この対談について
株式会社ワイキューブの創業・倒産・自己破産を経て「私、社長ではなくなりました」を著した安田佳生と、岐阜県美濃加茂エリアで老舗の葬祭会社を経営し、60歳で経営から退くことを決めている鈴木哲馬。「イケイケどんどん」から卒業した二人が語る、これからの心地よい生き方。
第81回 遺言を書く時に、知っておいた方が良いこと
安田
実は私、5年ほど前に初めて遺言書を書いて、公証役場に預けていたんですよ。というのも、もし私が死んで会社の株を相続することになると、その対象は今の奥さんと息子だけじゃなく前妻との子も含まれるんです。そうすると会社の株がいろいろなところに散らばってしまうんですよね。
鈴木
あぁ、なるほど。それは遺された人も大変になるパターンですね(笑)。
安田
そうなんです(笑)。だからちゃんと遺言書を遺そうと、
公証役場に行ったんですよ。
安田
「公証役場」って名前のイメージから、きっと仰々しい雰囲気の中でピリピリしながら作成していくのかと思っていたんですが、普通のビルの一室で拍子抜けしました(笑)。さらに驚いたのが、公証人の他に全然知らない人がいたことで。しかも2人も。
鈴木
安田
そうか、立会人と呼ばれる人たちだったんですね。公証人がテキパキと話を進めてくれている横で、ずっと「私たちなんかでいいんでしょうかねぇ?」って顔をして座っていて。「おいおい、あなた方は何者なんだ?」なんて思っていたんですけど(笑)。ちなみに立会人って何をするんです?
鈴木
遺言の内容がちゃんと安田さんの意思で作られているかを見届ける人ですね。要は、公証人が勝手なことをしていないか監視する立場です。
安田
ははぁ…なるほど。ちなみにそういう資格を持った人なんですか?
鈴木
いえ、立会人は誰でもなれるんです。実際、僕も知り合いに頼まれてやったことがありますよ。
安田
そうなんですか! じゃあ私が選んだ人を立会人にすることもできるんですか?
鈴木
できますできます。ただし、安田さんと一切利害関係がない人であることが条件。そうでないと公正な立場で遺言作成を見届けられませんからね。だから「赤の他人」に来てもらうのが無難なんです。
安田
なるほど、そういうことだったのか。さすが鈴木さん、遺言についてもお詳しいですね!
鈴木
ちょうど今年から
『のうひ葬祭』で
「終活勉強会」というのをやり始めたんですよ。毎月2回セミナーを開催して、僕が「遺品整理・不動産」について、ウチの顧問行政書士が「相続」についてそれぞれ話をしているので。だから相続についてもかなり詳しくなりましたね。
安田
そうだったんですね。じゃあせっかくなのでもう少し遺言書のことについて聞いておこうかな(笑)。実は今年、その遺言書を書き直すことにしたんですよ。5年前に書いた時からは状況も変わってきたので。
鈴木
ほう。しっかりされていますね。今回もまた公証役場まで行かれたんですか?
安田
いえ、今回は全部自分でやったんです。だからそれが正しいのかどうか、鈴木さんに教えていただこうかなと。
鈴木
なるほどなるほど。全部ご自身でやられたということは
「自筆証書遺言」を書かれたわけですね。
安田
ええ。弁護士さんに相談したら「全部手書きして、最後にハンコを押せば問題ない」と言われたので。何度も書き損じながら、ようやく全部手書きで仕上げられました。ちょうど先週できあがったところで。
鈴木
それはお疲れ様でした(笑)。ちなみに今って法律が改正されていて、手書きじゃなくてもいい部分があるのはご存知でした?
安田
え、知らなかったです。どの部分ですか?
鈴木
いわゆる「財産目録」の部分ですね。預貯金の金額とか、保有している不動産の住所なんかは、パソコンで書いてもよくなったんですよ。
安田
確かに不動産をたくさん持っている人だったら、住所をいくつも書くのは大変ですもんね(笑)。…ただ私は持っている銀行口座も1つですし、不動産も持っていないので(笑)。
鈴木
じゃあ手書きで十分そうですね(笑)。
安田
はい(笑)。実際、A4サイズ1ページ程度の文量でした(笑)。それでも何度書き直したことか…。やっぱり誤字はあっちゃダメですよね?
鈴木
そうですね。そもそも遺言書って「故人の想いを正確に遺すこと」が目的じゃないですか。後から読んだ人が混乱しないように正しく書かなきゃいけない。そういう意味では誤字もない方が当然いいわけです。
安田
なるほどなるほど。誤字自体がどうのというより、「これってどういう意味?」「こんな風にも解釈できるよね」とならないようにすることが重要なんですね。
鈴木
仰るとおりです。ちなみに書き終わった遺言書は、もう家庭裁判所に持っていきましたか?
安田
…いえ、自宅の金庫に入れたままです。
安田
え……そうなんですか?
鈴木
ええ。ちなみに他に3,900円払って
法務局に預けておく、という方法もあります。これだったら法務局で厳重に保管しておいてくれますし、亡くなった時に「遺言書がありますよ」って通知もしてくれるんです。
安田
ああ、そっちの方がいいかもしれない。そういうシステムもあるんですね。
鈴木
結局、自筆で遺言書を書くと「死後に遺言書を見つけてもらえない」「誰かに改ざんされてしまう」「法的に有効ではない」といったリスクが出てきちゃうんですよね。だから「絶対に間違いのない遺言書を遺したい」のであれば、やはり公証役場まで行くのがいいんじゃないかと思います。
安田
なるほどなぁ。遺言って知れば知るほど奥が深いですね。今日はいろいろと勉強になりました!
対談している二人

鈴木 哲馬(すずき てつま)
株式会社濃飛葬祭 代表取締役
株式会社濃飛葬祭(本社:岐阜県美濃加茂市)代表取締役。昭和58年創業。現在は7つの自社式場を運営。
