第72回 「新たな価値」を見出すことで、リユースビジネスの最先端をいく

この対談について

株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。

第72回 「新たな価値」を見出すことで、リユースビジネスの最先端をいく

安田
突然ですが、鈴木さんは「中古」と聞くとどんなイメージが湧きますか?

鈴木
うーん…僕は新品か中古かなんて、全くこだわりないですけどね(笑)。
安田
鈴木さんはゴルフお好きですけど、中古のゴルフクラブでもいいです?

鈴木
あぁ、それも全然問題ありません。今持っているクラブも全部中古だし(笑)。車も新車なんて買ったことないですよ(笑)。
安田
そうでしたか! そういう私も特にこだわりはないんですが(笑)、今の日本人って、「中古品」と聞くと嫌がる人が多いと思っていて。

鈴木
へぇ、そうなんですか?
安田
例えば家も「新築」の方が欲しがる人は多いじゃないですか。わざわざお金を出してまで「中古=誰かのお古」なんて買いたくないと思う人、たくさんいると思いますよ。

鈴木
あぁ、確かに空き家も「中古」だから、なかなか買い手がつきづらい側面はあるのかもしれない。
安田
そうそう。でも日本ってもともとは「リユース国家」だったと言われていて。江戸時代には、短くなったろうそくを集めて溶かしてまた新しいろうそくを作ったり、古いわらじを集めて肥料にしていたりしたんですって。

鈴木
へぇ、面白いなぁ! でも確かに僕らが子どもの頃だってモノを長く大切に使うことが美徳とされていましたよね。「もったいない精神」という言葉もあるくらいですし。
安田
そうそう。日本ってもともとの資源が少ないことも相まって、どんなモノでも無駄にせず再利用しながら使い切る、という精神が根付いていると思うんです。ところが今の日本人は「中古品」に価値を感じていないと思っていて。

鈴木
みんな、「新しいモノにこそ意味がある」と思っていると。
安田
ええ。じゃあ日本の中古品はどうなっているかというと、実は今、海外の人たちにすごく重宝されているんですって。

鈴木
あぁ、僕がこの前お話しした「信楽焼の狸」と同じだ(笑)。海外で高く売れるって、買取業者さんが言っていましたよ。
安田
まさにそうです! それから「中古の宝飾品」も海外で高値で取り引きされているそうですよ。昔よく街の宝石屋で見かけたような、金の土台にサファイアが載せられた指輪とか、ルビーがあしらわれたネックレスみたいなものが。

鈴木

へぇ〜。それはノーブランドでも良いんですか?

安田
はい。日本だとティファニーとかカルティエのように「ブランドの冠」がついていないと全く売れないけれど、海外では「高品質である」ということが評価されるので、ノーブランドでも全く問題ないらしいです。

鈴木
ほぅ、それは興味深い。日本人には理解されていない「価値」を、海外の人は見抜いているということなんでしょうかね。
安田
そうなんだと思います。だからこそ、私はこの現状に少しの危機感を覚えているんです。

鈴木
危機感ですか? それはまたどうして?
安田
モノの価値がわかっていないために、日本にある「貴重な資源」がどんどん海外に流出してしまうんじゃないのかなと。というのも、江戸時代にすでに似たようなことが起きていて。

鈴木
え、そうなんですか?
安田
当時の日本では金(きん)がたくさん採れていた。でもその価値がわかっていなかったために、世界に比べてものすごく不利な比率で銀と交換していたそうで、あっという間に大量の金が世界に流出してしまったんですよ。

鈴木
なるほど。つまり安田さんは、モノの価値をちゃんとわかっていないと、貴重な資源がどんどん海外の人に持っていかれてしまうよ、と考えているんですね。
安田
仰るとおりです。だから今こそ日本人は「リユースの良さ」を再認識すべきなんじゃないかなと。だって日本にはまだまだ「価値のある古いモノ」がたくさん眠っているんですよ。

鈴木
その「モノ」って、別に品物だけに限りませんよね。例えば「景色」だって良いわけで。日本人にとっては何の変哲もないありふれた景色だと思っていても、海外の人にとってはすごく魅力的に見えるらしいですし。
安田
そうそう。そうやって「何の変哲もないモノ」を磨き直して、新たに価値を与えていく。これはいわば、リユースビジネスの最先端なんじゃないかと思います。

鈴木
確かに。それこそこの対談でも何度もお話ししてきましたが「ただの空き家」に新たな価値を見出して意味付けしてあげると、途端に「魅力的な空き家」へと変わる。それと似ている気がします。
安田
本当ですね。これからは私たち1人ひとりが「これは新たな価値が出そうだぞ」と嗅ぎ分けられるような感性を磨いていくことで、日本の全体の価値を発揮できるようになるのかもしれません。

 


対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役

株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。

安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

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1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 

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