いきなり失礼なことをお聞きしますが。
ぜんぜん大丈夫です。
木型屋さんって、どんな商売なんですか?そもそも木型って何ですか?
木型というのは、プレス加工機に装着する刃物のことです。
プレス加工機?
はい。ティッシュの箱とか、タバコのケースとか、ダンボールケースとか。そういうものはプレス加工機で紙を打ち抜いて作られてるんですよ。
なるほど。では型通りに打ち抜くための刃物が、木型というわけですか?
そうです。
なぜ木型と言うんですか?
ベニヤ板がベースだからです。ベニヤ板にレーザーで溝を掘り、そこに刃物を折り曲げて埋め込んだものが木型。
なるほど。
ただ、僕たちが得意としているのは、紙を打ち抜く木型ではありません。
紙ではない?
はい。自動車の部品の一部や、電子部品の一部を打ち抜くための、精度の高い木型を作ってます。
スマホの表面に貼るフィルムとか、ああいうものですか?
そうです。
では精度が高い木型を作っているから、儲かっていると?
いえ、そうではありません。木型業界自体は、どんどんシュリンクしてますので。
普通にやったら、儲からない?
はい。
その辺を詳しく聞いていきたいのですが、まず、木型屋さんを始めたきっかけを教えてください。
父が木型を作る職人で、20年前に引き継いだんです。
何歳ぐらいのときですか?
26のときですね。当時は親父がひとりでやってまして。
当時は儲かってたんですか?
当時はまったく儲かってなかったです。ごはん食べるのがやっと。
なぜそんな儲からない仕事を、継ごうと思ったんですか?
父親がガンになって倒れて、弱ってる時に同業者に仕事を取られたんですよ。それが悔しくて、腹立ったのがきっかけです。
リベンジしてやろうと?
はい(笑)
ドラマみたいな話ですね。お父さんは「そんなに儲かってなかった」ってことでしたけど、業界としては儲かってたんですか?
業界としては、もうその頃から徐々にシュリンクしつつありました。
当時の市場規模は分かりますか?
ざくっとですけど、300〜400億ぐらいだと思います。
今はどのくらいですか?
今はその半分ぐらいですね。
そもそも、お父さんは儲かってなかったんですよね?
はい。
業界的にもシュリンクし始めてたんですよね?
はい。
なんで木型をやろうと思ったんですか?他の業界でリベンジしても良かったじゃないですか?
いや、もうなんか「流れるままに」みたいな。べつに志があって「金持ちになろう」とか「起業しよう」とか思ったわけじゃないんで。
じゃあ、なんとなく。
「なんとなく」と、もうひとつは、親父が仕事をとられたのを横で見てて、正直言ったら「かわいそうやな」と思いました。
「取り返してやろう」っていう。
そうです。
じゃあ、その時は「マーケットが縮んでる」ことなんて、分からなかった?
ぜんぜん分からなかったですね(笑)
実際やってみてどうだったんですか?「これは、やりようによっては儲かるな」と思いました?
いやいや、ぜんぜん思わなかったです。ただ、やる限りは「日本一になりたい」とか「世界一を目指したい」っていうのはありました。
木型屋さんで世界一?
そうですね。思ってました。
今、何社ぐらいあるんですか?木型屋さん。
国内は420社ほどです。
その中で御社は今、売上でいうと2番目なんでしたっけ?
そうです。でも、当時は1000社近くあったと思います。
じゃあ社数も半分ぐらいになって、マーケットも半分になって、でも、その中で御社は伸び続けている?
はい。
利益でいうと、今、国内でトップなんですか?
利益も利益率も、国内トップですね。
いよいよ世界一が目指せる場所まで来た?
そう思ってます。
・・・第2回へ続く・・・
野田 隆昌 (のだ たかまさ)
株式会社ノダ 代表取締役
https://www.kigataya.com/
ノダの海外ノウハウをシェア!個社ごとに職場見学会を実施。