第96回 「話が合う人」と「話が合わない人」の違い

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第96回 「話が合う人」と「話が合わない人」の違い

安田

私ももう社長じゃなくなってだいぶ経つんですけど、「元社員」と話をする機会がたまにあるんですよ。今も社員として働いている人、自分で会社を立ち上げた人、いろいろな人がいるんですけど、やっぱり経営者になっている人は話が合うわけですよ。


西崎

なるほど。でも、それはそうでしょうね。同じようなマインドを持っているからこそ起業するわけで。

安田

ええ。一方でずっと会社員のままの人はこんなことをいうと怒られちゃうかもしれませんけど、「あの頃とあまり変わってないなぁ」って感じることが多い。西崎さんはどうですか? 退職された社員さんと会って話したりすることはありますか。


西崎

そうですね、なくはないです。でも安田さんほどパキッと印象はわかれないかな。というのもウチはそもそも「仕事の価値観が合うかどうか」で採用しているので、基本的に話は合うわけですよ。

安田

ああ、なるほどなるほど。


西崎

その人の仕事に対する姿勢って、ウチを離れた後もそう大きくは変わらない。そういう意味では「なんか全然話が合わないな」みたいなことはないですね。

安田

でもそれって、もしかしたらあまり時間が経っていないからかもしれませんよ。考えてみれば私自身、「話が合わなくなったな」と感じるようになったのは最近な気がします。


西崎

ふ~む。長い時間が経ったことで、違いがあらわになってきたんですかね。ちなみに安田さんが「この人成長したな」と感じるのはどういうときなんですか?

安田

いろいろありますよね。「走るのが少し速くなる」というわかりやすい成長もあれば、「全然違う次元に行ってしまう」みたいなこともある。私は成長をよく虫に例えるんですけど。


西崎

ほう、虫ですか。

安田

ええ。「青虫がサナギになって蝶になる」っていう成長もあれば、「青虫のままでたくさん食べて大きくなる」っていう成長もある。体が大きくなるとか走るのが速くなるっていうのと、「蝶になって空を飛ぶ」とか「車を発明して走る」みたいなのは次元が違うわけですよ。


西崎

ははぁ、確かに。面白いです。

安田

で、やっぱり自分で会社を立ち上げて経営している人っていうのは、そういう次元の違う成長をしていたりする。想像の範囲を超えた成長っていうんですかね。


西崎

そう言われてみると、わかる気がします。成長にも種類があって、独立して自分で会社をやっている人と話していて、まさに「サナギが蝶になる」「新しいエンジンを作って車を開発する」ような成長を感じることもありました。

安田

そうでしょう? で、考えたんですよ。「話が合う人」と「話が合わない人」は何が違うのかって。結論は冒頭で出してしまっていましたが、要は「雇用されているかどうか」なんじゃないかと。


西崎

ああ、確かにそれは大きなポイントな気がしますね。

安田

ええ。雇用されている状態なら、会社から指示されたことをやって、タイムカードを押して、決められた時間働けば給料が振り込まれる。でも経営者って、利益が出なければ給料は取れないし、利益が出なくても社員には給料を払い続けなきゃいけない。立場が全然違うんですよね。


西崎

よくわかります。他責にしていても、誰も何もしてくれないわけで。

安田

そうそう。でもその苦労を社員というのは、「自分事」としては理解できない。そのあたりのジレンマを、西崎さんはどうしているのかなぁと。


西崎

そうですねぇ。ウチもいろいろ考えてやっていますが、一つ象徴的なのは「時間評価を完全になくしている」ところでしょうか。

安田

ほう、なるほど。長く働いたからといって評価が上がるわけではないと。


西崎

そういうことです。もちろん労働基準法は守らないといけないので、残業したら残業代は払いますが、最終的には賞与で全部調整します。たとえば一年間で500万円の仕事をしたとして、8時間労働・残業なしでやった人が月給30万円だとすると年収360万円。そこに140万円を決算賞与で支払います。

安田

ふむふむ。合計500万円ですね。


西崎

ええ。でも同じ500万の仕事をしていても、毎月10万円残業代をもらって年間420万円になっている人なら、賞与は80万円になるだけ。つまり「時間評価」はゼロなんです。

安田

なるほど、わかりやすいですね。ちなみに休日についてはどうなんです? 特に有給の扱いとか。たとえば辞める社員が「今週で辞めるので、有給休暇を1ヶ月消化させてください」と言ってきたら、どう感じます?


西崎

う~ん、ちょっと「えっ」と思いますけど、渡しますね。

安田

まあ、法律上渡さないわけにはいかないんでしょうけど(笑)。でも、経営者の感覚からすると、「今日で辞めるのに、なぜ有給が発生してるんだ?」って思うんですよ。そういうところに決定的な差を感じます。


西崎

それが「雇用されているかどうか」の差だと。

安田

そうそう。雇われた経験しかない人には、その感覚はなかなか分からない。一度も泳いだことのない人に「泳ぐってこういうこと」と説明しても伝わらないのと同じです。一度でも泳いだことのある人なら話が通じるけど、そうでなければ無理なんですよね。


西崎

そうですね。でも個人的にはその壁を極力なくしたいと思ってやってます。もちろん100%は無理ですけど、できる限り。

安田

すごくいいと思います。私はそこを諦めたから人を雇わないようにしてるわけですけど、だからこそ西崎さんの試みを応援しています。がんばってくださいね。


西崎

ありがとうございます!頑張ります!

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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