第238回 商売の流れ

 本コラム「原因はいつも後付け」の紹介 
原因と結果の法則などと言いますが、先に原因が分かれば誰も苦労はしません。人生も商売もまずやってみて、結果が出たら振り返って、原因を分析しながら一歩ずつ前進する。それ以外に方法はないのです。28店舗の外食店経営の中で、私自身がどのように過去を分析して現在に至っているのか。過去のエピソードを交えながらお話ししたいと思います。

会社にあるハードディスクの中には、私が初めて作成した1号店のチラシデータがまだ残っています。

このチラシを作成した当時はとにかく使えるお金がなかったため、売上から少しでも印刷代に回せるお金が残ればその都度印刷屋さんへ行き、白黒の小さなチラシを印刷してもらい、お店の最寄り駅でこのチラシを配り続けていました。

つまり、私は手元にある限られたお金をチラシという新規集客ツールに投資することで売上を伸ばそうと考えていたわけですが、今から思えばこのようなお金と時間の使い方から商売の苦戦が始まっていたのではないか、と思えるのです。


「限られたお金を新規集客に投資する」
これは一見、何の問題もないように見えますし、実際に開業して新規集客を増やすために、どのツールや媒体にお金を使おうかと頭を悩ませるオーナーは多いのではないでしょうか。

じゃあ、なぜ今から振り返ってこのような投資の考え方に違和感を感じるのかと考えてみると、それは「限られたお金を新規集客に投資する」ということは、見方を変えれば「リピーター集客には投資をしない」とも言えるのであり、投資の順序が間違っているのではないかということ。

商売の継続にはリピーターさんの存在が欠かせない。

この考え方を否定するオーナーはほとんどいないと思います。ただ、実際に新規集客よりもリピーターさんへ向けて何か具体的な投資をしているのかというと、当時の私のお店同様、明確な答えがないお店は多いような気がするのです。

結局私は約1年、新規集客に投資を続けてはみたものの売上が伸びることはなく、そのお金をお店に来てくれたお客さんの居心地改善に投資するようにした結果、繁盛するお店を作ることができたように感じています。

お店に来てない人にお金を使うよりも、お店に来てくれている人のためにお金を使う。
そしてお店に来て満足してくれた人が、まだ来てない人を呼んでくれるようになる。

これが今の私が考える商売の正しい流れであり、文章にすれば当たり前のことしか書いてはいませんが、こんな当たり前の事を当時の私と同様、忘れてしまっているお店が多いからこそ、当たり前をしっかりやることが繁盛に繋がるのではないか、と私は思うのです。

 

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著者/辻本 誠(つじもと まこと)

<経歴>
1975年生まれ、東京在住。2002年、26歳で営業マンを辞め、飲食未経験ながらバーを開業。以来、現在に至るまで合計29店舗の出店、経営を行う。現在は、これまで自身が経営してきた経験をもとに、これから飲食店を開業したい方へ向けた開業支援、開業後の集客支援を行っている。自身が経験してきた数多くの失敗についての原因と結果を振り返り、その経験と思考を使って店舗の集客方法を考えることが得意。
https://tsujimotomakoto.com/

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