第97回 今の時代の社長がスーパーカーに乗らない理由

この対談について

「オモシロイを追求するブランディング会社」トゥモローゲート株式会社代表の西崎康平と、株式会社ワイキューブの代表として一世を風靡し、現在は株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表および境目研究家として活動する安田佳生の連載対談。個性派の2人が「めちゃくちゃに見える戦略の裏側」を語ります。

第97回 今の時代の社長がスーパーカーに乗らない理由

安田

我々の世代って、とにかく「会社を大きくする」「売上を伸ばす」。5億じゃなく10億、30億、50億、100億。社員数も30人じゃなく100人、200人、500人と。そういうわかりやすい名誉欲とか物欲に動かされてる人が多かったんですよ。お金を稼いだら銀座とか新地のクラブに行って豪遊する、みたいな(笑)。


西崎

はいはい(笑)。そういうイメージありますね。

安田

でも、西崎さんを見ていると、そういう拡大欲とか物欲、名誉欲にあまり興味がなさそうに感じるんです。実際どうなんでしょう? 同世代の経営者、特に創業社長に限って言うと、どういうタイプが多いですか?


西崎

僕は好きな人としか付き合わないので、そもそもコミュニティが狭い前提ではありますけど、フェラーリとかランボルギーニを乗り回してる社長はいないです(笑)。

安田

でしょうね(笑)。でもそれってなぜなんですか?


西崎

う~ん、こういう言い方もあれですけど、そういうのがカッコいいとは思わないんですよね。あ、自分が本当にフェラーリが好きで乗っているならカッコいいと思いますよ。でも「強さを誇示するために」みたいなのは、ちょっと違うなと。

安田

ああ、それは私も同感です。僕の知り合いの社長に本当にフェラーリが好きで、レースに出たりもしてる人がいるんです。そういう人はむしろカッコいいですよね。


西崎

うん、そうですね。でも、「ただ自慢したいから」「女の子にモテたいから」「シャンパンを開けたいから」みたいなタイプは、僕らの世代ではかなり減ってる気がしますね。もちろんゼロではないんでしょうけど。

安田

西崎さんより若いのに、高級車を乗り回してクラブに行くような人も、いるにはいると。


西崎

はい、います。ただ、僕はそういう人とは付き合わないです。

安田

なんで付き合わないんですか?


西崎

えー、なんか……怖くないですか?(笑)

安田

自分がそっちに引っ張られそうとか?


西崎

いや、別にそれは大丈夫なんですけど。なんだろう、単純に話してて面白くないんですよ。嬉しいポイントが全然違うから。

安田

ああ、なるほど。でも過去一度もなかったんですか? フェラーリ乗り回して「すごい」って言われたいとか、高級クラブで何十万も使って「俺もここまで来たな」と思いたい、みたいな欲求は。


西崎

ないですね〜。お金を稼ぎたい欲はありましたけど、「ちやほやされたい欲」はなかったです。どちらかというと「選択に困らないようにしたかった」感じですかね。「これ食べたいけどお金がないから我慢しなきゃ」みたいなのは嫌だったんで、一定の収入はほしいと思ってました。

安田

でも食べ物なんてたかが知れてますもんね。新地でシャンパン開けること考えたら、高い寿司屋なんて可愛いもんです。


西崎

そうなんですよ。だからもう今の収入で十分満足してます。これを5倍、10倍にしようって欲はないですね。

安田

ふ~む、なるほどなぁ。ちなみにそれは上の世代を見て反面教師的にそうなってる部分もあるんですか?


西崎

いや、性格じゃないですかね。僕は「人と被らないこと」が好きなんで。周りの経営者たちも、「儲けたい」とかより「社会をこう変えたい」「こんな世界を実現したい」みたいなモチベーションの方が強いんじゃないでしょうか。

安田

は~、そうなんですね。私の世代では、ビジョンや理念を掲げて会社を作る人なんて皆無でしたよ。「いくら稼いでる?」「いくら給料取ってる?」「どこで飲んでる?」みたいな話ばっかり。時代が変わりましたね(笑)。


西崎

そうですね(笑)。同年代で飲みに行っても、「派手に飲もう」みたいな話にはならないです。むしろバーで「これからの会社どうする?」みたいな話をじっくり語り合う感じです。

安田

映画とかでよくあるじゃないですか。高級クラブで女の子をはべらせて、高い酒を飲んで、「俺は成功者だ」みたいな。そういうのはもう全然ないんですね。


西崎

そういうお金があるなら、事業に使ったり、社員と飲みに行ったりする方がよっぽどプラスだと思いますもん。

安田

なるほどなぁ。ともあれヴィジョナリーな人が増えるのは、日本にとって素晴らしいことです。それに私も、クラブでシャンパンを開けるより、バーでじっくり語る方が好きですし。


西崎

そうですよね、そっちの方が単純に楽しいし、有意義なんですよ。別に何かを我慢したり強がっているわけではなく。

安田

う~む、私が60代で到達したことを、その年代で理解されているわけですね。達観してるなぁ(笑)。

 


対談している二人

西崎康平(にしざき こうへい)
トゥモローゲート株式会社
代表取締役 最高経営責任者

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1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2005年 新卒で人材コンサルティング会社に入社し関西圏約500社の採用戦略を携わる。入社2年目25歳で大阪支社長、入社3年目26歳で執行役員に就任。その後2010年にトゥモローゲート株式会社を設立。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをコンサルティングとデザインで提案する企業ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりを支援。2024年現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も積極的に展開している。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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