庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第115回 「心の余裕」は、庭で育つ

うーん、日本は素晴らしい国だと私も思いますが、一方で、経済的な理由で家を持つことや、庭を作ることを諦めざるを得ない方が増えているのも事実です。そうした生活の基盤が揺らいでいることが、社会全体の閉塞感につながっているのかもしれません。

それはもう、ひしひしと感じますね。庭づくりにかけられる予算が、明らかに年々少なくなっていますから。以前は石をふんだんに使った、趣のある庭のご依頼が多かったのですが、今はコストを抑えられるコンクリート仕上げが増えています。

なるほど。とはいえ庭がもたらしてくれる価値って、お金には代えがたいものだと思うんです。自宅にいながら自然を感じ、心を解放できるプライベートな空間があるというのは、最高の贅沢であり、最高の「心の栄養」になるはずで。

ただ希望もあると思うんです。これからは新築よりも、空き家などを安く購入してリフォームする人が増えていくはずですよね。

ええ。格安で家を手に入れて、浮いた予算を自分たちの好きなようにリフォームや庭づくりにあてる。そういう賢い選択をする人が、これからは間違いなく増えてくる。その時に建物だけでなく「庭も素敵にしたい」と思ってくれる人がどれだけいるか。

そう考えると、やはり多くの人が人間社会の中で少し息苦しさを感じているのかもしれませんね。人との比較や評価から離れて、もっと大きなものの一部だと感じられる時間が必要というか。そのための最も身近な装置が、“プライベートな自然”である庭なんだと思うんです。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















