本質とハウツー

急がば回れ、とか、損して得を取れ、とか、
失敗は成功の母、とか。
昔から言い伝えられる格言は、
今にも通ずる本質的なものが多い。
一方で、ハウツーやノウハウのようなものは、
賞味期限が短いイメージがある。

こうやったら金持ちになれる。
投資をするならこの銘柄。
売れる営業マンは、ここが違う。
などなど、ハウツーを伝える書籍
(いわゆるビジネス書)は、出ては消え、
消えては出てを、繰り返している。

更に言えば、そのような書籍が増え始めたのは、
近代社会になってからである。
産業革命が起こり、工業化社会が発展し、
株式会社が激増した。
資本主義、会社社会、という枠組みの中で、
ハウツー本は隆盛を極めてきた。
だが今、その売れ行きには陰りが見え始めている。

もちろん、ビジネス書に限った話ではない。
本そのものが売れなくなっているのだ。
パソコンやスマホ、その他の娯楽が増え、
現代人には本を読む時間がない。
これは、ハウツーの終結を意味するのだろうか。
いや、私はそうは思わない。

時間がなかろうが、社会がどうなろうが、
人々が求めているのは答えだ。
端的な答え。
すなわちハウツー。
ハウツーは知りたい。
だが本を一冊読むほどの時間はかけたくない。
だから彼らは答えを求めて検索する。

Googleに聞けば、ありとあらゆる答えが出てくる。
世界中の情報が、そしてあらゆる時代の情報が、
整理され、翻訳され、表示される。
答えは瞬時に、無料で手にすることができる。
ただし、答えが多すぎて、
どれが本当の答えなのかが分からない。

無数にある答え。
それは大きく二つに分類される。
本質とハウツーだ。
いつの時代でも、誰にでも通ずる、普遍的な答え。
それが本質。
時代によって、人によって、どんどん変化する答え。
それがハウツー。

本質はブレないし、絶対に外れない。
だが社会的な成功(地位や金や名誉)に
結びつけるのが難しい。
ハウツーは水物だ。
効果に直結するものもあるが、
当たり外れはとても激しい。
ではこの二つと、どうやって付き合っていけばいいのか。

まず大事なのは、本質を外さないこと。
本質とは出発点みたいなものだ。
何を目的に生きているのか。
本当に大事なものは何なのか。
これを忘れてしまっては、成功の意味がない。
その上で、自分だけのハウツーを手に入れること。
本質に沿って、無理なく、楽しく、続けられること。
それが自分だけのハウツーなのである。

 


尚、メールマガジンでは、コラムと同じテーマで、
より安田の人柄がにじみ出たエッセイ「ところで話は変わりますが…」や、
ミニコラム「本日の境目」を配信しています。
毎週水曜日配信の安田佳生メールマガジンは、以下よりご登録ください。

メールマガジン読者登録

感想・著者への質問はこちらから