第227回 商売道具との接し方と業績の関係

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

先日、SNSのXで興味深い投稿を目にしました。
その内容というのが「考えていることを書くのではなく、書くことで考えが明確になる」といったもの。

この順序の捉え方には毎週コラムを書いている私も大変共感するところがあったのですが、同時に「これは店舗商売にも似たようなことがあるよなぁ」と感じたのです。


ここ2か月ほど、私は月に数回の頻度であるオーナーさんのお店改善に行っています。
このお店はコロナによる自粛明け以降、業績が思ったほど回復しておらず、そのための改善を手伝っているのです。

そして先日、そんな改善の一環として老朽化した客席テーブルのリフォーム(塗装はがし、再塗装)をオーナーと共に行っていたところ、丁寧に時間をかけて磨きなおされたテーブルを目の当たりにしたオーナーさんがこんな事を口にしたのです。

「いやー、やっぱり自分でやってみると愛着が湧くもんですね」と。

これは「お店の設備を丁寧に扱ったからこそ、その設備に対して愛着が湧いた」と言えるのではないかと思うのです。冒頭に挙げたXの投稿に例えるなら「愛着があるから丁寧に扱うのではなく、丁寧に扱うことで愛着が湧く」ということ。

私自身、1号店を開業した時は、全ての厨房設備が中古でいつ壊れるかも分からない状態だったこともあり、毎日丁寧に厨房設備を扱っていたらいつの間にか愛着が湧いていたという経験があります。

「愛着が先か、丁寧に扱うのが先か」

こんな事を書くと、そんな順序なんて商売に関係ないと感じる方もいらっしゃると思います。

確かに短期だけでみればその通りかも知れませんが、少なくとも今回の例で考えるとオーナーさんはお店の設備を丁寧に扱ってみたことで愛着を感じたのは事実であり、また業績の良いお店のオーナーさんは皆、設備に対して愛着を持って接しているように見えるのです。

そう考えると、長期で商売を繁盛させるために私たちが持つべきなのは、今ある設備を丁寧に扱う意識であり、逆に考えれば設備を雑に扱っている限り、私たちオーナーがお店に対して愛着を感じることは難しく、そんなオーナー自身が愛着を感じていないお店が繁盛することもまた難しいのではないか、と私には思えるのです。

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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