第348回 テレビはどうやって終わるのか

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第348回「テレビはどうやって終わるのか」


安田

失言で叩かれて仕事を失う芸能人が増えてきましたよね。

久野

そうですね。フワちゃんとか。懐かしい。

安田

有吉さんが今ちょっと炎上していまして。野呂さんという女性の体系をいじったみたいです。クレームが殺到していて。

久野

難しいところですよね。有吉さんって毒舌が売りだと思うので。

安田

そうなんですよ。芸風というか。昔なら全く問題なかったと思うんですが。最近はコンプラがうるさくて。ちょっとしたことでも許されなくなっています。

久野

お笑い芸人はどうやって生きていったらいいのか。

安田

いや、ほんとそうですよね。コンプラ的に成立するいじりは「いじられた側もそれによって儲かる」「金銭的利益が発生する」というケースみたいです。

久野

逆にいじられて嬉しいんじゃないですか。

安田

私もそう思います。それでメシを食っているわけですから。でも難しい時代ですよ。相方の頭を後ろから叩くツッコミもダメになっていくかも。

久野

可能性はありますね。テレビってスポンサーで持っているじゃないですか。

安田

はい。見ている人が「不愉快だ」ってことになるとスポンサーはその人を使わなくなる。

久野

スポンサーも企業イメージのために広告を打っていますから。仕方ないですよ。

安田

視聴者が「心地いいか、不愉快か」に左右される。そうなると人を馬鹿にしたり体型をいじったりする芸はもう成り立たないかも。

久野

もう許されないでしょうね。そういう芸人はNetflixとかに振っていくんじゃないですか。

安田

YouTubeでも続々と自分の番組を作り始めていますよね。これ、どうなっていくと思いますか?

久野

テレビは絶対に勝てなくなると思います。当たり障りのないことしかやらないお笑い番組なんて面白くないし。そもそも若い子はテレビを見てないので。

安田

つまりテレビという1つのコンテンツが終わり始めてるってことですか。

久野

そうですね。何にも特化せずに今までは全部内包してたじゃないですか。公共番組も俗的な番組も。

安田

確かに。下ネタ的なものから教育系まで全部ありますね。昔のドリフなんてひどかったですもん。

久野

それを全部丸くして他のメディアに渡しちゃったわけですから。

安田

ネットはスポンサーより視聴者優先ですからね。お金を払っても見たいという視聴者さえいれば成り立ちます。

久野

そうですよね。見たい人だけ見てくれればいい。違法じゃなければ何でも成り立ちます。Netflixなんてすごい数の番組を網羅していますから。

安田

過激なのもあるんですか?

久野

けっこう過激なのもあります。ひたすら罵倒する番組とか。デスキスゲームとか。

安田

不快な人は見なきゃいいだけですからね。

久野

そう。自分で選択出来るから。テレビは不特定多数の人が見てくれる代わりにスポンサーが離れちゃうと成り立たない。

安田

だけどスポンサーは視聴率が落ちると離れていきますよ。

久野

結局スポンサーもいなくなるんじゃないですか。

安田

問題を起こしたフジテレビにスポンサーが戻ってきましたけど。まだテレビCMには旨味があるんでしょうか。

久野

ある年代以上の人はずっとテレビを見続けるので。その世代に何かを売るにはいいかもしれない。

安田

一方で40代以下の人たちはテレビを見なくなってる。

久野

見ないですね。うちの子供なんて1分も見ないですから。

安田

うちの子供も全く見ないです。ずっとYoutubeを見てます。

久野

YoutubeやNetflixにはものすごい番組数があるじゃないですか。自分が見たいものをいつでも好きなだけ見られる。

安田

昔のドリフみたいに「日本人の大半が同じ番組を見る」みたいなことは、もうないんでしょうね。

久野

学校での話題もむしろYouTubeじゃないですか。

安田

ボクシングの井上尚弥選手もネットに移りましたよね。

久野

野球やサッカーもそうなりますよ。収入が10倍とか下手したら100倍とかになるわけで。

安田

テレビ局の社員もあっさり辞める若手が増えたし。

久野

だんだん人材の質も下がっていって、ラジオにみたいにマイナーになって、最後はシャッター商店街みたいになると思います。

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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