他人と過去は変えられない、と言われているが、
その根本には「変えたい」という思いがある。
他人からどう思われるか、
つまり「自分に対する他人の評価」を変えたいのである。
過去を変えたい理由も、そのほとんどは、
他人の評価を高めるためだ。
有名大学を卒業していれば、一流企業に入社していれば、
あの時賞を取っていれば・・・
「きっと周りの評価は変わっていただろう」という思いが続く。
そして、周りの評価が高ければ、
今の自分はもっと幸せだったはず、だと思い込んでいる。
だがそれは、単なる思い込みに過ぎない。
自分が思っているほど、他人は過去を評価しない。
それが現実なのである。
過去に囚われる人の多くは、
他人と過去の関係を取り違えてしまっている。
私は有名大学を出ています。
有名企業に務めていました。
賞を取った経験があります。
そういう自己紹介をされた時、
他人は一体どう思っているだろう。
確かに相手は「へえ!凄いですね!」と言ってくれるだろう。
だがそれは単なる社交辞令、予定調和の挨拶に過ぎない。
心の中では「それで、今は何が出来るのですか?」と
問いかけているはずだ。
今、何が出来るのか。
今、誰の役に立つのか。
それが他人の関心ごとの全てである。
過去に興味を持っているのは自分であって、他人ではない。
他人が興味を持つのは「今の私」なのである。
つまり、他人と過去は変えられない。
自分と未来は変えられる。
は、勘違い。
自分と過去は変えられない。
他人と現在は変えられる。
が正しいのである。
過去を変えることは不可能だし、
自分を変えることも簡単ではない。
だが、他人と現在を変えることは簡単だ。
今、出来ることを考える。
そのスキルを磨く。
他人の役に立つ。
それだけで、他人の評価は一変する。
別に自分を変える必要はないし、
過去を変える必要もないのである。
私たちの周りには二種類の、過去に囚われている人たちがいる。
失敗や挫折した過去に囚われ、自分を過小評価してしまう人と、
成功した過去に囚われ、自分を過大評価してしまう人。
実を言うと、前者は救い出すのが簡単なのである。
なぜなら、失うものがないから。
現在の自分に集中すれば、他人の評価は上がる一方なのである。
だが後者は難しい。
本当は評価されていない自分を、受け入れないといけないから。
自分が思っていたほど、他人は自分を見下していなかった。
これは受け入れ易い。
だが、自分が思っていたほど、
他人は自分を評価していなかった、という現実は受け入れ難い。
つまり、失敗や挫折に囚われている人よりも、
成功した過去に囚われている人の方が、ずっと重傷なのである。
元経営者(特に創業社長)には、このタイプが非常に多い。
会社を立上げ、成功させる。
周りから凄いと評価される。
その時に得た自信は凄まじいものがある。
そして、凄まじいが故に、忘れられない。
良い過去も、悪い過去も、全て忘れる。
今だけに集中する。
人生とは、過去でも未来でもなく、今なのである。
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