第341回 お笑い芸人のリスキリング

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第341回「お笑い芸人のリスキリング」


安田

アンガールズって知ってますか?

久野

知ってますよ。お笑いの。

安田

そのアンガールズの田中さんが2級建築士の資格を持っているらしくて。

久野

すごいですね。けっこう難関ですよ。

安田

資格を取る芸人が増えているらしくて。サバンナの八木さんがファイナンシャルプランナーの資格を取ったり。ネイビーズアフロという人が気象予報士の資格を持っていたり。

久野

芸能界は競争が激しいですから。

安田

お笑いの技術だけで稼ぐのは難しいんでしょうね。資格との掛け算で独自のポジションを作っていこうとしてる感じ。

久野

「100分の1×100分の1=1万分の1」の理論ですね。

安田

はい。芸能界ですらリスキリングやダブルワークが当たり前になってきています。普通の会社員も必須じゃないかって気がしますけど。

久野

そうですね。普通の会社員でもリスキリングは必須だと思います。

安田

有名人でも先手を打って資格を取っているわけで。私も会社が潰れる前にリスキリングしておけばよかったです。こんなに苦労せずに済んだ気がする。

久野

潰れたのは何歳の時でしたっけ。

安田

45歳ですね。社長って、完全に現場から離れている人が多いので苦労しますよ。

久野

実感がこもっていますね。実は私も今ちょうど45歳でして。

安田

これから確実に「気力、体力、頭の柔軟さ」が落ちてきますよ。

久野

ギリギリ45だと。

安田

私は45歳でも苦労しました。現場を離れて長かったので。

久野

安田さんは経営が長かったですよね。

安田

20年間ずっと社長しかやってなかったので。現場仕事が全く出来なくなっていました。

久野

たとえばどんな仕事ですか?

安田

自分の講演のスライドすら自分で作れないわけですよ。シナリオを考えて「あとはやっといてね」で出来上がってくるので。

久野

すごい。けどそれはまずいですね。

安田

まずいですよ。「部下がいないと何もできません」という状態だったので、会社が無くなった時に仕事が無くなっちゃうわけですよ。

久野

そうですよね。

安田

中小企業の社長ってそういうポジションなので大変だと思います。自分の会社の社長しかできない人がすごく多い。

久野

危ない危ない。

安田

久野さんは現場で営業をやっているから大丈夫だと思います。私も今から振り返ればリスキリングとか、個人での情報発信とか、会社が潰れる前にもっとやっておくべきだった。

久野

それはX(twitter)とかそういうのも含めて?

安田

はい。Xもやっていましたけど人任せでした。

久野

そうなんですね。じゃあ社長は、発信力とか技術力とか、そういうものをちゃんと持っとかなきゃいけないと。

安田

持っておかないといけないです。もっと現場に入って、いろんな仕事に携わるべきだったと思います。

久野

なるほど。

安田

1つの会社の1つのポジションだけでやっていくと行き詰まる。これは社長に限らず管理職の人たちすべてに言えることで。何らかのスペシャリストにならないと、もう食えない。

久野

この芸能人の資格を掛け算する戦略もスペシャリスト化ですもんね。

安田

そうなんですよ。消防設備士の資格を持っているお笑い芸人とか。ピンポイントで呼ばれるじゃないですか。

久野

確かに。芸能人のオタクってよく番組に呼ばれますもんね。リポーターやったり。

安田

芸能というスキルでも十分食べていけそうな人が、これだけ危機感を持っているわけですから。一般の会社員は40代以降も絶対にスペシャリティーを磨かないと。

久野

情報発信もやった方がいいですか?

安田

もちろん。自分の見込み客を常に抱えている状態を作っておく。それが大事だと思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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