さよなら採用ビジネス 第70回「ドレスコードが死語になる日」

この記事について

7年前に採用ビジネスやめた安田佳生と、今年に入って採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。

前回は 第69回『2025年以降の新しい世界』

 第70回「ドレスコードが死語になる日」 


安田

サマンサタバサを紳士服のコナカが買収したんですけど。ご存知ですか?

石塚

はい。ネットニュースで見ました。

安田

サマンサタバサって一時期、若い女性の間ですごく流行ってたみたいです。でも最近はちょっと業績が良くないそうで。

石塚

あの業界は流行り廃りがすごいですから。

安田

みたいですね。でもコナカっていうと、スーツを大量に安く売るイメージしかないんですけど。相乗効果あるんですかね?

石塚

もちろんそこは考えてるでしょうけど。でもそれ以上に「打つ手がない」ってことじゃないですか。

安田

打つ手がない?

石塚

安田さん、スーツ最後にいつ着ましたか?

安田

仕事で着たのは会社が潰れたときなので、もう8年前ですかね。3〜4年前に結婚式で一度着ましたけど。

石塚

普段着てないでしょ?

安田

着てないですね。嫌いなので。

石塚

数えてみたんですけど、僕でさえ今年10回着てないんですよ。

安田

石塚さんはスーツ着てそうなイメージですけど。

石塚

でしょ?でも実際は子どもの卒業式・入学式で2回。あとはどうしても着なきゃいけない堅いお客さんの時。全部で10回いってないです。

安田

なんと。

石塚

要するに、みんなスーツ着なくなったじゃないですか。

安田

確かに。着なくなりましたね。

石塚

1年中キチっとスーツ着てるのなんて、カタカナ生保の営業ぐらいじゃないですか。

安田

そもそも何のためにスーツ着るかっていうと、相手に不快感がないようにしてるだけですからね。

石塚

だけど今はスーツ着てようが着てまいが、お客さんのほうが気にしなくなったでしょ。

安田

はい。むしろ逆効果ですね。暑い夏にスーツ着てネクタイ締めて、汗ダラダラで来られても困るっていう。

石塚

おっしゃる通り。

安田

真夏にスーツを着続けてる業界とか逆に怪しいです。「なんてブラックな会社なんだ」って思います。

石塚

そう。だからどんどん着なくなるんです。

安田

まあそうなりますよね。

石塚

だからマーケットがすごい勢いで縮まってる。AOKIやコナカにしたら本業自体の存続が難しいわけですよ。

安田

なるほど。

石塚

とは言え、次の事業をゼロイチでやる人材も時間もない。だったらもう買収しかないわけです。

安田

じゃあ相乗効果というよりは、事業をどんどん買っていくしかないってことですか?

石塚

はい。業態転換として買収してる。

安田

そんな簡単にいきますか?

石塚

もちろんリスクはありますけど。やらざるを得ないんでしょうね。

安田

この先どの程度“スーツを着ないムード”って広がっていくんですか?

石塚

いやあ、もう、とどまるところを知らない感じじゃないですか。

安田

もはや「ノーネクタイ」は普通ですもんね。あのお堅い銀行でさえも「本部はスーツ着なくていいよ」みたいな。

石塚

そうです。環境とかエコとかも後押ししてますから。「夏は暑くなっているから、ドレスコードを一気に緩めましょう」と。もう、とどまるところを知らない。

安田

たとえば就職活動の面接とかでもスーツ着なくなりますか?

石塚

そこが一番遅いかもしれないですね。要するに就活や行事ごとでもなければスーツを着なくなるってことです。まさに「よそ行きの服」になるんじゃないですか。

安田

確かに仕事では着なくなりましたね。結婚式とか葬式の時だけ。

石塚

さすがにお葬式では、ちょっと罰当たりな感じするじゃないですか。

安田

他人の葬式だったらそうですよね。自分の両親のときはスーツ着なかったです。

石塚

安田さんみたいな人が増えていくんじゃないですか。

安田
私の仕事はちょっと特殊ですけど。
石塚

前回の対談でも話しましたけど、これからフリーランス化・個人事業主化する人がどんどん増えます。彼らはスーツなんか着なくなる。

安田

でも大企業さんなんかは、頑なに守っていきそうに見えるんですけど。

石塚

業種によりますね。むしろ最近は、大企業に行くとスーツ着てる人なんて誰もいないですよ。

安田

え、そうなんですか!?

石塚

はい。もう、クールビズ一色(笑)ほとんどジャケパンですよ。

安田

大手でもジャケパンが普通ですか。

石塚

この間、某商社に行った時は、商社マンがサンダルみたいなの履いてて。

安田

サンダル!?

石塚

へぇ~って思いましたけど、本人は至って普通でしたね。むしろ業者のほうが気を遣って着てますよね。

安田

そうですよね。

石塚

だって新橋でさえ、スーツ着てる人少ないじゃないですか。

安田

いや、新橋はまだまだ多いと思いますよ。サラリーマンの街ですから。

石塚

安田さんから見ると多いかもしれないけど。僕は「すごく減ったな」って感じます。

安田

そうですか。

石塚

ええ。だって外回りする信金マンなんて、上着も着なければ長袖も着てないですよ。半袖・ノーネクタイでバイク乗ってますからね。

安田

今や就職活動のために買ってる人がメインですか?

石塚

就職活動用に買って「あとはもう着ない」みたいな。

安田

じゃあスーツ業界はもう完全にシュリンクしていくと。

石塚

大量生産的なところは難しいでしょうね。着物と同じ運命をたどると思います。

安田

着物と同じ運命?

石塚

はい。

安田

趣味で好きな人だけが着るみたいな。

石塚

そうです。好きな人だけが着続けるんです。あとは祭事とかフォーマルな時だけ。年間多くて10回着ればいいんじゃないかな。

安田

政治家はどうなんでしょう。

石塚

政治家でさえ夏はみんなネクタイしてないじゃないですか。クールビズ推奨ってことで。

安田

でもコナカや洋服の青山って東証1部上場企業ですよ。すごい社員数抱えてると思うんですけど。やっぱりリストラスですか?

石塚

おっしゃるとおり。あの業態は現状維持では厳しいと思います。なくなりはしないけど相当シュリンクする。

安田

どのぐらいまで減るんですかね?いわゆるビジネスマンのスーツ着用率って。

石塚

10分の1。

安田

10分の1ですか!じゃあ逆に着てる人が珍しいっていう。

石塚

そう。「何か今日あるの?」みたいな(笑)

安田

そこまでいきますか。

石塚

もう「ドレスコード」という言葉が死語になるかもしれません。


石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。

安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。

 

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