その根拠として、多くの日本人は、自分にとって切実な『社会問題』への関心がきわめて薄い。マスコミがしっかりと伝えないという問題はもちろん深刻だ。
以下、国際ジャーナリストの堤未果氏の著書、『日本が売られる』から引用する。多くの人が知っている一例を引用するが、この著書にはめまいがするような日本が直面する山積みの社会問題が、ていねいな取材と調査のもと白日にさらされている。
主要農作物種子法や介護事業の破壊など、すべての日本人に襲いかかる社会問題である。
※引用箇所は、青字で表記する。
『水道民営化は1980年代、「新自由主義の父」と呼ばれた、シカゴ大学のミルトン・フリードマン教授から始まった。まず南米で導入され、次にフリードマン教授の愛弟子であるサッチャー元首相がイギリスに導入~(中略)~
<民間企業のノウハウを活かし、効率の良い運営と安価な水道料金を!>耳に心地よいスローガンと共に導入された水道民営化は、どんな現実をもたらしたのか、
公営から企業運営になった途端、水は「値札のついた商品」になる。~(中略)~世界の事例を見てみると、民営化後の水道料金はボリビアが2年で35%、南アフリカが4年で140%、オーストラリアが4年で200%、フランスは24年で265%、イギリスは25年で300%上昇している。
高騰した水道料金が払えずに、南アフリカでは1000万人が、イギリスでは数百万人が水道を止められ、フィリピンでは水企業群(仏スエズ社、米ベクテル社、英ユナイテッド・ユーティリティーズ社、三菱商事)によって、水道代が払えない人に市民が水を分けることも禁じられた。
※引用終わり
言うまでもなく、水道は人間の生命に直結する。極めて重要なライフラインである。
日本では、2018年12月6日改正水道法が与党賛成多数で可決された。これから水道施設運営の民間企業への売却が促進されるが、「社会人」の話題にのぼることは少ない。
会社員は、会社の内情とビジネストピックとスポーツニュース。消費者は、消費物価や流行りのトレンド。そこへの興味関心を中心に生きているのだから、理屈が通っている。
日本総中流化ならぬ、日本総消費者化は恐ろしい。会社員であり消費者であると同時に、私たちは何者なのか。社会を守り育てる一員としての呼称と立場を、確立しなければならないと思う。