地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第68回 「ほんの少しの驚き」が売れる味をつくる

まさにそれです。食べてみて「どっちが美味しいか」「どっちが自分の好みか」はわかるけど、自分で作るとなると無理なんです。センスがいい人って、オーソドックスなメニューにちょっと何か足すのがすごく上手じゃないですか。

そうですねぇ。例えば今はスパイスやハーブがトレンドですけど、それも一巡して飽きられつつある。山椒をジェラートやムースに合わせてみたり、フレンチに柚子を合わせるみたいな手法も、今じゃもう驚きの対象じゃなくなってしまいましたから。

そういう意味では、ケーキ屋より小さなビストロとかの方が攻めたデザートを出してたりするんですよね。だからむしろ刺激を受ける。温かいものと冷たいものを組み合わせたり、ケーキ屋では表現しにくいことをやってるので。

そうですね。僕が修業していた『ダニエル』も、シェフが本当に天才的でした。お客さんもスタッフもそれに惹かれて集まってくるという感じで。

ああ、いいですね。その店でしか食べられない究極の一品というか、看板商品のようなものができたら良さそうです。新橋の焼き鳥屋にもあるんですよ。焼き鳥は普通なんですけど、鶏皮ポン酢だけが異常に美味いという。真似しようとしたけど、全然再現できなくて(笑)。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。