第4回 実家の美容室を「掘っ立て小屋」と言われて

この対談について

「遊んでいるかのように働きたい」をモットーに、毎日アロハシャツ姿で働く“アロハ美容師”こと岩上巧さん。自身が経営するヘアサロン「mahaloco(マハロコ)」には、岩上さんしか実現できない<ココロオドル髪型>を求め多くのお客様が訪れます。その卓越したビジネスセンスの秘密に、ブランディングの専門家・安田佳生が迫る対談企画です。

第4回 実家の美容室を「掘っ立て小屋」と言われて

安田

今回は、岩上さんが実家のある茨城県水戸市に戻って、ご自身の美容室「マハロコ」を開いた話をお伺いしたいと思います。


岩上

はい、やっと地元に戻ってからの話ができます(笑)

安田

笑。ちなみに前回は吉祥寺のお店をクビになったエピソードでしたけど(笑)、その後都内の別の美容室で働こうとは思わなかったんですか?


岩上

実際、都内の別の美容室からお誘いもいただいてたんです。でも妻とも話し合って、「もう雇われで働くのはやめよう」と。それで自分の美容室を作る前提で、まず実家の美容室で働くことにして。

安田

ああ、そうか、そもそもご実家が美容室だったんですよね。


岩上

ええ、親父が作ったお店で。僕は兄弟3人で弟が2人いるんですけど、美容室のお客さんにも随分かわいがってもらいました。

安田

へぇ、ちなみに兄弟3人とも美容師さんなんですか?


岩上

真ん中の弟は、美容師だったら誰でも知っているカリスマ美容師です。一番下の弟も美容師を目指していたんですが、高校からバンドを始めて、今ではMUCCっていうビジュアル系ロックバンドでメジャーデビューしてます。

安田

末っ子の弟さんは音楽で食べてるんですか? すごい兄弟ですね(笑)。


岩上

はい、自慢の弟たちです(笑)。

安田

じゃあその3兄弟の中で、岩上さんが実家を継いだという形になるんですかね。


岩上

そういう感じですね。親父の作った古いお店を引き継いで、まずは改装から始めました。

安田

へぇ。ちなみに改装費用はどう捻出したんですか?


岩上

正直僕には蓄えがなかったので、母親が銀行から200万円借りてきてくれました。それをそのまま僕に預けてくれて、再出発の元手に。

安田

ははぁ、優しいお母さんですね。きっと美容室を継いでくれたことが嬉しかったんでしょうね。


岩上

そうなんでしょうね。ともあれプロの業者さんに頼めるほどの額じゃないので、ホームセンターで資材を買ってきて、自分たちでせっせと改装工事をするという(笑)。

安田

なるほど、DIYで改装をされたわけですね。でも全部自分たちでやれるもんですか?


岩上

大工を目指している後輩も手伝ってくれましたね。「駆け出しだけど手伝わせてくれ」って言ってくれて。

安田

ははぁ、良い後輩ですね。つくづく岩上さんは周りの人に恵まれている。で、店舗を改装したあと、集客はどうしたんですか?


岩上

最初は妻と僕でチラシを作って、自転車でポスティングを始めました。吉祥寺と違って、勝手にお客さんが訪ねてくれる立地でもないので。

安田

なるほど。そのチラシは知り合いか何かのデザイナーさんに頼んで?


岩上

ああ、いえ、自分で作りました。吉祥寺店時代のお客さんで、雑誌社の人がいて。その方にIllustratorやPhotoshopの使い方を教えてもらってたんです。

安田

髪を切りながら、チラシの作り方をお客さんから教えて貰っていたんですね(笑)。


岩上

そういうことです(笑)。親から貰った元手でiMacとプリンターを買って、自宅で印刷まで行って、それで自転車でポスティングに向かうと(笑)。

安田

え、岩上さんご自身が回っていたんですか。ポスティングしている間にお客さんから連絡が来たらどうするんです?


岩上

妻が店に居てくれて、お客さんから予約が入ると携帯に電話をくれるんです。「今からお客さん来るよ!」って。そしたら急いで店に戻って(笑)。

安田

なるほど(笑)。でもそういう連絡が来るってことは、けっこうチラシの効果もあったんですかね。


岩上

割と反響あったんですよね。「120%満足する美容室」っていうキャッチコピーが刺さったみたいで。チラシの内容も、よくあるビジュアル勝負じゃなくて「ウチはとことん相談に乗りますよ」という想いの部分を打ち出しました。

安田

ははぁ、まさにマーケターですね。他に紹介やリピーターを増やすため工夫したことはありますか?


岩上

お客さんの送迎とかしてましたね(笑)。当時はネットでお店の場所を調べることもできなかったので、「じゃあ迎えに行きます!」なんて言って(笑)。チラシとその送迎サービスで徐々にお客さんが増えていきました。

安田

へえ~おもしろい。ちなみに、美容院を継いだ時の売上は幾らくらいだったんですか?


岩上

ほぼゼロでしたね(笑)。両親には馴染みのお客さんがいるから多少の売り上げはあったんですが、地元に帰ったばかりの僕にはいませんから。

安田

今みたいにSNSでサクッと告知なんてできませんしね。ともあれ、チラシや送迎でお客さんを増やしていって、それで1年後はどれくらいの売上になったんですか?


岩上

うーん、すみません。多分お客さんと向き合うことに忙しすぎて、あんまり覚えてないんですよね(笑)。でも、3年経った頃にはスタッフが10人はいたかな。

安田

ほほ~、すごいですね。10人雇うくらいの売り上げ規模にはなっていたと。ちなみにスタッフの採用はどうされていたんですか? 美容院の採用ってものすごく難しいですよね。


岩上

うちはちょっと特殊で、お客さんだった方がスタッフになるパターンが多いんですよね。お客さんが「この店で働きたい!」って言ってくれて、「あ、じゃあ働く?」みたいな(笑)。

安田

へえ! なんとも理想的な採用だ。とはいえ、彼らは美容については素人ですよね。岩上さんみたいにガンガン売上を作れるわけじゃないと思うんですけど。


岩上

ああ、それでいうと、僕がスタッフのキャラクターをブランディングしたんです。僕がお客さんに技術を提供して、スタッフはそれぞれのキャラを活かして「おもてなし」に徹して貰う。

安田

ははぁ、おもしろい! つまり技術に関しては岩上さんが全部受け持つと。……とはいえ、岩上さん一人じゃ担当できるお客さんの数に限りがあるじゃないですか。


岩上

まあそうなんですけど、本当に難しい施術ってそこまで時間かからないんですよ。僕が5分10分難しいところを担当して、あとの基礎的な施術はスタッフたちに任せる。それで問題なく回せていましたね。

安田

へえ~、すごいシステムですね。他の美容室では聞いたことないです(笑)。で、売上はどうなったんですか?


岩上

7年目で、年間の売り上げが6000万円はあったと思います。

安田

すごいですね! つまり吉祥寺の店舗と同程度の売上規模にまで持っていったと。……でも今気づいたんですが、これってご実家の美容室での話ですよね。まだ岩上さんの「自分の美容室」であるマハロコはオープンしていない。


岩上

そうですね、なかなかストーリーが進まなくてすみません(笑)。マハロコについて動き始めたのは2008年、銀行からまとまった額の融資を受けたあたりからですね。

安田

なるほど。融資が通ったってことは、ご実家の美容室の経営状況がよかったんでしょうね。そのまま物件も問題なく借りれたんですか?


岩上

ああ、いえ、物件については一悶着ありまして。というのも、物件オーナーさんから「あんな掘っ立て小屋みたいなお店の人が、駅前の一等地で商売できるの?」とストップがかかってしまって。

安田

DIYで改装した店だから(笑)。


岩上

そうなんですよ(笑)。ともあれ、そこで不動産業をやっている後輩が助けてくれて。「水戸であれだけ実績を上げてる人はそうそういませんよ」って、プロの目線で太鼓判を押してくれたんです。それでなんとかお借りすることができました。

安田

なるほど。やっぱり岩上さんは周りの人に恵まれていますね。では、次回からはいよいよマハロコについてじっくり聞かせていただきます!


対談している二人

岩上 巧(いわかみ たくみ)
アロハ美容師/頭髪改善特許技術発明者/パーソナルブランディングプロデューサー/株式会社 OHANA 代表

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美容専門学校卒業後、都内のサロンに就職するも、オーナーと価値観の違いから大喧嘩し即クビに。出身地である水戸に戻り実家の美容室で勤務しながら技術を磨き、2008年自身のヘアサロン「mahaloco(マハロコ) 」をオープン。結婚式のプロデュースやイベント企画なども行うパーソナルブランディングプロデュースサロンとして人気を博す。2014 年、髪質改善技術「美髪矯正 hauoli®(2021 年特許取得)」を開発。「まるでハワイで暮らしているように」をテーマに、毎日アロハシャツを着、家族・仲間・お客様と共にハワイアンライフを満喫中。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

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