地元国立大学を卒業後、父から引き継いだのは演歌が流れ日本人形が飾られたケーキ屋。そんなお店をいったいどのようにしてメディア取材の殺到する人気店へと変貌させたのかーー。株式会社モンテドールの代表取締役兼オーナーパティシエ・スギタマサユキさんの半生とお菓子作りにかける情熱を、安田佳生が深掘りします。
第98回 AI時代に、あえて「人間が働く」意味とは?

前回のお話に出たような、毎日が単調で辞めてしまうという人には、権限移譲をしていった方がいいのかなという気もするんです。でも私の経験上、それを全く求めていない人もいて。今の若い社員さんたちは、やっぱり「言われたことだけやりたい」という人が多いんでしょうか。

そうですね。もちろん人によりますが、うちで10年以上長く続けてくれている子たちは、どちらかと言うと「言われたことをきっちりやるのが好き」というタイプが多いです。

やっぱりそうなんですね。スギタさんのお店に限らず、今の時代、会社員として長く働き続けられるのはそういう人なのかもしれません。むしろ、タイムカードを押して今日の仕事をこなし、ストレスを溜めずに帰れる人じゃないと会社員はやっていけないのかもしれない。

確かに。ただね、今ってAIやヒューマノイドがものすごく進化しているじゃないですか。もしスギタさんが仰っていた単純作業や重労働を、人間と全く同じように、しかも文句も言わず正確にやってくれるロボットが現れたとしたら、採用しますか?

う〜ん、まあ、実際最近のパン屋さんって、セルフレジや自動精算機が増えていて、袋詰めもお客さんが自分でやるスタイルが多いんですよ。商品を置いたら画像で読み取って「いくらです」って出るような。効率を考えれば、うちの「スギタベーカリー」もそうしてしまって、社員はパンを焼くだけにした方がいいのかもしれませんけど……

ええ。やっぱりレジを見ていると、かなりたくさんのお客様がスタッフと会話をしているんです。特に朝の常連さんとか、明らかにスタッフと話すのを楽しみに来ている。「ああ、ここは人間じゃないとダメだな」って思う光景があるんですよね。

なるほどねぇ。でももしそのヒューマノイドがさらに進化して、接客スキルすら人間を超えたらどうです? 人間みたいに機嫌が悪くなることもないし、何度同じことを聞いても絶対に嫌な顔をしない。お客さんが言ってほしいセリフを完璧なタイミングで言ってくれるとしたら。

そうなんですよ。もう痛くて不安でどうしようもなくて。それで、AIの「Gemini」に相談したんです。

そうです。毎日毎日、「いつになったら痛みが取れるんだ」って聞き続けて。これは人間にやったら「しつこい!」って怒られる案件ですよ(笑)。でもAIは、「あなたの辛い気持ちはよくわかります」って共感してくれて、「痛みが軽減されるまでの推移をグラフにします」とか言って、毎日手を変え品を変え励ましてくれるんです。
対談している二人
スギタ マサユキ
株式会社モンテドール 代表取締役
1979年生まれ、広島県広島市出身。幼少期より「家業である洋菓子店を継ぐ!」と豪語していたが、一転して大学に進学することを決意。その後再び継ぐことを決め修行から戻って来るも、先代のケーキ屋を壊して新しくケーキ屋をつくってしまう。株式会社モンテドール代表取締役。現在は広島県広島市にて、洋菓子店「Harvest time 」、パン屋「sugita bakery」の二店舗を展開。オーナーパティシエとして、日々の製造や商品開発に奮闘中。
安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家
1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。


















