本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 |
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。 |
「とりあえず生ビールください」
このセリフを言ったことのある方は多いのではないでしょうか?
実際、私が接客をしていた時もこのセリフを何度もお客さんから聞きましたし、私自身もこのセリフを何度も言った記憶があります。
なぜ、多くの人がこのセリフを使うのか?
私なりに考えてみた答えは2つ。
1つは、純粋に一杯目は生ビールが飲みたいから。
そしてもう1つは、生ビールならどのお店でも同じ商品で頼みやすいからだと思います。
特に2つ目に挙げた「どのお店でも同じ商品」という事実。
この事実をお店側の視点から見てみると、他店と同じ商品というのは何もビールに限った話ではなく、ウイスキーや焼酎といった商品も同じであり、どのお店も同じ商品を仕入れて売っている以上、その商品で他店と差別化しようと考えるならば、その方法は価格を下げるしかないように思えます。
事実、私もそう考えた結果、生ビールを地域最安値に設定した訳ですが、今思えばこの考え方こそが私の店舗が苦戦続きになった原因でもあったのです。
他店と同じ商品を売っている以上、違いを出せるのは価格だけ。
こう考えていた当時の私が見落としていたものは何だったのか?
それは、「たとえ仕入れた商品が同じであったとしても、全てのお店が同じ品質で商品を提供している訳ではない」ということ。
私たちは集客を増やそうと考えた時、つい「どこにもない斬新な商品」というものを作ろうとしてしまいがちです。確かにそれで上手くいく商売もあるかも知れません。
ただ、そんな斬新な商品を何年にも渡って次々と生み出す商売というのは現実的ではないことを考えるのであれば、私たちがまず力を注ぐべきなのは「どのお店でも同じ」とお客さんから思われている商品に対して、自分のお店ならではのこだわりを加えてお客さんに新しい気づきや価値を感じてもらうことではないでしょうか?
「自分のお店には他店と似たような商品しかないから安売りするしかない」と考えるのではなく、むしろ「他店と似たような商品だからこそ、その商品価値を高める工夫をすることで自分のお店の強みが生まれる」と考えてみる。
そう考えれば、私たちのお店の中にはまだまだ魅力を引き出せる商品がたくさん眠っているように見えてくるのです。
著者/辻本 誠(つじもと まこと)
<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/