副業の話に戻るが、正社員として、
月額30万円の給料を得ていた人が、
副業で月10万円の報酬を上乗せできれば、
月額40万円を手に入れることができる。
本業の会社で月40万円を得るためには
あと7年かかっていたとすれば、
所得増にかかる時間を大幅に
ショートカットできたことになります。
いっけんめでたいことだが、
リスクが大嫌いで、
暮らしの安心安定が大好きな人々にとって
この変化は喜んでばかりも
いられないのかもしれません。
なぜなら、会社から見るとこの状態は、
年功賃金や解雇規制という
慣習や従業員保護から解放される、
願ってもない変化だ、
と見ることもできるからです。
社員の一生を、雇った会社の責任で
経済的に支えていかなければならない、
という社会的要請が、
終身雇用と年功賃金を支えてきた
理由の一つだとすれば、
副業など、個人の自由をベースにした
新しい働き方を許容することと引き換えに、
会社側は、より本人の能力と
働き方希望をベースとした
新しい雇い方と賃金体系のあり方を
模索することになる。
個人の選択の自由、
所得増の幸福を個人の裁量でめざせる自由。
副業時代は、これらのリベラルな欲求に
適っているわけだから、
その裏側で、自分の人生や経済プランは、
個人の自由に基づいて、自己責任で設計しよう!
という、リベラルな自己責任論が沸いても、
それなりに理屈に適っている。
副業が進めば進むほど、
人生は自由、自分が主役なのだ
という意識は亢進するだろう。
そうなれば、
会社に過度な社会保障を求めるな、
という声も亢進するだろう。
年功賃金や解雇規制は、
長時間労働の強制とコインの裏表。
会社の社員保護こそが、
社員の会社依存度を高め、
結果、会社支配を強化する元凶なのだ、
という考えには一定の納得感があると思う。
(程度問題、というやつですけどね)
副業の進展とともに、
社会の自己責任論も進展していくだろう。
話の筋道として、
そんな予測は妥当な気がします。
副業は、新しい働き方、
新しい稼ぎ方の幕明けだと
希望を抱いている会社員は多いが、
会社側を見れば、
新しい雇い方と報酬体系の
幕明けだと肩の荷を下ろす
経営者も増えるだろうと思う。
新しい働き方は、
新しい雇い方のことでもあるのだと
認識している人は多いのだろうか、
案外少ないのだろうか。
ちょっと気になるポイントです。
副業にニンマリするのは、
社員と経営の双方だとすれば、
この2つの『希望の幕明け』の
ビジョンが双方でずれたとき、
また一つ解決の難しい問題が
出現するかもしれません。
どんな問題が出たとしても、
働く側の自由な自己決定が増えることは、
とてもいいことだと、僕は思いますが。