第138回 住民全員、社長の街を作ってみたら

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第138回 住民全員、社長の街を作ってみたら

安田
以前の対談で、全国で一番多く社長が住んでいるのは東京の港区だってお話ししたの、覚えていらっしゃいますか?

鈴木
覚えてます。確か6人に1人が社長って仰ってませんでしたっけ?
安田
そうですそうです。まあ一口に「社長」といっても、業種にしろ規模にしろ千差万別だと思いますけど。

鈴木
そうね、いろんな意味で様々でしょうね(笑)。
安田
笑。社長の数は13年連続で港区がトップらしいですよ。社長になったら港区に住む、というルールでもあるかのような(笑)。

鈴木
「成功者」になったから、港区に引っ越そう、と考える人が多いというわけですね。
安田
そうそう。でもね、私は常々、社長になるのなんて課長になるよりも簡単だと思っているんですよ。

鈴木
確かに。課長は評価されないとなれないけど、社長って法務局に行って書類出せば100パーセントなれますもんね(笑)。
安田
そうなんですよ(笑)。でも、だから価値がないって言いたいわけじゃなくて、そんなに簡単なんだから、もっともっと「社長」が増えればいいと思ってるんです。鈴木さんは、日本人の何人に1人くらいが「社長」になるのが理想だと思います?

鈴木
…全員なったらいいんやない?(笑)
安田
同感です(笑)。私も日本人全員が自分の会社を持つのが理想だと思います。

鈴木
1人ひとりが「個人事業主」というような感覚があれば、「会社=自分事」になりやすいんじゃないかと思いますもんね。
安田
いや本当に。一度自分で会社をやってみて、自分で自分の社会保険料を払う経験をしてみたらいいんです。そうしたら「え、会社ってこんなに払ってたんだ」って分かりますから(笑)。

鈴木
そうそう。自分が払う立場になったらびっくりしますよ。雇われている時に「高いなー」と言っていた金額の倍を払っているわけですから、会社は。それを理解するためにも、皆、個人事業主をやってみればいい。
安田
以前もお話ししましたが、私は基本的に「人を雇う」のは反対なんです。ただそうは言っても「人を雇う」というのは大きな経験になると思う。借金してでも社員の給料を払って社会保険料を納める…そういう経験をすることで意識も変わってくるんだろうと。

鈴木
それで思い出しました。だいぶ前の話なんですけど、ウチに新卒で入った女性が同業の社長の息子さんと結婚しまして。それまではウチの社員として給料をもらう側だったけど、結婚後は給料を払う側になったんですよ。そしたら「全然違いますね。社長が昔言っていたことが、本当によくわかります」って(笑)。
安田
わかってもらえて良かった(笑)。でも現実的には、「社長が利益を独り占めしている」って思っている社員も多いですよね。実際は真逆のケースも多いと言うか、借金までして給料を払い続けていた何年・何十年があって、ようやく「利益がある」状態にたどり着いた人だって少なくないのに。

鈴木
仰るとおりです。まぁ、実際にやってみないとわからないですよ。
安田
ちなみに港区のように「社長が多い街」って、鈴木さんにとって魅力的ですか?

鈴木
いろんな社長に出会える機会が増えそうだという意味では、魅力的かもしれないですね。ウチの事業とコラボしてくれそうな社長に会える可能性も高そうですし(笑)。
安田
いいですね。あとは、社長ばっかりの街だと自治会運営もすごくスムーズにいきそう。

鈴木
確かに(笑)。みんな決断力や責任感がありそうだから、効率よい仕組みなんかもパパッと作っちゃって、話が早そうです(笑)。
安田
もういっそのこと、港区には社長しか住めない、とするのもいいかもしれないですね(笑)。港区に住みたいんだったら社長になってください、って。

鈴木
それは面白そうだな(笑)。出会う人皆が社長だったら、街のあちらこちらでいろんなイノベーションが起きそうですね。
安田
港区だと広すぎるかもしれないので、もう少し小さい範囲でシリコンバレーならぬ「社長バレー」を作るのもいいかも。鈴木さん、美濃加茂市のどこかに、そんな街を作りましょうよ!(笑)

鈴木
いいですね、早速構想を練ってみましょうか(笑)。

対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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