第366回 監視されないという権利

この記事について 税金や、助成金、労働法など。法律や規制は、いつの間にか変わっていきます。でもそれは社会的要請などではないのです。そこには明確な意図があります。誰が、どのような意図を持って、ルールを書き換えようとしているのか。意図を読み解けば、未来が見えてきます。

第366回「監視されないという権利」


安田

マイクロソフトのビジネス対話ツール?

久野

Teamsというんですけど。あれは凄いですよ。チャット機能とか。

安田

Zoomみたいなもんですか?

久野

オンライン会議もできるし、Word・Excel・パワポもオンラインで編集できるし、それ以外にも機能がいっぱい付いてます。

安田

それは便利そうですね。

久野

そのTeamsに従業員の作業場所を特定出来る機能が追加されるかもしれなくて。いまニュースで物議を醸し出しています。

安田

従業員の監視ってことですか?

久野

名目上はセキュリティと言われています。けど監視に使われるんじゃないかと言われてますね。

安田

でもこれ利用者が設定オンオフを切り替えられるって書いてますよ。だったらオフにすることも出来るわけですよね?

久野

出来ますが、おそらく位置情報の共有は会社から求められると思います。

安田

オフにしているとかなり怪しいですしね(笑)

久野

生産性向上に繋がるという売り文句ですが、ちょっと無理がある気がします。

安田

ということは目的はやはり社員の監視でしょうか。

久野

出勤時間、時刻、現在地が特定出来るので不正の防止でしょうね。

安田

つまりリモートワークで社員が仕事をサボらないように。

久野

リモートもありますし、大きな会社だと「どこに社員がいるか分からない」ということもあって。

安田

もしかしたらオフィスにいないかもしれない。

久野

そういう部分をきちんと把握したいんでしょうね。米国ではどんどん広まっているみたいです。現場からは不評みたいですけど。

安田

向こうはドライですからね。雇っている側が労働者の居場所を把握して「何が悪いんだ」みたいな。

久野

そうですね。仕組みは米国式だと思います。「ここで、こういう成果を上げろ」っていう。

安田

要は指定した場所で仕事をしているかどうかですよね。働いてる側って、こういうのを特定されたくないんですかね。

久野

そりゃあそうですよ。

安田

なんで把握されたくないんですか?自宅で働きますと言って自宅で働いてるのが分かったって問題ない気がするんですけど。勝手に旅行に行ってるとか?

久野

そういうこともあるんじゃないですか。

安田

旅先で仕事をするならそれを申請しておけばいいだけで。

久野

今は繋がらない権利というものがありまして。改正労働基準法にも入るような時代ですから。

安田

え!繋がらない権利?

久野

はい。17時を過ぎたらLINEを送ってくるなと。

安田

あれ不思議なんですけど。なぜ夜にLINEを送ったらダメなんですか。確かに電話はマズイと思いますけど。メッセージを送ってるだけですよね。受けた側が都合のいい時に見ればいいだけじゃないですか。

久野

無言のプレッシャーになるからじゃないですか。今は予約機能もありますから送信予約が出来るし。

安田

勤務時間内に届くように予約しなくちゃいけないと。

久野

はい。そこは気を遣って。朝9時に着信するように予約したり。

安田

そこまで気を遣わなきゃいけないんですか。大変ですね。

久野

大変なんですよ(笑)

安田

そういう事情もあって、雇う側からしたら「働いている場所くらいは把握しておきたい」ってことでしょうか。

久野

そういうことでしょう。

安田

ちなみに久野さんも把握したいですか。働いている人の場所とか。

久野

いや、全然気にならないです。だって正直な話、隣にいてもちゃんと仕事してるかどうかなんて分からないじゃないですか。

安田

パソコン画面を覗かない限りわからないでしょうね。

久野

パソコンをかちゃかちゃしてるけど何をやっているのかは分からない。

安田

たとえばzoomのバーチャル背景も「使うな」とは言えないんですか?

久野

いま家ですか?って聞いちゃいけないらしいです。ハラスメントになるので。

安田

大変な時代ですね。

久野

はい。だから世界的にはこういう機能が標準化されると思いますけど、日本は難しいかもしれない。日本はちょっと社会主義っぽいカルチャーなので。

安田

ちゃんと成果さえ出してくれたらいいんですけど。

久野

そうですね。海外は成果出さなきゃクビになりますから。でも日本は簡単に解雇できないし。労働者のいろんな主張が通っていきます。

安田

実際どうなんでしょう。リモートでサボっている人って多いんですかね。日本人はそういうところは真面目ですけど。

久野

真面目でも管理しないと成果を出せない人っているんですよ。

安田

そういう人は管理されても文句は言わないで欲しいですね。

久野

一度ゆるくしたものを厳しくすると人はめちゃくちゃ抵抗するんです。一度手にした「監視されない権利」は絶対に手放したくない。

安田

人を雇うって本当に大変ですね(笑)

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久野勝也 (くの まさや) 社会保険労務士法人とうかい 代表 人事労務の専門家として、未来の組織を中小企業経営者と一緒に描き成長を支援している。拠点は愛知県名古屋市。 事務所HP https://www.tokai-sr.jp/  

安田佳生 (やすだ よしお) 1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

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