第114回 中小企業は人を「雇わない」ことが鉄則になる

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第114回 中小企業は人を「雇わない」ことが鉄則になる

安田
鈴木さんもご存知のように、私は「雇わない経営」というのを広めていまして。これはできるだけ外注や業務委託を活用しながら経営しましょうという提案で、必ずしも正社員を一人も雇うなって話ではないんですけど。でも実際、正社員雇用って大変じゃないですか。

鈴木
そもそも採用自体にけっこうなコストがかかりますしね。それに今は、決まった仕事を淡々とやらせておけば儲かるって時代でもないし。
安田
そこなんですよ。正社員で雇う以上はある程度難易度の高いミッションを担当してもらわないとペイできない。…それで言うとこれからの時代、正社員はどれくらいまで縮小させるべきなんでしょうね。

鈴木
うーん、どうなんだろうなぁ。ちょっと話は逸れますけど、20年くらい前までは「年商」と並んで「正社員の数」がある種のバロメーターになっていたじゃないですか。
安田
なっていましたね〜。「正社員100人」というのが一つの基準になっていた気がします。

鈴木
そうそう。でも最近は「正社員100人…めっちゃ大変やろうなぁ」って思っちゃうようになっちゃって(笑)。
安田
確かに(笑)。そういえば『のうひ葬祭』さんでは正社員は増やしているんですか?

鈴木
いや、ウチはもう減ったら増やさないことにしてて、その分、業務の外注にシフトしている感じです。今って本当にあらゆる分野で外注することが可能じゃないですか。
安田
そうですよね。昔だったら税理士さんとか弁護士さんといった専門家くらいしか外注できませんでしたけど、今は採用・営業・商品開発、なんでも頼めちゃいますよね。

鈴木
そうなんですよ。しかも外注の方がレベルが高いし。それでいて、正社員を雇って年間の社会保険料を支払うよりも、ずっと安くすむ。
安田
仰るとおりですよね。昔は「悪くない人材だし、とりあえず雇用して仕事を与えてみようか」というやり方の会社が多かったと思うんです。でもそういう採用をしていくと、どんどん業績が悪化していくような気がしていて。

鈴木
ああ、わかります。ちょうど今、『キーエンス流 性弱説経営』という本を読んでいるんですが、ここにも似たようなことが書かれていて。キーエンスでは「外注でやる方が安い業務については、絶対に社員にはやらせない」ということを徹底しているらしいですよ。
安田
それでいくと、「絶対に黒字になる人以外はそもそも正社員として採用しちゃいけない」ということなんでしょうね。

鈴木

そう言えば僕も社長になりたての頃、自分がやった方が早いからという理由で現場にガンガン出ていた時期があったんです。でもその時に先輩経営者から「自分の給与に見合った仕事をしなきゃあかんぞ」って言われまして。

安田
確かに、平社員でもできる仕事を、給料の高い社長がするべきじゃないですよ(笑)。そういう意味でも、正社員を雇用するなら、雇用してすぐに黒字化できるような仕事に限定すべきだと思いますね。

鈴木
となると雇う側も、「こなしてくれるだけで利益が出る仕事」を仕組み化しておかないといけませんね。
安田
そうそう。そうすれば「普通の能力の人」でも正社員として雇う意味がある。一方で、商品開発やマーケティングの主軸となってくれるような人が見つかったなら、迷わず雇った方がいい。

鈴木
確かにそうだ。そういうスペシャリストの少数精鋭でいいくらいですよね。「元気で明るく素直な人を採用します」なんて言ってる場合じゃないと(笑)。
安田
そうですよ(笑)。ひと昔前はそれでもよかったですけど。今はたった1人でも「赤字社員」を抱えてしまったら大変なことになっちゃいますから。

鈴木
しかもそういう社員のしわ寄せがいくことで、せっかく雇えた有能な人材が辞めていっちゃうパターンも多いんですよね。
安田
そうそう。そう考えると、中小企業の鉄則は「余計な人は絶対に雇用しない」ということになりそうですね。社長を含めて5名くらいの精鋭メンバーで揃えて、それ以外の仕事は全部外注。そうすれば経営もすごく楽になると思いますよ。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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