第71回 商品開発は「コンセプト」と「ネーミング」と「価格」で決まる

この対談について

住宅業界(新築・リフォーム・不動産)の「課題何でも解決屋」として20年以上のキャリアを持つ株式会社ランリグが、その過程で出会った優秀な人材を他社に活用してもらう新サービス『その道のプロ』をスタートしました。2000名以上のスペシャリストと繋がる渡邉社長に、『その道のプロ』の活用方法を伺う対談企画。

第71回 商品開発は「コンセプト」と「ネーミング」と「価格」で決まる

安田

今日は渡邉さんと「商品開発」についてお話してみたいなと。


渡邉

おお、僕もちょうどお話したいと思ってたんです。うちがやっている「その道のプロ」のような、「形のないサービス」における商品開発の定義について考えていたところで。安田さんはどのように考えています?

安田

そうですねぇ。例えば弁護士や税理士だと、決算書を作成したり、法的なアドバイスをするのが彼らの商品、というのが一般的な見方ですよね。でも、そのサービス自体を商品として考えているだけでは不十分だと思っていて。


渡邉

ふーむ、つまり、一般的に思われているサービスの枠に収まっていてはいけないと?

安田

そういうことです。企業でも病院でも、オリジナルの商品を持っているところは儲かるし、そうでなければ儲からない。それが私が商品開発をする上での大前提としているところです。


渡邉

なるほど。弁護士や税理士も含め、自社のオリジナル商品を持っているかどうかが鍵になると。

安田

ええ。お客さんから「これできますか?」と聞かれて「できます」と答えるだけでは、商品を持っているとは言えないわけです。それでは価格の決定権を相手に委ねてしまっていることになる。


渡邉

確かに。そしてそういう場合、お客さんの頭の中で既に予算は決まっていたりしますしね。

安田

そうそう。そして結局、価格競争に巻き込まれていくわけですよ。そうなると嫌でも安く提供するしかなくなる。儲かりようがないわけです。


渡邉

それは仰る通りだと思うんですけど、じゃあどうしたらいいんですか? オリジナル商品を作ると言っても、なかなか簡単ではないと思うんですけど。

安田

よく考え方の例えとして話すのは、エアコンの話です。夏にエアコンが壊れた顧客が新しいエアコンを探すとしますよね。この時点でお客さんは「エアコンを買うぞ」と考えている。その顧客に対して「エアコンあります」と言っても、それはオリジナルの商品とは言えないわけですよ。


渡邉

なるほど。先ほど仰っていた価格競争になってしまいますね。でも、じゃあ何を提案すればいいんですか?

安田

顧客の潜在ニーズを掘り起こし、独自の提案をするんです。先程の話で言えば、もしかしたら顧客の本当の心理は「エアコンが欲しい」じゃなく「涼しい地域でひと夏暮らしたい」かもしれない。

渡邉

なるほど! エアコンを欲しがっている顧客に、あなたに本当に必要なのは「避暑地のレンタル別荘」じゃないですか、と提案するような。

安田

仰るとおりです。顧客がまだ解決策を持っていない段階で、「ウチならこういう解決策を提供できます」と言う。そこが重要なんです。それが刺さって、「ぜひ買わせてくれ」となれば、価格決定権はこちらに移る。つまり、儲けることができる。


渡邉

要するに「潜在的なニーズに応える商品」を提案できるかってことなんですね。

安田

そうですね。顧客の課題や悩みは顕在化しているけど、解決策はまだ定まっていない。そういうときに「こういう解決策はどうですか?」と具体的な提案をするのが「商品」だと考えています。


渡邉

ははぁ、まさにワイキューブで新卒採用を提案していた時と同じですね。業績を上げたい経営者さんに「それなら新卒採用が有効ですよ」とおすすめしてましたもんね。

安田

その通りです。ランリグさんでも同じ考え方で、各プロ人材ごとの商品を作っていった方がいい気がしますね。


渡邉

そうか、なるほど。そうすると価格決定権が持てると。

安田

ええ。同じ仕事内容でも、収益が大きく変わってくると思います。


渡邉

なるほどなぁ。「商品開発」というと、iPhoneみたいに形があるものを作るイメージがありますけど、形のないサービスでも同じなんですね。

安田

同じだと思います。例えば、離婚専門の弁護士さんでも、ただ「離婚相談できます」と言うだけでは商品にはならない。それを「女性の立場に立った離婚弁護士」というブランドを作ってサービス内容を具体化すれば、独自の商品になっていくわけです。

渡邉

確かに。他の弁護士さんだって、女性側に立った離婚相談を受けることもあるわけですよね。でもそれでは商品になっていないと。

安田

そうです。同じ離婚相談だとしても、差別化をするにはストーリーが必要なんです。「こんなバックボーンがあって、こういう想いでやってます」ということを言語化して、「商品ページ」を作る。さらに大事なのが「商品名」です。

渡邉

ああ、確かに。僕のネーミングセンスだと「女性向けの離婚相談サービス」とか付けてしまいそうですけど、それだとオリジナル商品っぽくないですもんね(笑)。

安田

そうですね(笑)。商品がその会社の独自のサービスとして浸透するように、しっかり練った方がいいと思います。

渡邉

ふむふむ。あとは価格設定も大事ですよね。

安田

仰るとおりです。商品の名前と値段、さらに中身がサービス内容だけじゃなくバックボーンや想いをひっくるめたものが入っているか。そこに注目するとその会社が商品を持っているかどうかがわかりやすいと思います。


渡邉

なるほどなぁ。昔はそれらが全部商品カタログで見れてましたよね。今だとウェブ上にあるわけですね。

安田

そうそう。商品ページが必須というのはそういうことで。それがあることで、「その商品を買いたい人」が来てくれるんです。例えば今対談している広島のケーキ屋さんが、「100年ロールケーキ」という商品を作ったそうで。

渡邉

へぇ、なんだか歴史を感じる商品名ですね。

安田

ですよね。祖父の代から続くケーキ屋さんというストーリーを込めたんですが、それがメディアでも取り上げられて。遠方からも100年ロールケーキを買いたいという人が来てくれるそうなんです。

渡邉

すごいなぁ。ただのロールケーキとして売るか、100年ロールケーキとして売るかでそれだけの違いが出るわけですもんね。それだけコンセプトが大事っていうことですよね。

安田

そうですね。「コンセプト」と「ネーミング」と「価格」、それらがきちんとそろっていることが商品としての価値につながるんだと思います。


対談している二人

渡邉 昇一(わたなべ しょういち)
株式会社ランリグ 代表取締役

Facebook

1975年、大阪市に生まれる。大学卒業後、採用コンサルティング会社ワイキューブに入社。同社の営業、マーケティングのマネージャー、社長室長及び、福岡などの支店立上げを担当し、同社の売上40億達成に貢献した。29歳の年に株式会社ラン・リグを設立し、今期20期目。述べ900社以上の住宅会社のマーケティング、人材コンサルティング支援と並行し、500店舗以上が加盟するボランタリーチェーン「センリョク」など、VC、FC構築にも多数携わる。また、自身が司会を務め、住宅業界の経営者をゲストに招き送る自社のラジオ番組は、6年間で、延べ300回以上の配信を経て、毎月2万人以上の業界関係者が視聴する番組に成長した。今年5月には、2000人以上のプロ人材とのネットワークを生かした~社長の右腕派遣サービス~【その道のプロ】を本格リリース。

 


安田 佳生(やすだ よしお)
境目研究家

Twitter  Facebook

1965年生まれ、大阪府出身。2011年に40億円の負債を抱えて株式会社ワイキューブを民事再生。自己破産。1年間の放浪生活の後、境目研究家を名乗り社会復帰。安田佳生事務所、株式会社ブランドファーマーズ・インク(BFI)代表。

 


 

 

感想・著者への質問はこちらから