ビジネス書を1冊読むより要約した動画を1本見た方が早い。誰もがこう考える。しかも動画なら再生速度を上げることが可能だ。慣れている人なら2倍速で十分要点が理解できる。ほとんどのビジネス書は要点さえ理解すればことが済んでしまうので、書籍から動画に人が流れるのは当然なのである。
だがここには大きな落とし穴がある。動画は決して少ない時間で最大の情報を得るメディアではない。ここを理解しておかないと大きなしっぺ返しを喰らう。たとえば小説と映画を比較してみてほしい。どちらの情報量が多いだろうか。パソコンのメモリーで比較するなら当然映画ということになる。
映画を保存するには小説の1000倍以上のメモリーが必要だ。だったら1000倍以上の情報収集が可能ではないかと思ってしまう。だがこれは単なる勘違い。脳みそはパソコンのように映像を100%記憶するわけではない。そこから得た情報を必要に応じて使っていくだけ。では使える情報はどちらが多いのか。
映画は小説を単純化したものである。登場人物も見える景色も1種類しかない。小説は読む人のイメージによっていくらでもストーリーを膨らませることが出来る。登場人物の顔も、姿も、見える風景も、そこに流れる空気も、そこから感じ取れる情報も無限大。脳みそが得る情報は比較にならないのである。
書籍のドラッカーと「もしドラ」のアニメ。サピエンス全史を要約した映画とサピエンス全史そのもの。このように比較すると得られる知識も脳みそに与える刺激も桁違いであることが分かる。ただし、その恩恵に預かるには高度な読解力が不可欠だ。文字を読まない人が増えている最大の理由はここにある。
読解力がない人は本を読めない。読んでも理解できない。だからアニメや動画でわかりやすく理解した方がいい。理解できないより遥かにいい。だがそれは読解力のある人が書籍から得ている知識・教養の足元にも及ばない。これが現実なのである。動画はせいぜい3倍速。読書なら1000倍速も可能だ。
読解力のある人は動画で何かを知ろうとはしない。なぜなら動画はあまりにも非効率だから。分かりやすいが狭くて浅い。彼らが好んで読むのは抽象的な表現が多い書籍である。そこにあるのは答えではなく示唆や教養。文字と動画はいずれ人類を完全に2つに分けてしまうだろう。読解力のある人とない人に。
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