地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第93回 形を変えて生き残る「おせち文化」の未来

うちは奥さんが毎年必ず作ってくれるんですが、品数はそんなに多くないですね。まずは子どもたちが大好きな栗きんとん。全部を栗で作っちゃうと高くつくので、芋でベースを作って中に栗の甘露煮を入れてます。

そうなんです。もし三が日に店を開ければ、そこでも結構な売り上げが立つんですよ。ただ、うちは従業員の休みのことも考えて、何年か前からお正月は休みに変えたんです。開ければ売れるのはわかっているので、経営者としてはやりたい気持ちと葛藤することもあるんですけど(笑)。

うちは毎年「おせちセット」を買ってるんです。最近は百貨店なんかがいろんな名店とコラボしたものもあって、選ぶのが結構楽しいんですよ。最近は有名料亭だけじゃなくて、個人店やビストロなんかも「限定〇食」みたいな形でおせちを出していたり。

そうなんですよ。ただ、以前「和洋中」全部入った三段重を買ったことがあるんですが、あれは全てが中途半端に感じてしまって一回でやめました(笑)。やっぱりお正月は「和」に特化して集中した方が満足度が高いなと。

なるほど(笑)。確かにあれこれ手を出すより、好きなものに絞った方が満足度は高いですよね。僕の場合、ワインが好きなので、本当ならワインに合うローストビーフなんかをつまみたいところなんですよ。子どもたちも、あまりガチガチの「和」のものは食べませんしね。

そうです。60度のお湯で2時間半ほどにセットして、真空パックにしたお肉を沈めておくだけです。時間が来たら取り出して、常温で少し休ませてから、最後に表面をフライパンで焼く。そうすると切った時にすごく綺麗なロゼ色で、ジューシーに仕上がるんですよ。

僕は最後に焼く派ですね。食べる直前に焼いてすぐ切った方が、やっぱり香ばしい香りが立って美味しい気がします。低温調理器を使うと本当に失敗がないので楽ですよ。ボニークみたいな本格的なものじゃないですけど、十分機能しています。

そうなんです。家庭用のオーブンレンジだと、火力の強さや庫内の広さの問題で、大きな肉に均一に火を通すのって難しいんですよ。その点、低温調理なら温度管理さえできれば放置でいいので、その間に他の家事や用事も済ませられますし。

昔ながらの形式ばったおせちだと、2日目、3日目にはもう誰も手を付けなくなって「食べるものないよ」ってなりますからね(笑)。でも最近は洋風や中華風などバリエーションも増えて進化していますし、おせちという文化自体はなくならずに、形を変えて残っていくんじゃないかなと思います。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















