この対談について
庭師でもない。外構屋でもない。京都の老舗での修業を経て、現在は「家に着せる衣服の仕立屋さん(ガーメントデザイナー)」として活動する中島さん。そんな中島さんに「造園とガーメントの違い」「劣化する庭と成長する庭」「庭づくりにおすすめの石材・花・木」「そもそもなぜ庭が必要なのか」といった幅広い話をお聞きしていきます。
第6回 間取りを決めたらお庭の相談
第6回 間取りを決めたらお庭の相談
一般的に庭のことを考えるのって、土地が見つかって、どんな家を建てるかが決まって、その後なんじゃないかと思うんです。
そうですね。土地を確保して家の図面ができて、さらにその後にお庭の依頼、という感じですしね。
ご依頼は家の施主さんから直接来ることが多いんでしょうか。それとも家を建てる建築会社さんから?
弊社の場合は、施主様から直接のことが多いですね。「こだわりのお庭を作りたい」とご連絡をいただきます。
とはいえ、依頼が来るのは土地と家の後ということですよね。庭の大きさや場所、方角なんかまで決まっていると、どうしても表現に限界があるような気がしますけど。
もちろんその上で最善を尽くさせていただきますけど、確かにもう少し早い段階で相談していただけると、より多くバリエーションが考えられるというのはありますね。
お庭の大きさ自体を変えるような提案もされるんですか?
ええ。例えば駐車場って、駐車した状態でトランクを開け閉めしますよね。だから実際には車の大きさ+1メートルくらい長さが必要なんです。そのスペースを考えて、「もう少しお庭を小さくした方がいいかもしれません」とご提案することもありますね。
ははぁ、なるほど。庭の良し悪しの前に、「快適な生活」の方が優先ということですか。
やっぱり毎日使うものなので、快適かどうかは非常に大事ですよね。
中でも注意した方がいいケースなんかはありますか?
そうですね。お家と道路に高低差がある場合は、ちょっと慎重に考えた方がいいです。というのも、地面の高さの基準をどこに持ってくるかで、お庭や外構に階段を付けるかどうかが決まるんです。で、階段を付けると見た目にはすごくかっこいいんですけど、住むにはちょっと不便だったり。
ああ、高低差があった方がカッコいいけど、毎日階段を上り下りしなきゃいけなくなるよと。
ええ、そうなんです。それに階段はスペースの問題もありまして。階段を作る場合、1段に最低でも30cmぐらい必要なんですね。
ふむふむ。
高低差が大きいとその分だけ場所が必要になるので、庭全体のデザインにも影響します。敷地が狭いなか無理に階段を作ると、他のものがあまり入らなくなってしまったりもするので。
ははぁ、なるほど。さすがプロの視点です。
逆に階段を諦めることで、スペースを広く使えていいデザインになったりもします。そういう提案もさせていただいてますね。
なるほど。いろいろと奥深いんですねえ。ちなみに「家の設計がもう少し違ったらよかったのに…」ということもあるんですか?
それはありますね。分譲地ギリギリまで建物があって、さらに大きな給湯器を付けていたりすると、人が通れないようなところが出てきちゃったり。
敷地内で行き止まりになってしまうんですね。
そうなんです。最近の分譲地は狭く取られていることが多いので、やむを得ないのかもしれませんが。
それはもう庭作り以前の問題ですよね。
ええ。本来であればぐるっと家の周りを回れた方がいいんです。でも、お客様にもそれぞれご予算がありますから。
そりゃそうですよね。ちなみにぐるっと回るためには最低何坪ぐらい必要なんですか?
全体の坪数よりも土地の幅によりますね。長方形だとどうしても通れない場所ができてしまうことが多いです。
そうか。横幅がギリギリで、その代わりに前か後ろに少し庭があるような使い方になるわけですね。
ええ、そういうイメージです。
スペースがすごく狭くて、かつ場所も大きさも変えられない状況だと、工夫の余地もあまりないですよね。そうすると、お庭についてはどの段階で問い合わせしてもらうのが理想的なんですか?
「建築屋さんに間取りを相談しているとき」ぐらいが一番いいタイミングだと思います。庭作の観点から、「ここをこうするとさらに良くなりますよ」ということもお伝えできるので。
なるほど。ちなみに早めに相談してもお庭を作るコストは変わらないんですか。
どのタイミングでご相談いただいても、コストは変わらないですね。
そうすると、頼む側としたら早い段階で相談した方がお得ですよね。中島さんのセンスを最大限使えるわけですから。
そうですね(笑)。私たちとしてもその方が頑張りがいがあります。
順番とすると、まず土地を探して、建築会社さんを選んで、図面を書いてもらって、その段階でお庭の相談って感じですかね。
そうですね。というのも、ほとんどの方が家を建てるのは初めてなので、どれぐらいの大きさでどんな感じの家を建てたいか、最初は漠然としてると思うんです。
確かにそうですね。間取りとかを決めながら、だんだんとイメージが湧いてきて。
ええ。それでどういう家に住みたいか、どんな生活をしたいかが少しずつ見えてくる。その辺りが決まっていると、お庭の提案もしやすくなります。
なるほど。イメージがない状態で相談されると「ちょっと早すぎる」わけですね。ちなみに「こういう家に住んでこんな庭にしたいんだけど……」と、建築会社さんと同時に中島さんに相談するっていうのはアリなんですか?
ええ。イメージが固まっている場合は、もちろんアリだと思います。
先に土地の場所を決めるよりも、そちらの方が理想的なお家が建ちそうな気もしますよね。
そうですね。ただ、設計を考えた後、理想通りの土地が見つかるかはわからないので。やっと見つかったけど理想の場所からすごく離れていた、とか。
確かに。じゃあ家とお庭を優先するか、住みたい場所を優先するかでお庭の相談のベストなタイミングが変わってくるわけですね。
そうですね。いずれにせよ、土地や家が完全に決まってしまう前にお声がけいただけると、より良い提案ができるかと思います。
対談している二人
中島 秀章(なかしま ひであき)
direct nagomi 株式会社 代表取締役
高校卒業後、庭師を目指し庭の歴史の深い京都(株)植芳造園に入社(1996年)。3年後茨城支店へ転勤。2002・2003年、「茨城社長TVチャンピオン」にガーデニング王2連覇のアシスタントとして出場。2003年会社下請けとして独立。2011年に岐阜に戻り2022年direct nagomi(株)設立。現在に至る。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。