小さなブルーオーシャンを追え
第5回(最終回)『ホンキノノダシキ』

ほとんどの人が聞いたこともない木型というビジネス。シュリンクし続ける業界において、過去最高の利益・利益率を生み出し続ける株式会社ノダ。その秘密に迫ります。

小さなブルーオーシャンを追え
〜木型屋が見つけたブルーオーシャン〜

第5回『ホンキノノダシキ』

安田

で、今回の「ホンキノノダシキ(本気のノダ式)」ですけど。

野田

はい。

安田

私が無理やり「お願いした感」があるんですけど。

野田

いえいえ、そんなことないです。僕も興味がありますので、是非やってみたいです。

安田

ありがとうございます。そもそも野田さんは、海外進出も上手くいってて、なぜ私に相談に来られたのか不思議だったんですよ。

野田

木型で世界一を目指してますので、何らかのヒントになればと。

安田

ですよね。でも私は、話を聞けば聞くほど、このやり方を「他の中小メーカー」にも紹介したくなりまして。

野田

はい。

安田

特に「海外進出なんて考えてない」という、小さなメーカーさん。

野田

いいと思います。

安田

それでこの「ホンキノノダシキ」というサービス名を、考えさせてもらったわけです。

野田

はい(笑)。ありがとうございます。

安田

とは言えノダさんは、これからも「世界一の木型屋」を目指して、さらなる海外展開を続けるわけですよね?

野田

はい。それは絶対にやりたいことです。

安田

ちなみに、次に進出を考えてる国って、決まってるんですか?

野田

次はメキシコかインドを考えてます。

安田

一方、こうやって話してる中で、生まれてきた「ホンキノノダシキ」もやっていただけると?

野田

まあ、どうなるかは分かりませんけど、「そこまで熱心に言っていただけるのなら、やってみましょう」という感じです。

安田

木型に限らず「国内マーケットはシュリンクして、若者は来ないし、この先どうしようか」という職人メーカーさんって、いっぱいあると思うんですよ。

野田

あるでしょうね。

安田

でも海外に行くのって、ものすごくハードルが高そうに見える。大きな投資も必要で、そこまで思い切れない。

野田

そう思っている人が多いですね。

安田

だから、そこを野田さんが「サポートしてあげたら」ということで、今回のサービスがスタートすることになったんですけど。

野田

はい。

安田

素敵なことだと思うんですよね。国内で働いてる人は仕事が楽になり、収入も増え、将来も安定して、なおかつ海外の若い子と楽しく仕事ができて。

野田

いや、ホントに。楽しいですよ。

安田

「うちも、やってみたい」「手伝ってもらえませんか」ってなった時、まずどこから始めたらいいんですか?

野田

まず、できれば、私どもの会社を見ていただきたい。というか、現場を見にきて欲しいです。

安田

「百聞は一見に如かず」ですからね。

野田

僕らのようなニッチで小さい会社でも、海外を利用して国内の環境や、国内の収益性までも改善できるという実例です。

安田

まずは国内の現場見学からですかね?

野田

そうですね。まず国内を見てもらって、面白そうだと思ったら、海外も見にきて欲しいです。

安田

やっぱり「海外の現場」を見てもらうのが、いちばん早いですよね?

野田

早いですね。

安田

ぶっちゃけどうなんですか?国内の工場に比べると、海外はだいぶ環境が悪いんですか?

野田

いえ、海外の工場のほうが整備されてて、流れもつかみやすいと思います。

安田

国内の工場って、ちょっと言い方は悪いですけど、普通の中小企業なんですか?

野田

そうです。見てもらえば分かりますが、町の工場みたいな感じです。

安田

「なんでここが儲かってんの!?」って感じですか?

野田

ほんとに、そう思われると思いますね。

安田

そのうえで海外を見てもらうと「なるほど、これで成り立ってんのか」と合点がいく?

野田

そうだと思いますね。特別な会社でもないんで。本当に洗練もされてない業態ですし。

安田

海外は今、何人ぐらいいらっしゃるんですか?

野田

海外が約150名ぐらいですかね。

安田

っていうことは国内の3倍?

野田

そうですね。

安田

国内は日本全国に工場があるんでしたっけ?

野田

大阪が本店なんですけど、工場は愛知県の清須と、埼玉、あと広島ですね。九州は営業所だけ。

安田

じゃあ、大阪・名古屋・埼玉・広島のどこかに、まず。

野田

はい。どこ見ていただいても。

安田

海外は、どこを見るのがいいんですかね。

野田

やはり、はじめがベトナムでしたので、ベトナムを見ていただくのが一番わかりやすいと思います。

安田

業種とか職種によっては「無理かも」って考えている人が、多いと思うんですよ。

野田

そう考えている人が、僕の周りでも多いですね。

安田

失礼ですが、木型屋さんでもできたんで「職人さんがいて、品質に自信があるメーカー」だったら、成功するというイメージなんですけど。

野田

品質においては、うちも中の上ぐらいですから。「めちゃくちゃ上手い」とか「業界ナンバーワン」っていうイメージは、もつ必要ないと思います。

安田

そこそこ日本でやれてたら、大丈夫?

野田

あとは海外での、やり方次第だと思うんで。

安田

海外でのやり方が大事だと。

野田

国内のシナジーも考えないとダメです。海外だけで収益をあげようと思ってるわけじゃないんで。

安田

バランスが大事?

野田

国内の労働環境がよくなるとか、国内の収益があがっていくような仕組みづくり。それが出来れば海外はトントンでもいいし、収益が上がればなおよし。

安田

ベトナム・タイ・フィリピンであれば、現地でも手伝っていただける?

野田

はい、もちろん。他の地域でも何らかの支援はできるとは思いますけど。

安田

「ホンキノノダシキ」では、海外と国内の双方ハッピーを実現したいんですけど。

野田

それは一番大切な部分ですね。

安田

今、日本では、海外人材に「日本人のやりたがらない仕事を、安い給料でやらせる」みたいなイメージがあります。

野田

経営者にも、そういう人は少なからずいます。

安田

私は海外人材を「仲間として、パートナーとして、一緒に仕事をやりたい」という人と、このプロジェクトをやりたいんです。

野田

そこは同感です。

安田

だから、将来的には“地産地消”というか、野田さんがやってらっしゃるようなところまで、育てていきたい。

野田

本気でやるなら、そこまでやらないといけないですね。

安田

国内マーケットは縮んでますけど、東南アジア全体で見たら市場は大きくなって行きますよね。

野田

まだまだ、大きくなりますね。

安田

そこに「日本の職人さんの技術」が加われば、新たな産業として十分にやっていける。

野田

十分にやっていけます。現に私たちもやってます。

安田

そこまで本気で考えるのであれば、ちゃんと1人、駐在させたほうがいいと思うんです。ノダさんたちのように。

野田

そこまで腹を決めれるのであれば、やっていただけるほうがいいですけど。ただ、その一歩を踏み出すのが難しいと思うんですよ。

安田

そうですよね。だからこそ、ノダさんにサポートしてあげてほしいわけです。

野田

もちろん、できることは。

安田

たとえば「現地に1人置きましょう」となった時、取っ掛かりとして日系企業を紹介してあげることも可能ですか?

野田

はい、もちろん。

安田

ノダさんの事務所に間借りさせてもらうとか、そういうことも可能ですか?

野田

それは可能ですね。ただ、何もかも“おんぶに抱っこ”となると、なかなか。

安田

たとえば、どんな?

野田

たとえば、僕らがお客さん探してとか、手取り足取りっていうようなのは無理です。

安田

それはそうですよね。

野田

その会社のためにもならないし。自らいろいろ経験していただいて、困ったら僕らが支えていくことは可能です。

安田

じゃあ、「しっかりと、自分たちでやる気があるんだったら、後方支援はするよ」ってことですね。

野田

そうです。

安田

まずは見学に来ていただいて、本気でやるんだったら、現地に1人派遣してもらって。その人に頑張ってもらう。

野田

そうでないと成功しないと思うんで。

安田

まずは日系企業に営業に行く。

野田

はじめは日本から商品を送って、現地の日系企業に買ってもらう。嫌がる人もいるし、納期もかかるんですけど、「いいよ」って言ってれるところもいっぱいありますんで。

安田

スタートはそこから。

野田

はい。まず売上を立てていって、「最小限のリスクで」ということですね。

安田

まずは黒字化する。

野田

それが損益分岐点以下でも、その半分でもいいと思うんですよ。

安田

半分でいいんですか?

野田

半分いけば、あとは現地に出せば「残りは見込める」という実感さえあれば、そのタイミングで工場を出すのがいい。

安田

海外の人と一緒にやっていくためのアドバイスというか、「こういう考えじゃないと無理だよ」みたいなのがあれば教えてください。

野田

定期的なコミュニケーションが大事だと思うんです。一緒にごはん食べにいったり、面談とかも賞与のときは必ず1人ずつやる。

安田

コミュニケーションが苦手な会社も多そうですね。

野田

仕組み化してコミュニケーションを取ることが大事で、たとえば第3金曜日は必ず海外のメンバーと食事に行くとか、それをきちっと決めて回していく。

安田

「仕事の間だけじゃなく、オフの時間にも、ちゃんと定期的にコミュニケーションをとる」ってことですね?

野田

そうです。あとは面談を定期的にやっていくことですね。月に1回2回って日にちを決めて。

安田

気持ちの問題とかどうなんですか?「下に見ちゃいけない」とか「リスペクトしよう」とか、そこはあんまり考えなくても大丈夫なんですか?

野田

正直に言えば、僕もベトナムをやり始める当初は「アジア全般に偏見をもってた」人間なんで。

安田

そうなんですか?

野田

うちのメンバーもおそらく、ベトナムから来た子に「どこまで出来るの、おまえらに」みたいな。

安田

最初はそうだったと?

野田

やっぱ職人ですし、日本人のプライドもありますから。最初は偏見もあったと思います。ただ、今はもう一切ないんですけど。

安田

どうやって、それをなくしたんですか?

野田

それは本当に、彼らが日本人以上に一生懸命やってくれて、彼らが来たおかげで労働環境がよくなって、多くのメリットを享受できたたから。

安田

彼らの頑張りだと。

野田

自分がもってた偏見が、間違いだったと気づくんですよね。本気で彼らと付き合ってると。

安田

なるほど。では、ひとつがコミュニケーション。

野田

はい。

安田

もうひとつが、海外の人たちの頑張りによって「環境がよくなっている実感」。それを国内の社員さんに持ってもらうこと。

野田

そこがとても大事なポイントですね。

安田

じゃあ、海外で儲かったからって、社長だけが給料を増やしてたらダメですね。国内の社員にまず還元しないと。

野田

それはもう絶対にダメ。やりたいんだったら、もっと儲かってから。順番を間違えたら終わってしまいます。

安田

わかりました。では、興味のある社長さん。まずは見学に来てください。

野田

お待ちしてます。お気軽にどうぞ。

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野田 隆昌 (のだ たかまさ)
株式会社ノダ 代表取締役
https://www.kigataya.com/

 

 

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