第135回 非効率な商売

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

 

私が飲食経験なく起業をしたことは、このコラムでも度々書いてきました。

業界経験がなかったため、同業の人たちにとっては当たり前であろうことすら分からず、我ながら随分と遠回りをしたものだと、今から振り返ってみるとつくづく思います。

ただ、知識や経験が足りなかった分、遠回りをすることにはなってしまったものの、この遠回りは必ずしも悪いことではなかったのかも知れない、と思える部分もあるのです。

なぜなら「業界の知識がなく遠回りをしたからこそ、とても非効率な商売のモデルを作ることができた」と感じるからです。


「非効率な商売のモデル」
この言葉に対してマイナスの印象を持つ方は多いでしょう。

それもそのはず。
商売においてお金を稼ぐことが目的だとするならば、目指すべきは効率的な商売のモデルであり、非効率をできる限り排除することこそが、お金を稼ぐための近道のように思えるからです。

では、なぜ私は「非効率な商売のモデルで良かった」と感じているのか?
それは「非効率な商売」はなかなか稼ぐのが難しい反面、稼ぐのが難しいからこそ「なかなか真似しづらい」という一面もあるのではないか、と感じるからです。

私たちは効率よく稼ごうとするあまり、つい「すぐに稼げる方法はないものか」と考えてしまいがちな気がします。

ただ、もしこの問いに答えがあるとするなら、それは他の人にとってもすぐに稼げる方法と言えることになり、そう考えるのであれば、「すぐに稼げる方法を知りたい」と言うことは「すぐに真似される方法を知りたい」と言っているに等しいのではないでしょうか。

つまり、効率を追求することは真似されやすい競争に飛び込む選択であり、真似しやすい商売の先には価格競争しかないということ。逆に一見、非効率に見えるものの中にこそ、真似しづらい要素があり、真似しづらい商売だから価格競争から抜け出すことができるということ。

商売における全ての効率化を否定するつもりはありませんが、効率化を考えるだけではなく、もう一方で「自分の商売のどこに非効率を作り出すか」を考える。

小規模経営はここを考えることが大事ではないかと、自身の非効率な商売を振り返ってみて、改めて思うのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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