// 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 // |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
《第32回》失われた過去は戻ってくるのか?
「失われた10年」、「失われた20年」という言葉を頻繁に耳にしていた時期がありました。
これは、バブル崩壊から始まった経済低迷の長さを表す言葉。
この言葉が意味していたものは、何だったのか?
それは、「いつになったら元の景気に戻るのか」という期待だったのだと思います。
でも、この言葉はもう聞かなくなりました。
なぜなら、誰もがもうバブル時代なんて戻ってこないと分かったから。
経済低迷が特別なのではなく、それが普通なのだと分かったから。
なぜ、こんな話をしているのか?
それは、いま私たちの周りに起きていることが、バブルの後と似ているような気がするからなのです。
「早く自粛が解除されないものか」
こう考えている店舗オーナーは多いと思います。
私も店舗を経営している立場なので、この気持ちは良く分かります。
ただ問題なのは、「自粛が解除されたら全て元通りに戻るのか?」という事。
人は環境に適応するもの。
最初は不便を感じていた外食の自粛も、それが続けばいつの間にか外食をしない生活が普通となり、外食することが特別になるのではないでしょうか?
これはつまり、お客さんの消費感覚が変わったことを意味します。
「早く景気が戻らないものか」
バブル後にこう言って、景気が回復するのを待ち続けた会社は淘汰されました。
なぜなら、景気が回復するなんてことはなかったから。
バブル後を生き残ったのは、景気が回復するなんていう幻想を抱かず、新しい時代に適応した新しいモデルを作った会社。
今回、私たちに大きな影響を与えている新型コロナウイルス。
それに伴う自粛が続くことで変わりつつある消費感覚。
この影響は一過性のものではなく、新しい消費時代の始まりなのではないでしょうか?
そして、この消費感覚が元に戻ることを期待するのは、バブル後に景気が元に戻ることを期待していた会社と同じような気がしてならないのです。
では、そんな新たな消費時代の始まりに私たちがやるべき事は何なのか?
それは、バブル後に明暗を分けた行動が示している通り、ただコロナの収束を待つのではなく、次のモデルを作ること。
「失われた過去」が戻ってくることを期待するのではなく、「新しい時代」に自らを適応させる行動を始めることなのだと、私は思います。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計28店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。