泉一也の『日本人の取扱説明書』第84回「ダシの国」

泉一也の『日本人の取扱説明書』第84回「ダシの国」
著者:泉一也

このコラムについて

日本でビジネスを行う。それは「日本人相手に物やサービスを売る」という事。日本人を知らずして、この国でのビジネスは成功しません。知ってそうで、みんな知らない、日本人のこと。歴史を読み解き、科学を駆使し、日本人とは何か?を私、泉一也が解き明かします。

ダシは和食の基本中の基本。
「これはいいダシが取れるぞ」そんな目で食材を見る日本人。

ダシで有名な茅乃舎ブランドを展開する久原本家は創業125年。ここ約40年間で売上が6000万円から163億円まで成長した。それだけダシは日本人にとって必需品でありこだわりがあるもの。ダシを極めればそこには大きな市場があるということだ。

ダシといえば昆布。その昆布は和食の核となる食材である。昆布を極めればそこには大きな市場があり、景氣がよくなる。昆布を商品としているフジッコという会社は売上500億円を超える企業であり、ナタデココを流行らせたのもこの会社である。フジッコでは神戸の場活女史マイコが社長と社員の語り合いの場づくりをしている。社長をダシにして活性化の場をつくっているのだ。
https://www.pr-table.com/fujicco/stories/35200

さらに日本には昆布大使がいる(https://kombu.or.jp/taishi)。昆布という地味な食材の奥深さを伝える伝道師であるが、昆布には日本文化のエッセンスが詰まっていると大使のA氏はいう。縄文時代から昆布は食材とされていて、江戸時代には琉球にまで昆布の流通があったという。昆布流通ネットワークを「こんぶロード」というのだが、それだけ昔から日本全国に昆布ニーズがあったということだ。

ダシ文化はそのまま組織活性化に繋がる。組織のメンバーは皆が食材であり、その人材からいいダシをとればいい。そのダシが組織に浸透すれば他の食材が活きてくるのだ。組織リーダーがすることは、メンバー食材の味が引き出せる場(出汁)を用意するだけである。

このメタファー(喩え)がわかれば、組織を管理すれば味氣がなくなることがわかるだろう。会社でよく言われるのは「属人になってはならないから見える化と仕組み化をしなければならない」といって、ルールをつくり、マニュアルを作り、管理文書を増やす。

社内文書づくりやチェックといった管理のための仕事を食材たちにさせると、いい味が引き出されない。逆にアクばかり出てくる。そして管理職はそのアク取りに終始している。

教育も同じである。受講する一人一人のいい味を出すためのダシの場をつくるのが講師や先生の役割であるにも関わらず、自分の味を出しすぎてその味で染めてしまう。まるで「なんでもソースかけたらおいしなるからな」と言わんばかりである。

いつまでもカリキュラムにこだわる日本の教育は、日本本来の教育ではない。カリキュラムがメインで、受講生の個々の味を引き出すための工夫が何もされてないからだ。

それぞれの個性的な食材の味を引き出すダシの場こそが場活であることがこれでわかっただろう。そして日本中に普及したコンビニに「おでん」がある理由もわかるだろう。「おでん」はまさにそれぞれの食材から引き出された味を感じられる場活料理である。

ダシを極めた場が、人を活かすのである。場茅乃舎とバカッコと場活大使が活躍する2020年の始まりである。

 

著者情報

泉 一也

(株)場活堂 代表取締役。

1973年、兵庫県神戸市生まれ。
京都大学工学部土木工学科卒業。

「現場と実践」 にこだわりを持ち、300社以上の企業コーチングの経験から生み出された、人、組織が潜在的に持つやる気と能力を引き出す実践理論に東洋哲学(儒教、禅)、心理学、コーチング、教育学などを加えて『場活』として提唱。特にクライアントの現場に、『ガチンコ精神』で深く入り込み、人と組織の潜在的な力を引き出しながら組織全体の風土を変化させ、業績向上に導くことにこだわる。
趣味は、国内外の変人を発掘し、図鑑にすること。

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