【コラムvol.8】なぜその議論は噛み合わないか?
「単語が、言葉の最小単位だ」
と思い込んでいるからです。

「ハッテンボールを、投げる。」vol.8  執筆/伊藤英紀


前回は、セクショナリズムの話をしました。組織を悪くする犯人は、セクショナリズムそのものではない。真犯人は、部門ごとの主張や利害を、部門間でクールにていねいに収束させることができない『貧しい言葉力と議論力』なのだ。セクショナリズムは悪!と抑えつけると、会社が全体主義の忖度風土になって、プラン提案そのものが消えてしまう。そんな内容でした。

 

そこで今回は、『言葉力と議論力』をどう高めるか、をテーマに考えてみます。

 

単語は言葉の最小単位。そうとらえている人が多い。ところがじつは、“単語”は往々にして“概念”であり、まだまだ噛み砕いて分解できるのだ。

すごく単純な例をあげよう。『犬』という単語は概念であり、分解すれば土佐犬とかチワワとか、形態と性格がまったく違う犬種に分解できる。『犬』という共通単語で会話していても、Aさんは頭の中で土佐犬を、Bさんはチワワを思い描いているとしたら、会話はどこかで必ず噛み合わなくなる。2人が最初から犬を分解して、「うちの土佐犬はね」「僕のチワワはさ」と話していれば、会話はスムーズにはずみますね。まあ、当たり前の話です。

 

当たり前のはずなのだが、仕事場面において、この分解という当たり前がおろそかにされ、会議や議論が不毛なコミュニケーション不全に陥ることがかなり多いのだ。『分解』、これを私は「言葉を開く作業」と呼んでいるが、言葉力や議論力を高めるうえで非常に重要だと考える。

 

たとえば、『信頼』。「お客に信頼される営業になれ」と、上司Aも上司Bも同じ口調で部下たちを教育する。ところがAの頭の中では、「信頼づくりは礼儀作法や人間関係だ」とイメージしている。Bの頭の中では、「信頼づくりは付加価値提案力だ」とイメージしている。2人は信頼というまったく同じ言葉で、まったく違う営業観と教育観を抱いているのだ。

 

これでは教えられる部下も混乱してしまうし、多数が参加する会議で、信頼づくりのとらえ方が各人バラバラに食い違っていれば、議論は決して噛み合わない。焦点がぼやぼやで、とっちらかった会議となり、なんの結論も導けないだろう。

しかしもし、『信頼力』という単語を分解して、『リレーション力』と『ソリューション力』に分類項目化していれば、マネージャー会議の論点はくっきりと整理されるだろう。たとえば、こんな調子だ。

 

「いまみんなが話している信頼力というのは、つまりリレーション力のことだよね?」

「ああ、確かにそうだね。」

「だったら、その強化策としては、礼儀作法のルーチンを標準書にまとめるべきだよ。」

「なるほど、礼儀作法は“型”だからな。型なら暗記できるから、全員に覚えさせて、徹底して実践すればいいね。」

「良好な人間関係づくりは、先方の性格にもよるから、中堅やベテランの関係構築実例をストーリー化しようか。“こんなタイプのお客さんには、こう接したらこうかわいがってもらえた”というストーリーを明文化しよう。」

 

「信頼づくりなら、もう1つ、ソリューション力強化も欠かせないね。」

「ソリューションは、より複雑な情報処理と企画思考が要求される不定形ワークだから、これも実例のストーリー化が欠かせないんじゃない?」

「でも、文書だけでは一方通行だから、併せて、活発に質疑応答できる勉強会をやるべきだよ。」

「だね。勉強会のさいに、若手が現実に抱えている案件を、具体的に方向づけて助言するのもいい。みんなで一緒に、ソリューションを生み出すプロセスを共有しながら学べるからね。」

 

このように、信頼力という言葉を2つの言葉に開いたことで、論点がごちゃごちゃと入り乱れない。意見しあうテーマがすっきりする。問いが明確なので、答えも明確にでる。教育される部下も理解しやすい。

社長は、まだ、自社を知らない。
社長は、自社の魅力や可能性を、あんがい知らない。30年、中小企業を見てきて、つくづく思う。社長のお考え、事業の過去・現在・未来。伊藤英紀と若いのがパーティーを組み、ワイワイ質問したおす2時間半。会社丸ごと、棚おろしです。棚からボタモチのように、気づかなかった自社の魅力がドサリと手に。
ブランド・理念経営・事業戦略・組織強化のみなもとを、再発見・再定義するパーティーに、ぜひ。