど見ない光景だったので、とても驚きました（季節が冬だったこともあると思います。夏場は危険すぎるので流石にないと思いますが）。
また、他のスポーツ人口も増えつつあるようです。スポーツ用品を扱う会社とミーティングをした際、そこの支社長が言っていた話では「もともと人気のあるサッカーをはじめとして、卓球やスイミング、釣りといったスポーツのグッズが売れ行きを伸ばしている」とのこと。
また、2021年にスポーツ庁の後援を受けて『サウジ冬季スポーツ連盟（SWSF）』が発足し、GCC（湾岸協力会議）加盟国で唯一、北京五輪のアルペンスキー種目に選手を派遣しています。
砂漠の国からスキーヤー。
サウジアラビアがスポーツ分野へ力を注いでいる現れだと言えます。
（参考記事：https://www.arabnews.jp/article/features/article_60085/）
国がスポーツに注力する理由の一つには、国民の健康を増進させるという目的があります。以前の記事で触れたように、サウジアラビアに限らずアラブ諸国の国民は肥満率が高い傾向にあります。
その原因を日本人と比較して強引にまとめるならば、
- 日中の暑さから一年の大半を屋内で過ごすため、運動不足になりがち
- 食事の時間が遅く、夜型の人が多い
- お酒の代わりに、嗜好品として甘く糖質の高いものを食べることが多い
このような特徴があり、肥満につながりやすい生活習慣だと言えます。
また、食べる量自体も日本人より多いと感じます。私は特に少食なわけではありませんが、
「日本に帰ったらどうせ痩せるんだろ？ だから今日はいっぱい食べてもらうぞ」
とか
「恥ずかしがるなよ。もっと食え食え」
などと言いながら笑顔でやたらと食べ物を勧めてきます（笑）。
これは客人に対してご馳走するというおもてなしの面もありますが、日本よりアラブの方が太りやすい食習慣であることを示していると思います。
【日本から何ができるか】
彼らも我々日本人と同様、健康への意識が高まってきていると言えるでしょう。
「わかっているけど食べてしまう」とか、「ジムが長続きしない」とか、我々と同じような悩みも持っています。
もし日本から彼らの悩みにアプローチをするなら、健康食品や健康器具から始める手がひとつ。ストイックな人向けには「絶対に結果にコミットさせるジム」などもウケるかもしれません。
日本のスポーツグッズも提案して欲しいと言われていますが、今のところツテがないのでオファーしていません。スポーツグッズを扱っていて、販路を広げたいと考えている、という方がいれば提案の仕方も含めて一緒に考えますので、ぜひご連絡ください。
この記事を書いた人
大西 啓介（おおにし けいすけ）
大阪外国語大学（現・大阪大学）卒業。在学中はスペイン語専攻。
サウジアラビアやパキスタンといった、どちらかと言えばイスラム感の濃い地域への出張が多い。
ビビりながら中東ビジネスの世界に足を踏み入れるも、現地の人間と文化の面白さにすっかりやられてしまった。
海外進出を考える企業へは、現地コネクションを用いた一次情報の獲得・提供、および市場参入のアドバイスを行っている。
現在はおもに日本製品の輸出販売を行っているが、そろそろ輸入も本格的に始めたい。
写真はサウジアラビアのカフェにて。
【お知らせ】
ポッドキャスト始めました。
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