サイヤング賞5回の大投手は、
すばらしいコーチだった。
マウンドでは誰も
きみを助けてくれない。
堂々としよう。
対戦相手は見ているぞ。
一球一球を、
考えてていねいに投げよう。
一球一球、
自分で悪いところを修正しよう。
修正、修正、修正。
自分で自分をコーチするんだ。
次の一球で、自分を変えるんだ。
私はそうやって
一球一球修正を重ねて、
野球人生を生きてきた。
練習、練習、練習、試合、
練習、練習、練習、試合の連続だ。
そんな野球哲学を静かに、
中学生たちに伝えていく。
マウンド上での挑みかかる
猛禽類のような、
あの猛々しい表情は
そこにはない。
アドバイスは具体的だった。
きみは踏み出した足のつま先が、
横に流れている。
ボールに力が乗らないよ。
制球も乱れる。つま先を
ホームベースにまっすぐ。
きみはもっと
軸足にタメをつくって、
踏み出した足の
親指の付け根の母指球に
体重を乗せるんだ。
カカトに乗せると、
足が流れてしまうぞ。
きみは腕より先に、
体が前に出すぎだ。
腕が遅れすぎると、
ボールの手離れの
ポイントが後ろになる。
だからボールが浮くんだよ。
サメが獲物を狙うように、
この試合は自分のものだ。
誰にも渡さない。
そんな強い意志を持って
投げるんだ。
その意志は、
私もつくってあげられない。
自分でつくるんだ。
だいたい、そんな内容だった。
一球ごとに修正の大切さを説く
ランディー・ジョンソン。
練習ではていねいに助言しますが、
試合中は修正点を教えません。
試合中の投手は、
孤独の中、自分で自分を
コーチするしかないからでしょう。
レッスンの結び、
教え子の投手たちは、
強豪チームとの試合を迎えました。
緊張の中、
自分と闘う中学生たちに、
すごく感銘を受けた。
一人ひとりが、試合中に
一球一球投げるたび、
自分のいまを見つめ、
自分で自分を修正していたからだ。
ランディーの助言を
自分のものにし、
自分を自分でコーチし、
次の一球で、
自分を変えていたからだ。
ランディーはきっと、
日本の中学生たちの
成長を思い出し、
おいしい酒を飲んだだろう。
そして、
「あの場面では、あの中学生に
こう助言するべきだったかな」
と自分を修正し、
次のコーチングに生かすだろう。
僕の勝手な想像ですが。
座布団のうえで
高あぐらをかいている大人たちは、
『奇跡のレッスン』を受ければ、
果たして変わるのだろうか。
気になりました。
もっと気になったのは、
自分も、そんな大人の一人じゃ
ないだろうか、
ということです。
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