生きていくために、
人は一生懸命努力し、日々働いている。
と、思っている人は多い。
だが冷静に人間という動物を観察すれば、
それが間違いであることに気がつくはずだ。
生きていくために必要不可欠なもの。
例えばカロリーを取るための食事や、
寒さをしのぐ衣服、安心して睡眠を取るための住居。
私たち人間は、一体どれほどのお金を
そこに費やしているのだろう。
確かに毎日食事はする。
だができる限り、その費用は抑えようとする。
私たちが惜しみなくお金を使うのは、
カロリーを取るための食事ではない。
お酒や、スイーツや、有名店の料理。
つまり、生きるためではなく、
楽しむための食事に金を使っているのだ。
衣服も同じ。わざわざ穴の空いたデニムに、
惜しみなく金を使う。
本日、世界中で行われた消費活動の中で、
生きるために不可欠だと言い切れる消費は
何%くらいあるのだろうか。
スポーツ観戦、映画鑑賞、旅行、音楽、
ゲーム、テレビ、お酒、ファッション、遊園地。
無くても困らないものばかりである。
恐らく、本日消費されたものの90%以上は、
不必要な消費である。
もちろんそれは、
必要ということの定義にもよるだろう。
音楽が無ければ、スポーツが無ければ、
芸術が無ければ、生きている意味はない。
そういう人もたくさんいるに違いない。
だが現実として、無くても死にはしない。
実際、人間以外の動物は、
我々よりも遥かにストイックである。
不必要なものを食べたり、
不必要な場所へ行ったり、
不必要なものを欲しがったりはしない。
人間が愚かであると言いたいわけではない。
人間を知らなくしてビジネスは出来ない、
真面目に働くことも出来ない、と言いたいのである。
世界の経済規模は年々大きくなっていく。
それに伴い、不必要な消費の割合も、
どんどん増えていく。
生きる為に不可欠なものは限られている。
だから経済を発展させるには、
不必要な消費を増やすしかない。
それに意味があるかないかは重要ではない。
人間とはそういう生き物なのだ。
ビジネスとは、そして仕事とは、
人間を相手にした営みである。
まだ無い不必要なものを作りだし、
それを人間にとって必要なものへと変えていく。
その作業を、人はビジネスと呼ぶ。
音楽もスポーツもゲームも、
エアコンもパソコンもスマホも、
今では必要なもの。
でも元々は必要なかったもの。
不必要こそがビジネスの本質なのである。
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2件のコメントがあります
エンゲル係数でも所得に対する食費の割合が少ない程豊かという指標になっているのを想起しました。経済成長とは不必要ものへの支出が増えることだと考えると、僕の中で腹落ちしました。ありがとうございました。
そこが人間のおかしな所ですよね。不必要なものを作り続けているのに、効率化を目指そうとする。だからこそ人間相手のビジネスは面白い、とも言えます。