第69回 外国人向けに、日本の空き家を販売するビジネス

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第69回 外国人向けに、日本の空き家を販売するビジネス

安田
鈴木さんがお住まいの岐阜県には、外国の方も多いとお聞きしました。そういう方たちは皆さん、移住されてきているわけですよね?

鈴木
そうだと思います。僕が住む美濃加茂市には、工場に出稼ぎで来られる方が多くて、一時期は人口の約1割が外国人という時もあったみたい。リーマンショックの影響で帰国される方も一定数いたけど、そのまま住んでいる方も多いようですね。
安田
なるほど。そういう方たちは工場の寮や賃貸物件に住むことが多いと思うんですが、空き家を買いたい人もいるんじゃないかなと思いまして。というのも、日本の空き家がいま外国人に大人気らしいんですよ。

鈴木
そうそう。僕もよく不動産関係のニュースで目にしています。実は外国人ニーズを知って僕らもまさにそういうサービスを始めたところで(笑)。
安田
そうでしたか! 外国人向けの空き家紹介・空き家販売ビジネスってことですか?

鈴木
特別に「外国人向け」と銘打っているわけではないんですが、銀行でローンが組めない外国人の方でも家を購入できるサービスです。
安田
ほぅ、詳しく教えていただけますか?

鈴木
ええ、もちろん。前提情報として、外国の方ってこっちに来ると割とすぐに車を購入するんですよね。しかもボロボロの中古車じゃなくてキレイな新車を。
安田
へぇ、新車だと安くても200万円台とかですよね。車種によっては400万円とか500万円とかも普通だし。

鈴木
そうなんですよ。つまりそれくらいの金額ならキャッシュで出せるってことなんです。 「じゃあ500万円の空き家も買ってもらえるんじゃ?」となりまして(笑)。
安田
なるほどなるほど。購入するのが車じゃなくて家でもいいじゃないか、と(笑)。

鈴木
そうですそうです。銀行からお金を借りなくても、それくらいなら払えるわけですから。それで「割賦販売(かっぷはんばい)」をやってみることにしたんです。
安田
割賦販売…なんですか、それ?

鈴木
簡単に言うと「分割払い」の販売です。例えばウチの場合だと、まず3年間は家賃を払いながら「借家」として住んでもらいます。そして3年後、残価を一括で支払えばアナタの「持ち家」になりますよ、という感じ。
安田
ふむふむ。家賃として支払っていた分が、販売価格から引かれていくわけですね。

鈴木

そうですそうです。販売価格が500万円の空き家を、月8万円の家賃で貸し出すとしますよね。

安田
はい。8万円×12ヶ月で、住む方は年間およそ100万円を「家賃」として支払うと。

鈴木
そうそう。そうすると3年間でトータル300万円を支払うことになるんですが、それを販売価格の500万円から差し引くと…。
安田
200万円が残りますね。あ、そうか。その200万円を一括で支払えば自分の家になるわけか。いやぁ〜すごいシステムですね。買う人は全然損しない!(笑)

鈴木
仰るとおりです。つまりアパートに掛け捨ての賃貸で住み続けるよりいいんじゃないの?って話で(笑)。
安田
でもそれ、別に外国人だけじゃないですよね。日本人対象でも普通にニーズあると思うんですけど。

鈴木
そこでポイントとなるのが、「外国人は、片付けなくても買ってくれる」というところなんです。つまり空き家を「そのままの状態」で引き渡せるんですよ。
安田
ああ、以前も確か仰ってましたよね。外国人の方はむしろそのままの状態で買いたがるって。確かに日本人相手だとそれは無理ですね。フルリフォームしろとは言わないまでも、家の中はすっからかんな状態にしておかないと買ってくれない気がします(笑)。

鈴木
まさにそうなんです。でも外国の方は残置物があっても「使えるものは使うから大丈夫〜」って言いますし、雨漏りとか立て付けの悪さみたいな多少の不具合なんかも「住みながら直していくから平気〜」って言ってくれる(笑)。
安田
やっぱりそれは「家そのもの」に価値を見出しているからなんでしょうね。日本だと家自体にはあまり価値を感じていなくて、どちらかと言えば「中古物件の値段=土地の値段」と捉えている人がほとんどな気がします。

鈴木
そうなんです。だから「自分たちで手直しすれば全然余裕で住めるのに、なんでこんなに値段が安いの?」って思われる海外の方が多いらしくて。
安田
なるほどなぁ。それで「割賦販売」で外国の方に物件案内をしていくサービスを始められたと。ちなみに順調に進んでいらっしゃるんですか?

鈴木
はい、先月に1軒成約しました。
安田
それはおめでとうございます! じゃあもう実際に空き家に外国の方が住んでいらっしゃるわけですね。

鈴木
そうです。しかもその方のお友達にもこの話がバーっと広まったそうで、「自分にも物件を紹介してほしい」という問い合わせがバンバン来ていまして…(笑)。皆さん、興味津々のようですね。
安田
なるほどなぁ。ということは今後鈴木さんは、外国人の方に向けて「決してキレイで住みやすいわけではないけれど、安い空き家」を積極的に紹介していくことになりそうですね(笑)。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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