2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第220回「美大とアートの関係」
第221回「採るべきはCOO」
いわゆる「プロ社長」って、任せておけば会社を大きくして、付加価値もどんどんアップしてくれる人ですか。
まあそんな感じですね。
そんな人本当にいるんですか?
いることはいます。
へえ〜 。
ただ数は少ない。多めに言って日本に100人ぐらい。
そんなにいるんですか。
ただし100人のうち、今ちゃんと仕事してる人は半分ぐらいでしょうね。
仕事がないってことですか?
求人案件自体が少ないです。
実力のある経営者を探してる会社って、たくさんありそうですけど。
現実として求人数は少ないですね。
私の知り合いの経営者さんは、みんな探してますよ。会社を誰かに任せて他のことがやりたいって。
いわゆるシリアルアントレプレナー的な立場ですね。
そうです。つくった会社を有能な人に任せて、自分はまた新たな会社を立ち上げたい。だけど経営を任せられる人がいないって。
よく分かります。
石塚さんのお話では、そういう人材がマーケットに余ってる訳ですよね。
プロ経営者の採用って何種類かありまして。トップに据えて「経営ぜんぶを任せる」という求人ポジションはすごく少ないんですよ。
いわゆるCEOの募集ということですね。会社の全権限を委ねられる人。
そう。
それができる人はすごく少ないと。
できる人も少ないし、求人自体もすごく限られてます。
なるほど。
だけど子会社とか、いち事業部門をCOO的に事業執行するのであれば、これは結構人材がいるんですよ。
へえ〜。ということは全権委任みたいなポジションではなく?
ソフトバンクやユニクロは、それをやろうとして全て失敗してます。
莫大な報酬も必要ですよね。
数千万〜数億単位ですね。いろいろ込みで。
中小企業の経営をまかせるのに何億も払えないですよ。
利益が飛んでしまいます(笑)
つまり石塚さんのおすすめはCEOではなくCOOですか。
そうです。事業をいい状態できちんと維持してくれる人。これってまさしくCOOなんですよ。
そのポジションだったら採用は可能だと。
けっこう人材がいます。
どこかで社長をやっていた人とか?
子会社の社長経験がある人はベストですね。あとは、ある程度まとまった事業部門をP/Lを持ちながらちゃんと伸ばしてきた経験がある人。
そういう人なら中小企業のCOOを任せられる?
十二分にできると思います。
大企業で事業部長をやっていた人とかですよね。
はい。事業部長とかですね。
そういう人材って日本に何人ぐらいいるんですか。
CEO候補とは桁が2つぐらい違います。
え!そんなにいるんですか!?
はい。1万人以上その資格者はいると思います。
もしそういう方にCOOをお願いするとしたら、年収はどれぐらいですか。5,000万とか?
いやあ、ぜんぜん。
そんなに払わなくてもいい?
おそらく1,500万で動きます。
それは都心部に限らず?地方でも。
お子さんの教育問題がある程度片付いていれば、ひとりでどこでも行くと思う。
でも大手の事業部長って出世コースですよね。そういう人たちでも「先がない」と感じていらっしゃるわけですか。
そういうことです。今はいかに大会社でも、ごく一部を除いて「はい終わり」って残れない人の方が多い。
そういう方が動くと。
はい。早々に子会社の常務ぐらいで“あがり”になっちゃった人とか。
へえ〜。なるほど。
数々の新規事業を立ち上げてきて、子会社の社長もやったり、副社長をやったり。そういう人が50代ぐらいで「上がりです」って言われたら、たぶん疼くと思う。
その話が正しければヘッドハンティングでも採れそうですけど。「ぜんぜんいい人がこない」って聞きます。
それはプロファイリングを間違えているからですよ。
どういう意味ですか。
経歴を優先しちゃうから。
どんな経歴ですか。
一流大学出身で、日本を代表するような会社に新卒で入ってないと、そもそも良い人材として認められない。変なステータスがありまして。
大企業って、そんな人ばかりじゃないですか。
そうなんですけど、それだけではいい人材とは言えない。たくさんの修羅場をくぐって、いろんなつらい経験をして、そして実績も残している人じゃないと。
つまり順調に出世してきた人とは限らないと。
そうなんですよ。むしろちょっと本流から外れちゃった人の中に、いい人材がいる訳です。
つまりターゲットがズレてる?
そういうことですね。ちゃんとしたフィルターで見れば分母が1万人以上います。
中小企業でも採用できますか。
そこから選べば相当いいマッチングができると思います。あとはちゃんと表で求人情報を発信すること。
表で?
そういう求人って、これまで秘密でやってきたんですよ。表に出てこなかった。僕も昔はヘッドハンターとして“隠密の人”でした(笑)
そうなんですか(笑)
だけどスマホが登場してこの流れが変わりました。
COOみたいな人もスマホで職探しするんですか?
もちろん。通常の職探しとまったく同じ原理ですよ。
そういう時代なんですね。
僕がヘッドハンターを辞めた一番の理由がそれです。ちゃんと情報発信すれば、紹介やヘッドハンティングに莫大な費用を払う必要なんてもうないんです。
石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。