// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第27回》自分の悩みほど解決できない、という謎
友人や知人から相談を受ける。
そして、その相談に対して自分なりの考えを相手に話す。
こんなのは、誰でも当たり前のようにやっている事だと思います。
でも不思議なもので、人って他人の相談には自分なりの考えやアイデアが出てくるのに、自分の悩みにはなかなか良い考えが浮かばなかったりするもの。
そして、これはお店の経営にも同じことが言えるのではないかと思うのです。
他人の悩みにはアイデアが出るのに、自分の悩みにはアイデアが出ない。
私がこの不思議な現象に気づいたのは、2号店を出して数ヶ月経った頃。
当時は月に数回、2つの店舗のメンバーが集まって、各店舗の売上状況やお互いの店舗の課題を議論していました。
そんな議論の最中に私がふと気づいたこと。
それが「自分が働いていないお店の問題点は、なぜかよく分かる」という事実。
自分が一番良く分かっているはずの自分のお店の問題点は分からないのに、他のメンバーが運営しているお店の問題点は良く分かるのです。
まさに冒頭に挙げた「他人の相談にはアイデアが出てくる」のと同じような状態。
そして、この時気づいたんです。
「自分の働いていないお店は客観的に見てるから問題点がよく分かる」という事に。
要は自分の働いていないお店は、自分の働いているお店に比べて「他人事」なのです。
一般的に悪い意味で使われる、この「他人事」という言葉。
ただ、店舗の経営を考える上で、この「他人事」という視点は、必ずしも悪いことではないと思うのです。
自分事として課題を考える。
これは一見、当事者意識を持って課題に取り組む、正しいスタンスのように思えます。
事実、私もそう思っていたからこそ、自分のお店の課題を当事者意識を持って解決しようとしていた訳です。
でも、実際はどうだったのか?
課題を自分事として考えれば考えるほど、その課題を客観視することが出来なくなり、お店が抱えている課題の本質が見えにくくなってしまっていたのです。
逆に言うなら、お店の課題を他人事として考えることさえ出来れば、お店の課題の本質が見えやすくなるということ。
自分のお金を投じてお店を開業すること。
これが簡単でないことは私も経験しているので良く分かります。
そして、そんな簡単ではない決断をしたオーナーだからこそ、誰もが当事者意識を持って仕事に取り組む訳です。
ただ、その当事者意識こそがお店の課題に対するアイデアを生む上での障害になっているのではないでしょうか?
「どうやったら集客を増やせるのか?」
「どんな商品を作れば、人気メニューになるのか?」
こう言った店舗の課題を「他人事」として考える。
課題に近寄りすぎてしまっている自分の視点を、一歩引いて眺めてみる。
そうすることによって初めて課題の全体像を見渡すことができ、その視点で見るからこそ枝葉の方法論ではない、課題の本質を見つけることができるのだと、私は思います。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。