第69回「政策は誰のため?」

この記事について
税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第69回「政策は誰のため?


安田

仕事ができない人は「国が再教育するしかない」って、言ってましたよね?

久野

はい。昔のドイツがそうでしたけど。それしかないと思います。

安田

20〜30代だったら分かります。でも今は70まで働かないといけない。40過ぎてからの再教育なんてできますか?

久野

私も、もうすぐ40代なんですけど(笑)

安田

今は40代後半が人生の折り返し地点。その時点で食っていくスキルのない人を「国が再教育する」というイメージが湧かない。

久野

まあ難しいとは思います。

安田

たとえば、どんな教育をすれば食えるようになるんですか?

久野

一番ニーズがあるのは介護ですよね。建設業でも人が足りてないし。

安田

介護は税金で成り立たせている業界なので、そんなに稼げないですよ。

久野

難しいですよね。

安田

そもそも45歳以上の人がみんな介護業界に行ったら、国の生産性は上がるどころか下がってしまいます。

久野

そうですね。仕事のニーズはあるんですけど。

安田

もっと高いスキルを再教育する気はないんでしょうか?

久野

「世界で戦える人材」を国が育てようとは思ってない。

安田

え!思ってないんですか。

久野

そう思います。

安田

じゃあどうやって食べていくんですか。

久野

ベーシックインカムを意識した職業訓練って感じ。

安田

ベーシックインカムがあって、プラスαで介護の仕事をすればそこそこ豊かになれると。

久野

はい。ただ日本の税金の取り方からするとベーシックインカムはちょっと厳しい。

安田

それはどういう部分が?

久野

高齢者多すぎるので。

安田

確かに。消費税ぐらいしか払いませんもんね。

久野

そうなんです。だから財源的にちょっと厳しい。

安田

孫さんと柳井さんの2人から「財産を没収する」ってのはどうでしょう。

久野

え!どういうことですか?

安田

お二人には犠牲になってもらう。何兆円か財産持っておられるので。かなりの人数にベーシックインカムを払えます。

久野

じゃあ前澤さんも入れて(笑)

安田

トップ10人ぐらいから没収すれば結構な金額を払えるかも。

久野

いけますね。

安田

久野さんはまだギリギリ大丈夫ですね。

久野

ぜんぜん駄目でしょう(笑)

安田

昔は飢饉になると、農民が金持ち庄屋を襲ったりしたじゃないですか。

久野

百姓一揆ですね。

安田

ああいう感じで、お金持ちの財産を没収して配っちゃう。

久野

大パニックになります。

安田

日本が二つに割れちゃうかもしれません。

久野

すごいことになりますね(笑)

安田

でもお金持って、複利でどんどんお金が増えていくわけでしょ。

久野

そうですね。

安田

放っておいたら貧富の差がどんどん広がっていく。世界のトップ50人の富豪が人類の半分と同じ富を持ってるらしいです。

久野

その金額がどんどん増えていってます。

安田

つまり彼らの財産だけで人類の半分が養えるってことですよ。

久野

そうですね。日本はそこまで極端じゃないですけど。

安田

累進課税も年収1000万の人から30%も取るから不満が出るわけで。年収10億円以上、資産1000億円以上の人から超超超累進課税を取ればいいんです。

久野

もはや革命ですね。

安田

超金持ちは人数的には少ないので。選挙にも好影響じゃないですか。

久野

いやいや。そういう人たちは政治家にお金をしっかり払ってるので。社員も抱えてるから票もたくさん持ってる。

安田

なるほど。でも何のために政治家がお金を受け取るかっていうと、選挙で勝つためでしょ。

久野

まあそうですね。

安田

だったらそんな人たちと縁を切ったほうが勝てると思う。上から徴収して下にまけば選挙では圧勝しますよ。

久野

政治家はどっちかっていうと、そっち側の人なので。

安田

資産を守らなくちゃいけない側?確かに貯め込んでそうですからね。

久野

資産もそうですけど、基本的に自分の利権を守るのが好きな人たちなので。

安田

ひどい人たちですね。

久野

志を持って政治家になった人も、だんだんそっちに染まっていくんです。

安田

じゃあ日本人の生産性を高めるとかいって、本音は資産家のお金をさらに増やすことが目的。

久野

そうでしょうね。本音は。

安田

全員が豊かになることなんて考えてない?

久野

だって現実そういう政策にはなってないですから。

安田

ドイツは何をやって成功したんですか?

久野

いつも安田さんが言ってるモデルですよ。職人の地位を上げる。

安田

マイスター制度ですか?

久野

マイスター制度とか。どんな専門的なスキルでも稼げるようになってる。

安田

なるほど。専門家が稼げる仕組みってことですね。

久野

個人事業主でもちゃんと生活が成り立っていく。そういう文化をちゃんとつくって守ってますよね。

安田

やっぱ最終的には「誰でも稼げる仕事」じゃなく、「その人しかできない仕事」をつくっていくしかないです。

久野

そう思います。その人だけの「価値やサービス」を生み出す以外に、解決策はない。

安田

夢のような仕事があるわけないし。

久野

ただ、みんなそれを探せなくなってるので。何が得意なのかが分からない。

安田

立ち返るしかないですよ。本来の自分に。

久野

まあそうですよね。

安田

問題は国や役人にそれができるのかってこと。

久野

やらなきゃいけないけど、やれないでしょうね。

安田

その真逆のことをやって出世してきたのがこの国のエリート官僚。

久野

学校教育自体が「一人一人の個性を発揮する」というのとは真逆ですから。

安田

何らかのスキルを磨けばいいだけなんですけど。

久野

それがいちばん難しいんですよ。決められた学科しか勉強しませんから。

安田

簡単だと思いますけどね。

久野

どうすればいいんですか。

安田

中学生ぐらいになったら宣言しちゃえばいいんです。「今日から境目研究家になる」って。

久野

怒られます(笑)親も呼び出されます。



久野勝也
(くの まさや)
社会保険労務士法人とうかい 代表
人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。
事務所HP https://www.tokai-sr.jp/

 

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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