「個人の時代」って言葉が普通に使われるようになってきました。

安田さんはずっと前から言ってますよね。

はい。私はとにかく「個人での発信力」を高めておくべきという考え方です。

私もそこは同感です。

ダルビッシュの影響かもしれないですけど、最近マエケン（前田健太）がYouTubeを始めましたね。

そうなんですか？

はい。「現役の人こそYouTubeで発信していくべきだ」って言ってます。

でもその通りですよ。

ですよね。この流れってどんどん加速するはず。

安田さんの言う「個人の時代」になっていく。ネットが普及したことによって。

それって一時的なブームだと思いますか？

いや、大きな流れですね。とくにYouTubeの影響力が一番大きいと感じます。

Twitterよりも？

はい。じっさい稼いでる金額も桁違いですから。ユーチューバーは。

何がすごいんですかね？YouTubeって。

テレビのストレスを解消したことじゃないですか。

テレビのストレス？

「あそこカットされちゃったよ」とか「そこを強調して編集するなよ」みたいな。人が介入・介在してつくり替える世界じゃないですか。テレビって。

確かに。私もひどい編集をされた経験があります。５時間も収録したのに５秒話した部分だけを強調されて。

編集で違う話にされちゃうんですよ。

まさに！何度も何度も尋ねられて。「まあそかもね」って返事しただけなんですけど。そこばかり強調されました。

そういうのがテレビのストレスなんです。

なるほど。

YouTubeの場合は自分の思いをそのままストレートに出せる。だから自分の思いをきちっと伝えられる。

それならツイッターも同じじゃないですか。なぜ動画だけがこんなに拡散するんでしょう？

収入の面もあるでしょうけど、活字ってやっぱ難しいんですよ。

たしかに。書くのも読むのも技術がいるし、言語には国境もありますからね。

はい。書いて発信できるのはプロだけだと思います。なかなか安田さんみたいには書けない。

私も素人ですよ。

素人には本なんて書けないです。

売れなくてもいいんだったら誰でも書けると思いますけど。

いや、書けないと思いますよ。でも「何でもいいからしゃべれ」って言われたら１０分くらいはしゃべれる。

だからYouTubeが流行ると。

そう思いますね。

マエケンやダルビッシュのように認知度があれば、一定数は必ず再生されますし。

見たい人は少なからずいるでしょうから。

やっぱり引退後のこととか考えて、準備してるんでしょうか？

どうでしょうねえ。すでに死ぬまで困らないだけのお金はあると思いますけど。

まあ、そうですよね。

そこを聞きたいですね。使命感みたいなものなのか。

たぶんお金ではないんでしょうね。

でも清原みたいなこともありますから。51億稼いだけど。

51億も稼いだんですか？

はい。でも、すっからかんになっちゃって。

引退したら収入なくなっちゃいますから。

真の目的は本当わかりませんけど。

仮にお金があっても、引退して誰とも関わらずに生きていくってつまらないし。

現役の時みたいには注目されなくなりますから。

身近な友達も大事なんですけど、世の中に自分の考えが発信できて認知されてるって、生きがいにもなる。

そうですね。

発信する小学生とか中学生とか、増えるかもしれませんね。

学校では教わらないスキルが必要ですけど。

ですね。自ら発信スキルを身につけないと。

有名人がYouTubeをやりたくなる気持ちって、何となくわかります。

常日頃からメディアに情報を歪められてますからね。イチローもそれでメディアを嫌いになったらしいです。

イチローはやらなそう。

確かに。イチローがツイッターとかやってたら、ちょっと嫌ですね（笑）

そこに、ちょっとでも意識をとられるのが嫌なんじゃないですか。

それだったら野球のことを考えていたいと。

寿司職人だったら「寿司のことだけを考えていたい」みたいな。

イチローほど完璧主義だと、誤字や脱字があるだけで叩かれそうですし（笑）

でも、もうちょっと遅くイチローが生まれてれば、やってた可能性はありますよ。使命感の部分で。

そんな気もしますね。これからは会社員でも発信する人って増えていくと思いますか？遊びではなく、ちゃんと戦略的に考えて発信する人。

そこがネットの履歴書になりますから。

そうですよね。フォロワーが何人いるとか。何かを売ったことがあるとか。

就職とか、事業をやるときとか、銀行から融資を受けるにしたって、そこがポイントになる。「これだけのことをこれだけ継続してきました」っていう。

ネットの履歴書が当たり前になると、逆算して「こういうことを発信しとこう」「こういう取り組みを残しておこう」って人が出てくるでしょうね。

間違いなく出てくるでしょう。

たとえば小学生がハゼの研究みたいなのをコツコツと配信してるとか。

はい。それが採用や融資の基準になっていく。

じゃあ政治家になりたい人はやっといたほうがいいですね。子どもの頃から。

一定のクオリティを長きにわたって子どもの頃からやっていけば、すごい財産になりますよ。

学校には国語・算数・理科・社会と、音楽と体育しかない。でも「昆虫」とか「恐竜」に興味がある子も絶対にいるはず。

そういう子が発信し続けると「さかなクン」みたいな職業が増えていきます。

“カナブンくん”みたいな。

でもそこってAIの得意領域でもあるので、単なる知識ではなく「その人の目とか感性」を通して発信することが重要。

料理のレシピと同じですね。同じ材料を使っても、人によって味も盛り付けもぜんぜん違う。

はい。さかなクンも魚の知識だけじゃないので。

彼の場合は魚愛がすごいですから。

そこにファンが生まれる。そしてAIには絶対に真似できない。