この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。
改めるべきは、やっぱり「金出したほうが偉い文化」ですよね。
「俺が雇ってやってる」「俺が買ってやってる」みたいな。
「おもてなし」を勘違いしちゃってますよね。
完全に、金に洗脳されてる気がします。
洗脳したい経営者もいますからね。
本当そう思いますね。給料日にやたら現金で払いたがる社長とか。
封筒に入れてね。
飲み屋さんとかでも、お金をちらつかせる社長っているじゃないですか。
いますよね。「俺は持ってるぞ」みたいな。
お金払ったら言うこと聞くとか、「大抵のことは許される」みたいに思ってる社長は多いですよ。
海外の方が「金次第」的なイメージがあるんですけど。実際はどうですか?
むしろ海外の方がニュートラルですね。日本は「お金で縛ってない」と言いながら、かなりお金の力に縛られてます。
それって、金を持ってる側の責任なんでしょうか。
両方じゃないですか。縛られる側にも問題ありますよ。
この前、新橋の焼き鳥屋さんで「まさに、そういうシーン」を見かけまして。
そういうシーン?
安くて美味しい店なんですけど、そこにヨレヨレのおじさんが来たんですよ。
何か起こりそうな予感ですね(笑)
で、5本ぐらい焼き鳥食べて、ビール飲んで、お会計のときに、3000円弱だったんですけど、ゴネだしたんです。
ゴネだしましたか。
はい。「なんでこんなに高いんだ」って。
どうなったんですか?
これがいくらで、これがいくらでって、店員さんが説明するんですけど納得しない。
なぜ納得しないんですかね?
もっと安いと思ってたんでしょうね。
なるほど。
その人、1万円札を持ってたんですけど、なかなか離そうとしないんですよ。
払いたくなかったんでしょうね。
でもそうやって「小さなお金に執着する人」ほど、逆にお金に束縛されて、お金がなくなっていく。
お金の怖さですね。
その焼き鳥屋さん、すごくこだわりのある店なんですよ。一本一本丁寧に仕込んで、備長炭で焼くんですけど。
安田さんが好きそうな店ですね。
油だって、市販の油じゃないんですよ。鶏の脂身を炭火であぶって出てきた鶏油を1本1本塗って焼いてるわけです。
すごいこだわりですね。
そういうこだわりとか、仕込みの苦労とか見てると、とても安く感じるんですけど。
他と比べて、砂肝1本いくらっていう話じゃないと。
そうなんですよ。しかも安いんですよ。それに文句つけてどうするんだと。
価値観の問題ですよね。
まさに。でもいいお客さんって、ちゃんと価値を分かってくれる。
分かります。気前よく払ってくれた上に、お礼まで言われたり。
ポンと気前よく顧問料払ってくれる人のほうが要望低くて、値切ってくる人のほうが、これもやって、あれもやってとか。
それは、本当にそうだと思います。
レベルの高い仕事をしても、時間でしか評価しないとか。
ありますね。作業時間でしか評価しないとか。質を評価してくれる人は、ポンと払ってくれますね。
でも結局、そういう人の方が得をするじゃないですか。
間違いないですね。分かってくれる人により貢献しようとしますから。
量でしか人を評価できない人は、結局いいサービスを受けられない。
経営者の優秀さって、そこだと思うんですよね。
社員に無駄なことやらせるのが「とにかく嫌い」っていう社長さん、いますよね。細かいところも全部きっちり管理して。
いますね。
そういう会社に限って労働時間が長かったり、休みの日でも「自分を高めるために勉強しろ」みたいなこと言ったり。
今やるところだったのに、言われたらやる気そがれることってありますよね。
給料安くて、社長はいちいち細かくて、全くやる気が出ないという。
目先のお金に執着すると、細かく管理したくなるんでしょうね。
変な管理をしない方が採用力も上がって、社員も辞めず、売上も利益も伸びて、いい循環をもたらすんですけど。
中身がない仕事はダメだと思うんですけど。さっきの焼き鳥屋さんみたいな価値を、きちんと見抜く力が経営者には必要ですね。
コスト感とか、労働観って、劇的に変わりましたよね。
変わりましたね。働いて当たり前とか、自分の仕事終わってないんだから「残業して当たり前だろ」みたいのは、もう通用しません。
頭の古い経営者が多いですよ。「俺の時代はこうだった」とか。「有給なんて昔はなかったんだ」とか。あったわけでしょ、昔から。
ありましたね。
ただ「なぁなぁ」でやってきただけで。
根性論ですね。「水飲むな」みたいな。
労働現場に関しては、いまだに多いですよ。うさぎ跳びさせてるみたいなのが。
飛び込み営業とか、いまだにさせ続けてる会社がありますもんね。
ありますよね。仕事中にいきなり入って来て、いきなり説明しだして。ものすごい迷惑。
やらされてる社員も、かわいそうですよね。
犠牲者ですよ。社員は。何の工夫もせずに、社員だけに苦労させてる。
犯人は、絶対に社長だと思いますね。
「生産性が低い」「誰もやりたがらない」みたいな会社は、なくなった方がいいのかもしれませんね。
「金払ってんだから」って、手足のように社員や取引先を使う経営者は、この先厳しいと思います。
本来、社長の仕事って「どうやったらもっと高く売れるのか」「どうやったら社員の給料や休みを増やせるのか」を考えること。
本当そうですね。
でも、それが仕事だと思ってる社長は、少ないですよ。
はい。だから切るべき仕事を切ることができない。
安い仕事を取ってきて、嫌なことを社員に我慢させて、報酬も社員に我慢させるっていう。奴隷じゃないんですから。
そういう文化って、日本特有なのかも。
でも、今の若い子には通用しないですよ。
我慢してくれないですもんね。嫌だったら辞めて、すぐ別の会社に行けるんで。
辞める人は、これからどんどん増えて行きますよ。
まだまだ「お金を出せばなんとかなる」って思ってる人、多いですけど。
いや、もう無理ですね。そもそもお金が最優先事項じゃないし。
ですよね。
そこに気付くかどうか。
気付けない人は、終わっていくでしょうね。
久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は地元である岐阜県多治見市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。