遊びの伝道師

 家が売れない。車が売れない。家電製品が売れない。
それは日本が不景気だから、だろうか。
確かに、国民の所得は、もうずっと頭打ちの状態が続いている。
買いたくても買えないのだ、という言葉が返ってきそうだ。
だが本当に、原因はそれだけなのだろうか。

そもそも家は何の為にあるのか。
もちろん、住むためである。
だが今日本では、
住む人がいなくなった空き家が増えて問題になっている。
つまり、住むための家は、もう十分に供給されているのである。

車や家電製品も同様ではないだろうか。
もう既に大量の車、大量の家電製品が供給されており、
壊れない限り買い替える必要もない。
移動の手段としての車はもう十分に足りている。
都心に住んでいれば車そのものが必要ない。
部屋を借りればエアコンはついている。
パソコンやスマホがあればテレビを買う必要もない。
つまり、必要なものは、もう十分に足りているのである。

必要だから買う。必要でなければ買わない。
簡単な理屈である。
必要なものが不足していれば売れる。
必要以上に供給すれば余る。
これもまた、簡単な算数である。
つまり、日本という国は、
お金という観点から見れば不景気であるが、
生活という観点から見ればもう十分に豊かなのである。

物質的には豊かであるが、もうこれ以上収入は増えていかない。
それが日本というマーケットの特徴なのだ。
ものを売るという発想では、
もはやビジネスが成り立たなくなっていくのである。
モノからコトへ・・・

 

『[安田佳生メールマガジン] 2016.8.17 遊びの伝道師 』より冒頭引用

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