なぜ新卒は3年目で辞めるのか

新卒は3年目に辞める。
ようやく育った頃に辞める。
苦労して育てたのに辞める。
育てた時間と払った給料を返せと言いたくなる。
雇う側から見たらとんでもない恩知らずな行為だ。

だが働く側から見れば単なる合理的な行動なのである。
まず企業側に問いたい。
社員を採用するのは慈善活動をするためか。
あるいは社長の趣味なのか。
いや違う。
社員を採用するのは利益を上げるためである。

つまりそのベースにあるのは損得だ。
得だと思うから採用し、得だと思うから育てる。
企業にとって当たり前の投資行為である。
これを雇われる側から考えてみて欲しい。
同様に損得をベースに考える。
入社して1~2年はまともに仕事ができない。
にも関わらず給料がもらえる。
そして育ててもらえる。

こんなにお得な環境が他にあるだろうか。
新卒にとって日本企業は素晴らしい労働環境なのである。
じゃあなぜ辞めるのだ。
そう言いたくもなるだろう。
だがその答えはシンプルだ。
得だから入った。
損するから辞める。
ただそれだけの話なのである。

3年目になると仕事の手際も良くなり、
だんだん利益に貢献できるようになっていく。
だが給料はそんなには増えない。
これは企業から見たら当然の話である。
なぜなら最初の2年間で
大きな赤字を垂れ流しているからだ。

何もできない新人を採用し、
イチから仕事を教え、その上給料まで払う。
それは将来、利益貢献をしてもらうための投資である。
当然のことながら投資は回収しなくてはならない。
育てた社員には返済の義務があるのだ。

3年目に黒字を出したからと言って、
そのまま給料には反映できない。
なぜならこの社員には1~2年目の負債があるからだ。
3年目に転職する理由が分かっていただけただろうか。
そう、転職してしまえば、負債はチャラになるのである。

転職先の企業にとっては負債など関係ない。
だから今の実力に合わせて給料を決める。
実際、3年目に転職した人のほとんどは、給料が上がる。
育成費用を前の会社に押し付けているのだから、
上がって当たり前なのである。

新卒の良さは、辞めないこと、
知らないこと、疑わないことだ。
だがそういう時代は終わりつつある。
スマホを手にした新人は常に社外と繋がっている。
何がおかしいか。
どちらが得なのか。
それをリアルタイムで把握しているのだ。
損得で企業が考えるのなら、損得で従業員も考える。
それは当然の帰結なのである。

 


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