第59回 トゥモローゲートの評価制度を教えて下さい

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第59回 トゥモローゲートの評価制度を教えて下さい

安田

今日は「プロセス評価の是非」についてお聞きしたくて。基本的に経営者は社員を「成果で評価」したいのに対して、社員は「プロセスも評価して欲しい」と考えますよね。そのあたり西崎さんとしてはどうしてますか?


西崎

それで言うとトゥモローゲートでは「プロセス評価はしない」というスタンスですね。

安田

ほう。つまり成果だけで評価するということですか。


西崎

ええ。とはいえ、完全歩合給制ではないので、ある程度の額は保障していますけどね。

安田

へぇ~、それは少し意外かもしれません。どちらかというとプロセス評価が強い企業なのかなと思っていたので。


西崎

ただ、世間一般で言う「成果主義」とはちょっと違うかもしれませんね。一般的に成果といえば、「いくら売上を上げてきたか」「どれくらい契約を取ってきたか」みたいなことだと思うんです。

安田

そうですね。でもそういう意味の「成果」って、必ずしも実力とは比例しないじゃないですか。運の要素も多分に含まれる。入って数ヶ月の新人さんがマグレで大型受注をしちゃったりとか。


西崎

まさに仰るとおりで、僕ら自身が過去に一度それで失敗しているんです。「売り上げてきた額の◯%が給与」というような設定にしたところ、確かに売上はよくなるんですが、そもそも僕らが目指している「オモシロイ会社を作る」ための動きが減ってしまって。

安田

そりゃそうですよ(笑)。オモシロイ会社にするために頑張っても1円にもならないんですから。


西崎

そうそう(笑)。その経験を踏まえて、ウチでは「成果」の定義を独自の設定にしたんですね。自分たちのビジョンに沿った形の評価制度にしたんです。

安田

ふむ、なるほど。それが「一般的な意味の成果主義ではない」ということなわけですね。ちなみにどんな内容なんです?


西崎

大きく3つの軸があるんですが、1つ目はパフォーマンス評価、要するに売上や利益です。

安田

うん、当然そこは外せないですよね。


西崎

はい。そして2つ目がスキル評価。例えば営業であれば、お客様の課題をヒアリングする力とか、課題解決の方法を見つける力、それを企画書に落とし込んだりプレゼンしたりする力、などですね。

安田

ふ~む、なるほど。売上に繋がったかどうかは別として、スキルのレベル自体を評価すると。3つ目は?


西崎

マインド評価です。会社で12個のバリューを設定しているんですが、それをどれくらい体現しているか、という判断軸です。要するに「オモシロイ会社」にするためにどれくらい貢献してくれたかという。

安田

なるほど。うーん、私からすると2つ目と3つ目は完全に「プロセス評価」なんですけど、違うんですか?


西崎

僕の中では違いますね。「プロセス自体」を評価しているわけではなくて、何ならプロセスに関係なく、今の状態、あるいは残した実績から評価をしているので。

安田

ああ、ちょっとわかってきました。つまり「スキルは上がらなかったけど頑張ったから評価してください」「ビジョンの実現に貢献はできなかったけど意識して働いてました」とか、そういうのは評価対象外だと。スキルアップやマインドを体現できたものだけを評価する。


西崎

まさにそういうことです。ですから自分の中では「プロセス評価」をしている感覚はないですね。

安田

なるほどなぁ。でもその評価制度で成り立っていて、会社もちゃんと成長しているってすごいですよ。私も以前似たような評価制度を取り入れたことがあるんですが、ほとんどの社員はついてこなかったですから(笑)。意外と皆さん、数字での評価が好きだったようで。


西崎

そうなんですね。もっとも、ウチの場合は「一生懸命頑張ったから」「長時間働いたから」みたいなことで給与が上がることはないので。そういう意味ではやっぱり「成果主義」だとは思います。

安田

「成果につながるプロセス」だけを評価している感じですよね。でも、それができてない会社もたくさんあると思うんですよ。トゥモローゲートさんは他社の評価制度を作ったりもしていますけど、クライアントさんでそういうケースはないですか。


西崎

そうですねぇ。もちろんクライアントの社員さんの中にも「頑張っているんだから(結果が出なくても)評価してよ」って人はいるでしょうね。気持ちは理解できますが、それを会社の評価軸としてしまうのはあまりよくないかなと。

安田

そりゃそうですね。ただ一方で、例えばスキル1つとっても、毎日右肩上がりにジワジワ身につくわけじゃなくて、ある日突然ポンッとできるようになる、みたいなこともあるでしょう? だとすると「(現時点では)成果につながっていない努力」も評価してあげた方がいいようにも思いますけど。


西崎

仰る通りなんですよね。なのでこれは説明が難しいんですが、成果というのは必ずしも売上や利益じゃなくてもいいんです。売上にはなっていないけど、スキルアップにつながるチャレンジができていたら、それは当然評価対象で。

安田

ああ、そうかそうか。「成果につながっていない」の「成果」が、お金とは限らないよ、ってことですね。


西崎

そうなんです。むしろ売上的・利益的には失敗だったとしても、それで自分を顧みるキッカケになっていたり、その経験が成長に繋がっていたとしたら、それはプラス査定になるよと。

安田

なるほどなぁ。逆に何のキッカケにもなっていない、無意味な失敗を評価することはないよと。確かにそういう意味ではトゥモローゲートさんは「成果主義」なのかもしれませんね。

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数19万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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