この対談記事について
100人にひとりのスキルを3つ掛け合わせれば「100万人にひとり」の存在になれる。なんて言われています。でも100人にひとりって結構大変ですよね。そんなあなたに朗報です。もしあなたの絵心がゼロなら大チャンス。あなたのビジネスに関係なさそうなら更にチャンス。スケッチはあなたの人生を変えるかも。
対談相手プロフィール
戸谷信彦(とや のぶひこ)
株式会社ネクストプラス 代表取締役 https://www.next-plus.co.jp/
1965年 群馬県生まれ。大手家電メーカーでプロダクトデザイナーとして勤務後、住宅会社の企画・商品開発部に転身。ママ目線住宅などの商品開発を行う。現在は、スケッチスキルを活かして、全国の工務店で営業支援や仕組みづくりを行っている。LIXIL、Panasonic、ビックサイトでのセミナー開催など講演実績多数。
第4回「言葉と絵と文字と」
安田(やすだ): 絵はあまり得意じゃないんですが、言葉に関しては一応それで仕事をしてます。
戸谷(とや): はい。存じ上げてます。
安田: たとえば「アメリカ合衆国を知ってますか?」って聞くと、だいたいの人は「知ってます」って答えるんですね。
戸谷: まあ、そうでしょうね。
安田: 「じゃあアメリカについて800文字で書いてください」って言うと、誰も書けなかったりするんですよ。
戸谷: 3行くらいしか書けなさそうですね。
安田: で、その時はじめて「あ、自分はアメリカ合衆国について知らなかったんだ」ということを知るわけです。
戸谷: スケッチもまったく同じですね。知らないと描けないんですよ。
安田: なるほど。言葉っていい加減ですからね。
戸谷: はい。かなりいい加減です。
安田: 伝えたつもり、伝えられたつもりでも、実は1~2割しか伝わってない。
戸谷: ある会社で社長に「プロジェクトの説明をしてください」って言ったら、「みんな分かってるから大丈夫」って言うんですよ。
安田: でも分かってない?
戸谷: 社員さんに聞いてみたら「ほとんど分かりません」みたいな。そんなことだらけですよ。
安田: ですよね。
戸谷: 私の場合は、お客さんの要望を絵に描かなきゃいけないじゃないですか。
安田: はい。
戸谷: そうすると、すごく細かいところまで聞かなきゃいけないんですね。
安田: たとえば、どんなことですか?
戸谷: たとえば営業マンがヒアリングすると「リビングが広くて大きなソファーが置ける家」で済ましちゃう。
安田: でも、それでは絵にできないと?
戸谷: 「実際どれくらいの広さですか?」「テーブルの形は?」「ソファの大きさは?」「色は何色ですか?」みたいな。
安田: 確かに、それが分からないと絵にできませんよね。
戸谷: 営業マンのヒアリングを元に絵を描くと、お客さんから「ぜんぜん違います」って言われる(笑)。
安田: じゃあ、絵が描ける営業マンはヒアリング能力も高いと?
戸谷: でないと自分で絵がかけないので。結果的にヒアリング能力が上がって、それが営業成績にもつながる。
安田: じつは採用業界でも、よくあるんですよ。営業マンがヒアリングして、それを元に制作スタッフが求人原稿を作るんですけど。
戸谷: お客さんが望んでる原稿と「ぜんぜん違ってた」みたいな。
安田: その通りです(笑)。言葉のコミュニケーションって、じつは穴だらけなんですよ。
戸谷: 言葉がコミュニケーションを複雑化している部分もありますね。
安田: もちろん、言葉の良さもあるんですよ。何となくで伝わる部分とか。でもそれがデメリットでもある。
戸谷: 何となくは伝わるけど「具体的にはよく分からない」みたいな。
安田: ちょっと話ズレるかもしれないんですけど、私、すごく電話が嫌いなんですよ。
戸谷: どうしてですか?
安田: 電話って沈黙が許されないじゃないですか。だから間が持たないというか。
戸谷: (笑)
安田: で「メールでお願いします」って言うんですけど、「いや、電話がいい」っていう人が必ずいるんですよ。
戸谷: いるでしょうね。
安田: そういう人に限って支離滅裂なんですよ。言ってることが。
戸谷: 本人には自覚なさそうですけど。
安田: 支離滅裂でも「俺は言った、伝えた」ってなってしまう。でもそのセリフを文字に起こしてみると、何言ってるのか分からない。
戸谷: なんか頭が痛いですね。私も言葉で伝えるのは苦手なので。
安田: 文字にできないってことは、しゃべってる時間は長いけれど「何も伝えてない」ってことなんですよ。
戸谷: 厳しいご指摘ですけど、まあ、そうですね。
安田: でも本人は伝えた気になっている。ここにギャップが生まれるわけです。
戸谷: 安田さんは、そっちの能力が高いからですよ。私も言葉にしたらほとんど支離滅裂です。ただ、顔見てしゃべると何とかなると思ってしまう。
安田: それ、大きな間違いです(笑)。
戸谷: 確かにウチの母親も、会うとウワーっとしゃべるんですが、結局、何言ってるのか分からない。
安田: まあ家族とか、恋人同士とかだったら、それでもいいんですよ。でも仕事ではそういうわけにはいきませんから。
戸谷: ですね。たぶん私はそのギャップを、絵で埋めてるんだと思います。
安田: 戸谷さんはそれでいいんですよ。コミュニケーションには得意不得意の分野がありますから。
戸谷: よかった(笑)。
安田: 困るのは、自分の得意不得意を分かってない人。支離滅裂なのに、一方的に電話して来て言葉だけで伝えようとする。
戸谷: で、伝わらない。
安田: はい。なのに、こちらが怒られるんですよ。「俺は言っただろう!」って。
戸谷: 自分の得意不得意を知ることが大事ですね。
安田: でも普通の人って、伝えたいことを全部文字にはできないし、たぶん絵にもできない。
戸谷: 絵だけでコミュニケーションするのは、さすがに無理ですね。
安田: ですよね。だからこそ、言葉と文字に加えて「絵をかけるようになる」ってことが、強力な武器になる気がします。
戸谷: ちょうど私はどっちも中途半端なんですよ。
安田: 絵はかなり上手いじゃないですか。
戸谷: まあ標準値よりは上ですけど、デザイナーやアーティストほどではない。その代わりに言葉を使ったコンサルも少しはできる。
安田: なるほど、合わせ技ですね。
戸谷: はい。ウチの仕事って「コンサル?」って言われたらコンサルじゃないし「デザイン会社?」って言われたらデザイン会社でもない。
安田: その中間でやってる感じ?
戸谷: はい。そしてその中途半端さが、重宝されるいちばんの理由かもしれません。
安田: 私の場合はかなり言語に寄ってますね。他の人が思いつかないようなアイデアを言葉で練り上げて、端的な文章で表現する。
戸谷: 安田さんはかなり希少な存在ですよ。
安田: だから重宝されるんですけど、私の場合、人に技術を伝承することは不可能ですね。
戸谷: いや、無理でしょうね。安田さんが死んだら終わり。
安田: はい。そこはもう割り切ってます。それに比べると、戸谷さんのスケッチは応用が効きますよね。
戸谷: そこを目指して開発してきましたので。
安田: ですよね。逆に「まったく絵なんて描けない」っていう人のほうが、付加価値を生み出せる。
戸谷: そういう人の方が、努力のコスパは高いでしょうね。
安田: 絵心がない人ほどコスパが高い?
戸谷: たとえば士業とか経営コンサルの方って、どちらかというと言語とか数字に強いじゃないですか。
安田: そういうイメージですね。
戸谷: そういう方がビジョンマップを描けると、効果は絶大なんですよ。言語や数字だと現実的な話になっちゃうんですけど、絵だとワクワク感が生まれる。
安田: 言語や数字での会話って、お互いにベースになるものが必要ですしね。決算書が読めるとか、専門用語を知ってるとか。
戸谷: そうなんですよ。絵はそのハードルを超えてくれますね。
安田: たとえば大人と子どものコミュニケーションとか、言語が通じない外人さんとのコミュニケーションとか。
戸谷: そういうシーンでは効果的ですね。
安田: 絵というのは、もしかしたら人類共通のコミュニケーションツールかもしれませんね。
戸谷: 人類のスタートって、絵からじゃないですか。
安田: たしかに。絵のほうが先ですもんね。
戸谷: 絵が文字化されただけで、本当はその時代のほうがシンプルだったんだろうなと思います。
安田: 確かに。象形文字なんて、読めなくても何となく意味がわかりますもんね。。
戸谷: まだ喋れなかった時代から、絵はありましたから。
安田: 漢字だって、元は絵みたいな形でしたからね。
戸谷: 全部、元は絵なんですよ。
安田: なるほど。
戸谷: 今は文字になり、パソコンになり、どんどん使わなくなってますけど。もうちょっと絵を使ってあげてほしいです。
全4回、ご覧いただきありがとうございました!
第1回「隠れたブルーオーシャン」
第2回「3時間で人生は変わる」
第3回「ビジョンをスケッチする効果」
第4回「言葉と絵と文字と」