曲芸的組織の正体

言葉や習慣や価値観など、人と同じ部分で信頼を築き人と繋がる。これは人間社会においてとても大事なことだ。だがこれだけでは人間社会は成り立たない。特技や性格や見た目など、人とは違う部分で人の役に立ち人と繋がる。これもまた人間社会において必要不可欠な要素なのである。

そもそも人は個性を失うと存在意義を感じられなくなっていく。生きる意味すら見失ってしまう。だが個に偏りすぎると集団に馴染めなくなることも事実。つまり個と共のバランスが重要なのだ。同質化しすぎてもいけないし異質化しすぎてもいけない。どちらかのバランスを失うと人は社会で孤立していく。

仕事とは本来このバランスの上に成り立つものである。同じ目的を持ち、同じ価値観や同じルールでそれぞれが作業を進める。この前提がないと組織化自体が成り立たない。組織化できなければ個を超える大きな成果を生み出すことはできない。だがこれは一本目の足だということを忘れてはならない。

人がバランスよく立つためには2本の足が必要だ。2本目の足はそれぞれが異質であること。ここが他の社会的動物と人間との決定的な違いだ。共通の目的や価値観、ルールに則りながらも、一人ひとりが個性を発揮して自分ならではの役割を演じていく。これが人間にしかできない曲芸的組織力の正体である。

人間も他の動物と同じように一皮剥けばみんな同じに見える。実際、生まれた時にはほとんど同じ素体だと言ってもいい。だがここから人間は驚くような変貌を遂げる。持って生まれた性格や資質に合わせて異なる成長を遂げていくのだ。衣服や食べ物の好み、得意不得意、肉体の特徴や性格まで、バラバラ。

二つと同じ部品がない80億個の集合体。それが人間社会である。その中で一定の共通点を持った1億2000万個の集合体。それが日本である。共通点はあるが同じ部品は一つもない。ここが重要なポイントだ。共通点がなければ日本という共同幻想は成り立たない。だがそれだけでは何も生み出せない。

共同幻想のもとに集まった人材。そこからいかにして個々の異質を取り出していくか。異質同士をどう組み合わせて最大効果を発揮させるか。ここが重要なのである。集めた人材に同質性のみを求めるのは組織としての自殺行為だ。存在意義を失くした個が意欲を失っていくのは当然の結果なのである。
 

 

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