この記事について
2011年に採用ビジネスやめた安田佳生と、2018年に採用ビジネスをやめた石塚毅による対談。なぜ二人は採用ビジネスにサヨナラしたのか。今後、採用ビジネスはどのように変化していくのか。採用を離れた人間だけが語れる、採用ビジネスの未来。
前回は 第349回「ワタミはタイミーで成功するのか」
第350回「現場から人がいなくなる時代」
安田
従業員の退職による企業倒産が増えているみたいです。
石塚
資格を持っている人が辞めて仕事を受けられなくなるパターンとか。
安田
あとは営業や開発の中心人物が抜けてしまうパターン。今すごく増えているみたいです。
石塚
正直これは中小企業だけの話ですよ。大手は誰が抜けようがそれでビジネスモデルが崩れたりしないから。新しい人が移動して来るだけ。
安田
石塚
中小はホント仕事が属人的なので。中小企業の最大の弱点って「仕事に人が付いてしまう」ことなんですよ。その人が抜けちゃうと会社ごと持ってかれる。
安田
石塚
去年あたりまではなんとかごまかして来れたけど。もう無理って話でしょ。
安田
転職したら待遇が良くなる時代なので。単純に考えてどんどん人が流動化していきます。
石塚
とくに注目すべきは大手、準大手クラスが社員を抜いていくこと。
安田
石塚
やっぱり給与の差が大きいから。どうしてもそっちに流れていきますよ。
安田
石塚
安田
なるほど。だとしたら中小企業はどうしたら良いんでしょう?
石塚
中小同士で合併するとか。高松建設という中堅企業が2008年あたりから空調、水道、いろんな分野の会社を買収しまくって、グループを作ったんです。
安田
石塚
グループ内の忙しいところに人を割り振るので遊びがなくなって。めちゃくちゃ効率が良くになった。そして全分野対応出来るようになった。
安田
余っているところから足りないところに移動させるわけですね。
石塚
そう。野球で言えばセカンドもセンターも守れるみたいな。こういう会社は強いんですよ。
安田
ロサンゼルスドジャースみたいですね。ユーティリティプレイヤーをどんどん増やして。誰が怪我しても大丈夫みたいな。
石塚
安田
他にはどんな生き残り方法がありますか?人不足の中小企業。
石塚
中小企業はもう中途半端は無理だと思う。かなりの規模まで拡大していくか、思い切り属人化させるか。
安田
属人化を売りにするなら独自の付加価値が必要ですよね。
石塚
必要ですね。そのためには「これ以上は拡大しません」というラインも決めて、少数精鋭で単価を上げて。給料も上げて。
安田
規模は小さいけど社員1人当たりの収益が大きな会社ですね。いわゆるオンリーワン戦略。
石塚
おっしゃる通り。そこまでやるか売却して大企業グループに入るか。日テレでよく見るアキダイという練馬のスーパーもロピアのグループに入りましたよ。
安田
そういう時代ですよね。大手グループでも生き残るのは3社くらいでしょうか。
石塚
おっしゃる通り。飲食関係も3社ぐらいに絞られてきました。
安田
全ての業界がそうなっていくんでしょうね。業界大手が現場の人材を会社ごと買い取って、寡占化されていく感じ。
石塚
安田
小さな会社が生き残る道って、もう極端なオンリーワン化しかないような気がします。
石塚
株を売却して大手にジョインするか、思い切り縮小してオンリーワン化していくか。このどちらかでしょうね。
安田
石塚
今まで40人弱だったとしたらもう5人くらいにして。しかもその5人はそんじょそこらの5人じゃないですよっていう。
安田
石塚
そう。そして「商品はこれに絞りました。単価は今までの3倍です。」みたいな。そういうやり方じゃないともう無理ですよ。
安田
仕入れた物に利益を乗せて売ってたり、人を雇って指示通り動いてもらったり、というビジネスは中小企業には厳しいでしょうね。
石塚
厳しいと思います。給料アップ競争になるので。まともに働ける人材はどんどんよそに引き抜かれちゃう。
安田
ある意味いびつな会社じゃないと中小企業はもう生き残れないんでしょうね。
石塚
ほんとその通りだと思います。バランス重視とか言ってる人には中小企業の経営はもう無理ですよ。
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石塚毅
(いしづか たけし)
1970年生まれ、新潟県出身。前職のリクルート時代は2008年度の年間MVP受賞をはじめ表彰多数。キャリア21年。
のべ6,000社2万件以上の求人担当実績を持つ求人のプロフェッショナル。
安田佳生
(やすだ よしお)
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。