第95回 氷河期世代は本当に不幸だったのか

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第95回 氷河期世代は本当に不幸だったのか

安田

今日はあらためて、就職氷河期について話したいなと。西崎さんもその世代ですよね。


西崎

そうですね。

安田

世の中では「非常に苦しい世代」だと言われていて、「手厚いサポートをしなきゃいけない」みたいな話もよく出る。でも同じ氷河期世代といっても人それぞれで、稼ぎまくっている人もいるわけじゃないですか。西崎さんもそうですけど。


西崎

稼ぎまくっているかは別として(笑)、確かに僕自身は自分が「氷河期世代だ」という実感はないですね。他の世代の人生を経験したことがないので、そもそも比べようもないというか。

安田

なるほど(笑)。比較していいとするなら、戦後の日本に比べたら全然豊かで恵まれているでしょうしね。ということは、西崎さんからすると「手厚いサポートなんてわざわざしてやらなくていいじゃないか」って感じですか。


西崎

う〜ん、まあ、そう思ってしまうかな(笑)。でも僕だけじゃないと思いますよ。実際、地元の友人と飲んだりしてても「氷河期世代はつらいよね」みたいな話、この20年で1回も出たことないですし。

安田

へぇ。でもそれは、西崎さんの周りの人が成功しているからじゃないですか?


西崎

いやいや、そうでもないですよ。フリーターも全然いますけど、別に文句が出たりもしないし。

安田

なるほど。でも確かに私の周りの氷河期世代の人も、みんな結構うまくいってるんですよ。「世の中で言われるほど僕は苦労してないんです」って皆さん言います。


西崎

うんうん、そういう感じです。先ほどの戦後の話じゃないですけど、もっと大変な時代はあったと思うし。

安田

そうですね。そもそも日本に生まれてきた時点でものすごく運がいいわけで。


西崎

そうそう。それに、考え方によってはむしろ成功しやすかったんじゃ? とも思うんです。就職が厳しい時代だったからこそ、それをくぐり抜けてきた優秀な人間が集まっていたわけで、社内のレベルも高かったでしょうし。

安田

ああ、言われてみれば確かにそうですよね。優秀な人たちの中で頑張っていれば、自然と自分のレベルも上がっていくし。なるほど、だから西崎さん自身は「国が責任を取るべき」みたいな話にはピンと来ないと。


西崎

来ませんねぇ。そもそも具体的に国に何をしてほしいんですかね?

安田

たとえば「税金を安くして」とか、「職業訓練を国費で受けさせて」とか。


西崎

え? なんで?

安田

「国策の失敗の犠牲者だから」って。


西崎

え~、全然理解できない(笑)。そんなのどの時代だって大なり小なりあるじゃないですか。結局、与えられた状況下で自分がどれだけ頑張るか、どうやって這い上がっていくかしかないと思うんだけどな。

安田

同感です。生まれた環境にも同じことが言えますよね。ものすごいお金持ちの家に生まれて、結果不幸になる人もいるわけで。


西崎

もちろん、生まれた環境が成功確率に影響することはあると思うんですよ。裕福な家なら塾にも行かせてもらえるし、人脈もできるかもしれない。でも、それで全てが決まるわけじゃない。結局、自分でその確率をつかめるかどうかの話で。

安田

仰るとおりだと思います。まして大人になって何かのせい、誰かのせいにし続けているのはよくないですよね。氷河期世代って、今はもう40歳前後でしょう。


西崎

本当にそうですよ。社会人1年目、2年目くらいならまだ分かりますけど、40になるまでにいくらでも挽回のチャンスがあったはずですから。

安田

話せば話すほど、その通りですね(笑)。ということは西崎さん本人はもとより、周囲の同世代もあまり「俺は氷河期世代だから不幸なんだ」とは思っていないんですね。


西崎

そう思いますよ。いるとしても3%くらいじゃないですか?

安田

そんなに少ないんですか? じゃあその人たちが声高に叫んでるだけで、残り97%は「別にそんな支援いらない」と思っていると。


西崎

僕はそう感じますけどねぇ。でも実際のところはよくわからないです。

安田

そうですよね。なるほど。むしろそういう「マイノリティの意見」ばかりを拾っちゃうところが、今の世の中のバグなのかもしれませんね。

 

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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