第130回 「二季」化する日本で、四季の庭を楽しむには

この対談について

庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。

第130回 「二季」化する日本で、四季の庭を楽しむには

安田

最近、日本の気候が「四季の国」から「二季の国」になりつつある、とよく言われますよね。東京でも大雪が降ったかと思えば、春を通り越して一気に夏のような暑さになったり。春と秋が極端に短くなっている気がします。


中島

現場で仕事をしていると肌で感じますね。植物にとっても過酷な環境になってきているなと。

安田

中島さんの庭づくりのポリシーとして「四季を表現する」というのがあると思うんですが、気候がこうも変わってしまうと、今まで通りのやり方では難しくなっているんじゃないですか?


中島

そうですね。もちろん四季を取り入れたいという思いはありますが、植物が持ってくれれば、という条件付きになってしまいますね。特に紅葉する木は、夏の強烈な日差しで葉が焼けてしまって、秋になる前にチリチリになってしまうことが増えているんです。

安田

ああ、やっぱりそうですか。紅葉するはずの葉が、きれいに色づく前に枯れたような色になってしまうと。それは寂しいですね。


中島

材料屋さんに相談したら、「夏の6月7月ごろに一度葉を全部むしり取ってしまえば、秋にまた新しい葉が出て綺麗に紅葉するよ」なんて言われたこともありました。でも夏に葉っぱがない丸裸の木があるというのも、季節感としてどうなんだろうと。

安田

真夏に枯れ木のような姿があるのは、確かに違和感がありますね。四季がなくなるというよりは、夏の暑さというダメージによって秋に見せるはずの顔が変わってしまっているということなんですね。


中島

そうですね。まだ今のところは、種類を選べばなんとか対応できていますが、これ以上温暖化が進むと、そのうち庭に落葉樹が植えられなくなる時代が来るかもしれません。

安田

それは深刻ですね。ちなみに、暑さに弱いのが落葉樹だとすると、常緑樹はまた違った特性があるんでしょうか?


中島

ああ、それでいうと寒さは常緑樹の方が苦手なんです。ざっくり分けると「常緑樹は寒がり、落葉樹は暑がり」という感じですね。

安田

へぇ! そんな違いがあるんですか。冬も青々としているから常緑樹は寒さに強いのかと思っていました。どうしてそんな違いが出るんですか?


中島

元々、常緑樹の方が葉っぱが分厚くて水分を多く含んでいるんです。だから夏の暑さで焼けてしまうことは少ない。一方で落葉樹は葉が薄いので、夏の強い日差しや乾燥ですぐに焼けて落ちてしまうんです。

安田

なるほど。落葉樹は暑がりだから、夏に「もう無理!」って服を脱いじゃうような感じですね。いや、脱ぐというよりは、暑さでやられて強制的に脱がされちゃう感じか(笑)。


中島

そうですね(笑)。逆に常緑樹は寒がりだから、冬でも葉っぱというコートを着込んで温まっているようなイメージです。夏に葉を茂らせている落葉樹というのは、暑さに耐えている姿なんです。

安田

人間も暑すぎると服を脱ぎたくなりますし、寒がりはずっと着込んでいたい。植物も同じなんですね。そう考えると、日本の夏を乗り切るには、暑さに強い常緑樹の方が向いているということになりますか?


中島

生存という意味ではそうですね。ただ、常緑樹ばかりだと季節感が乏しくなってしまうのが難点で。椿のように冬に花を咲かせてくれる木もありますが、新緑や紅葉といったダイナミックな変化はやはり落葉樹には敵いません。

安田

ああ、そうか。常緑樹で花が咲く時期をずらして植えれば、ある程度「春が来たな」「秋が来たな」とは感じられるかもしれませんが、やっぱり日本の四季といえば、新緑と紅葉ですもんね。

中島

ええ。特にモミジなどは日本の四季の象徴ですから、それが植えられなくなるのは庭師として非常に辛いところです。イチョウなどは比較的暑さにも強いので今は使えていますが、繊細な雑木類は本当に厳しくなってきています。

安田

最近はインバウンドの方々も、日本の紅葉を見に山へ行かれますよね。山の中ならまだ気温も低いし、湿度もあるから綺麗に紅葉するんでしょうけど、それを都市部の庭で再現するのが難しくなっていると。

中島

そうなんです。山は標高も高いですし、周りの木々がお互いに日陰を作り合っているので、まだ環境がいい。庭でも木を鬱蒼と茂らせて日陰を作れば温度は下がりますが、そうすると今度は冬が寒々しくなってしまうんです。

安田

ああ、そうか、冬の問題もあるわけですね。落葉樹なら冬は葉が落ちて陽射しが入りますけど、常緑樹や茂りすぎた木だと、冬も日陰のままですもんね。

中島

ええ。冬の庭に温かみを持たせるには、やはり落葉樹で「地面に光が落ちる」状態を作るのが一番なんです。日当たりが良くなって物理的にも暖かくなりますし、見た目も明るくなる。

安田

夏を乗り越えるために日陰を作ると冬が寒くなり、冬に日当たりを求めると夏の暑さで木がやられてしまう。あちらを立てればこちらが立たず、ですね。なかなか難しい状況ですが、中島さんとしてはどう対応していく予定なんですか?

中島

使う樹木を少しずつ変えていくしかないのかな、と思っています。今まで日本にはなかったような、亜熱帯の気候に適した植物を取り入れるとか。ただ、それをやりすぎると日本の生態系に影響が出る懸念もあるので難しいところですが。

安田

う〜む、なるほど。でももうここまで気候が変わってくると、そういう変化も仕方ない気がしますね。

中島

果樹園の方とも話したんですが、あと20年もしたら、今作っている果物が作れなくなるんじゃないかと言っていて。暑すぎると実が割れてしまったり、木自体が弱ってしまったりするそうなんです。

安田

へぇ。暑い方がフルーツは甘くなりそうなイメージがありますけど、暑すぎてもダメなんですか。そう考えると、四季を楽しめるのは今だけなのかもしれませんね。

 


対談している二人

中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役

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高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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