泉一也の『日本人の取扱説明書』第70回「母性の国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第70回「母性の国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

日本人のメンタリティーは基本「幼い」。8050問題として社会全体で顕在化しているように、大人になっても親のスネをかじって生きている人が増えている。これは野生の動物ではあり得ない。親は子がある程度まで育ったら突き放す。自分の子孫を残し守るには「自立」が必要だからだ。

この野生の法則を適用すると、日本人は絶滅する。子孫を残し守ることができないからだ。本来、日本人は「幼さ」という純粋で創造的な感性を働かせ、あらゆるものに神を感じ、「お陰様」といって見えないものに感謝をしてきた。だからこそ、日本はアニメや漫画のジャンルが多様で、キャラクターも個性的で種類が多い。アンパンマンではキャラが2千を超えている。さらに幼さを現す「かわいい」は世界の人々に大きな影響を与えている。

今、その幼さが仇となって「依存とワガママ」に働いている。以前にはなかった幼さの欠点が助長されているわけだが、この謎が解ければ、逆に幼さ本来の長所を伸ばすことができる。では謎解きを始めよう。

依存とワガママは「甘やかし」が原因と思われるかもしれないが、そうではない。子供の頃は思いっきり甘やかしたほうがいい。甘えるという行為は愛情表現の大元であり、幼いころに甘える体験がないと、愛情表現ができない大人になる。コーチングをしていてわかるが、愛情表現ができない人の多くは子供の頃、甘えるな!と両親から厳しく育てられている。

では甘やかしではないとすると、依存とワガママの原因はどこにあるのか。それは母性である。日本から母性が失われたのである。母性とは甘やかすことではない。母性は「甘え」で愛の場を与えるが、一方で幼さに「生かされている」ことを氣づかせる役割がある。母なる大地というが、大地という恵みを与える存在が足元にあることに氣づかせるのだ。その母性を教える母が日本から失われつつある。

神道の最高神はアマテラス大御神。太陽神であり女性である。全ての中心に位置するのが恵みを与える太陽のような女性性である。この母性に氣づかないまま大人になると「無償で愛を与える側」になれないのである。そして、依存とワガママが発症する。これをクレクレ病といっておこう。

母性に氣づかないまま育つというのはどういうことか。お母さんが子供に言う。お父さんの稼ぎが少ない!お父さんのようになったらダメ!お父さんが一生懸命働いた恵みで生きていても、それを否定する母親。自分を産んだ恵みの原点から、母性を否定されたのである。体験したことと真逆の教えをされることでクレクレ病が発症するのだ。

百獣の王ライオンの雄は、子育てもしなければ狩もしない。ただじぃと座っている。サボっているわけではない。他の群れや横取りしようとする動物に対して睨みを利かせている。いざとなったらやるで!と覇氣を出しているのだ。それに対して雌は何も文句を言わない。ただ淡々と狩をして子供を食べさせる。雄への信頼と尊敬がそこにはある。そして雄の子供は父親から覇氣でもって追い出され、自らの群れを作り始める。

日本では女性が子育てをし、そこで母性を子供達に教えてきた。母性の原点(産んでくれた存在)から学ぶのが一番効果的であるからだ。現代は、男女平等で男女共同参画の社会である。政治家は女性活躍を声高に叫ぶ。西洋的な父性社会ではそれで良い。小さい頃から一人部屋を与えて寝かせるのを見てもわかるだろう。家庭では責任や主張といった父性を教え、社会全体で母性を教えるからだ。

日本では長い間家庭で母性を教え、社会で父性を教えてきた。真逆の社会。無理して西洋的な社会を作ろうとした結果、クレクレ病が発症しその病が子供に伝染している。世代間の伝染で徐々に病は重症化しているのがわかるだろう。

家庭から母性が消え、アマテラス大御神が天の岩戸に入り真っ暗な世になりつつあるが、ギリギリ我々の世代までは岩戸の開け方を知っている。母性から教えてもらったからだ。どうやら日本人絶滅を回避する役目がこの世代にはありそうである。

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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